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【完結】3年ぶりに目覚めたら、いきなり溺愛始まりました!?  作者: らしか


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第四十八話

※ 少々残酷な表現があります。苦手な方はお気をつけください。

それは、夏の日差しが降り注ぐよく晴れた日だった。

似つかわしくない、斬首刑が執行された。



「罪人、ロバート・ラトソル。王太子婚姻の儀において、王太子妃を襲撃する計画に加担し、実行役を送り込むなどの手助けを行なった。それにより王太子妃ならびに周囲の人間を危険に晒した。よって罪人を斬首刑に処する」


この国では、国王陛下が人間の罪を定め、刑を決める。私が眠っていた3年間にも、実行役の男が斬首刑に処されたと聞いている。

ステラの命を狙い、私を苦しめた彼らを許すつもりなど一切ないが、やはり人の死を目にするのは心地よいものではない。


「罪人、最後に言い残したことはあるか?」


陛下は罪人に死を与える前に必ずこの質問をなさる。元国民として、同じ人間としての最後の情けというものなのだろうか。

ちなみに、実行犯はここで、教祖様に輝かしい未来を! と叫んだそうだ。牢にいる時から狂ってはいたが、あの時の様子はもはや人間の魂を宿しているとは思えなかったとノーランが言っていたのを聞いたことがある。そこまで酔狂する理由は何だったのか、もう明らかにすることはできないが。


「ありません」


ロバート・ラトソルは、自白をした日から牢の中で一応の反省を見せていたという。王太子妃であるステラを狙い、公爵令嬢である私を害したのだから減刑は認められなかったのだが。

もっと早く、罪を犯す前に踏みとどまっていれば、こんなことにはならなかったのに。



家族との別れの時間をわずかに与えられた後、ついにその時はやってきた。私は陛下の後ろに立ち、見ているだけではあるのだが、恐ろしさで組んだ手が震えて止まらない。


「執行せよ」


陛下の低い声が、処刑場に広がり、同時に剣が空気を切る音がした。

本当は目を背けたいほどの光景。でも、私が関わった事件の罪人が処刑される様を見ておくことも、私の気持ちに区切りをつけるために必要なことだから。


剣が首に達する直前。罪人と目が合った、気がした。

虚で、死を与えられる者の目。これまで出会ってきた人たちの誰とも違う、死ぬ人間の目。


私は反射的に目を背けようとした。まるで罪人から責められているような、恨まれているような感覚に陥ったからだ。責められるべきも、恨まれるべきも、罪人である彼なのに。


それでも私は、頭が地に落ちる瞬間まで見届けた。初めて、人が死ぬ瞬間を見た。

この記憶は決して、忘れ去ることのないものだろう。あの目と、この光景。私の脳裏に深く焼き付けられた。



「フェリシア嬢、ご苦労だったな」

「いえ、自ら望んだことでしたので。列席を許可してくださりありがとうございました」


処刑が終わった後、王城の一室に呼ばれ、陛下からお言葉を賜る。


「私も何度もこの処刑というものを見てきているが、慣れるものでもない。人の死を見るということは、それほど心に負担がかかるものだ。初めて目にしたフェリシア嬢も心穏やかではいられないと思う」


「…そうですね。直前に目が合ったことは一生忘れられそうにありません」

「あぁ、そうだな。罪人にはよくあることなのだ。縋るような目、反抗するような目、諦めたような目。人によって様々だが、こちらを見てから死ぬ者は多い」


人間の性なのだろうか。


「残念なことに、人間が複数生きている以上、犯罪を無くすことはできない。これからもノーランとステラの補佐役として働いていくつもりなら、2人の側で処刑を目にする機会もあることだろう。人の上に立つ者の1人として、今日のことは忘れないでいて欲しい」


「はい、承知致しました」


陛下からのお言葉というよりも、第2の父からの言葉という印象が強かった。陛下が即位されてから約20年間、国のトップとして経験なさってきたことからくる、とてもとても重いお言葉。




「リア!」

「ジェフ…」


「ごめんね、今日は一緒にいられなくて。大丈夫だった?」

「えぇ、大丈夫よ。しっかりと気持ちにも区切りをつけてきたわ」


これで、王太子妃襲撃事件にひとつの区切りがついた。実際にはまだ問題が残っているが、実行犯と協力者を刑に処したことで、王城内でも国内でも、この事件は終わったという空気になる。3年半ほど続いたこの事件への捜査も、形式上は終了したのだ。


「行こう、ノーランとステラも待ってる」

「えぇ!」


事件が終わっても、私たちの人生はまだ長く続いていく。

事件の記憶、トラウマ、後悔、悲しみ。その全てが枷となって足を引っ張ったとしても、私たちは国民の模範となり、強く前に進まなければならない。それが王族であり、貴族である私たちの宿命でもあるのだから。



「お疲れ様、リア」

「ただいま」


「これで事件はひと段落、後はルピナス訪問で完全決着というところかな」

「そうだね。ようやく、ようやくここまで来ることができた…」


実は2週間後からルピナスを訪問し、信精教団の後処理に関する状況確認や、ルピナス王国に対する責任の追求を行うこととなっている。以前ジェフは、半分旅行気分で良いと言っていたけれど、事件に関することを片付けに行くのであれば私も無関係ではいられない。


「ティルス、ルピア、クレイヴとも面会する予定になっているから、また情報共有をしておこうと思う。立場は少し違うかもしれないけれど、同じ愛し子として分かることもあるだろうからね」


ノーランが挙げた3人は、以前ジェフたちがルピナスを訪れた際に協力してくれた教会の愛し子たちらしい。私は会った事がないのでどんな人たちなのかは分からないが、彼女たちのおかげで事件が解決に向けて大きく進んだと聞いているので、きっと良い人たちなのだろう。


「ルピナスまでは長旅になるから、体調を整えておくようにね」

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