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最後。

「イリスの目的は……まぁ、分かった。ババァの目的は……気まぐれが九割だということにして……だ」

 一息。

「それで……どうするのだ?」

 自分がイリスに殴られることは確定的だ。だが、その後について決まっていることは何もない。

「個人的には、ババァには引っ込んでてもらいたいのだが?」

 メイの正体は、原初の魔王にして最強の魔族。そんな彼女と対立しては生きていられるかどうか、といった具合だ。

 そんなわけで、遠回しにではあるが命乞いをしている。

「私は自分の本能に従って行動しているからね。保証はできんさ」

「ロリババァは面倒な存在であるのがこの世の常……か」

「パパも似たようなものですよ?」

「私もそう思うわー」

「ええ、そうですね」

「……なんなのだこのアウェー感。というか気持ち悪いぞババァ」

「む。今まで通りで大団円ってことでいいじゃないかね?」

「今まで通りにしたいならその微妙な毒舌をなんとかするのだ!」

 今までのメイは、魔族ではあるが天使のような存在だった。何せ己のすべてを肯定してくれるのだから。

 しかし、今のメイは……このロリババァは、口調から言動まで、色々と残念になってしまっている。

「そもそも成人済みの貧乳とか需要ないとおもグボァ!?」

「貧乳言うなボケェ!」

「全部クズが悪いので私も殴りますね」

「あ、私もー」

「なら私ももう一回……」

「ちょ、勇者は関係なグハァ!?」

 殴られた。それも四回も。

「り、理不尽な……」

「まず間違いなく貧乳って言ったアンタが悪いんだからねっ」

 メイはそうかわいく言っているつもりなのかもしれないが、そこまでかわいく思えない。中身がババァだからだろうか。

「も、もう解散しよ? 今日はもう休んで、明日また話そ? ね?」

 あれだけ殴られて弱気にならない男がいるだろうか、いや居まい。

「何を言っているんです? 私はあなたを殴るためにここに居るというのに」

「え、まだ殴る気なの!?」

「なら私もー」

「ならば私も殺ろう」

「いやいやいや!? これ以上は殴らせないからね!?」

 魔族最強のババァと人類最強の勇者、そしてその娘。どう考えてもオーバーキルだ。というかババァの字だけおかしかった気がする。

「「「ちぇっ……」」」

「言っておくが、全然かわいくないからな?」

 見た目幼女なメイはまだしも、そこそこいってる残りの二人はビジュアル的にキツかった。

「……で、このまま解散でいいのか?」

 これ以上殴られるのはマズい。主に生死的な意味で。

「私はオーケーですよー」

 相変わらず勇者は脳天気なことで。

「まー、私はイリスが……というか二人がいいって言うならいいよ」

 ババァは気まぐれなのか知らないがテキトーに感じた。

「……」

「……イリス? まさかまだ殴り足りないとは言わないよな?」

「……場合によりけりですね」

 場合によっちゃうのか。

「え、なに殴ればいいの?」

「頼むから勇者は引っ込んでてくれ! 話が進まん!」

「ちぇっ」

「だからかわいくないと……まぁいい」

 サドに目覚めたのか知らんが、やたらと殴ろうとするなこの勇者。

 ここで、イリスが一言。

「魔王。貴方、私達に隠していることがありますね?」


「な、何を言うかと思えば。隠し事の一つや二つ、あるに決まって……」

「そういうことじゃありません」

「ま、まさかこの前我が食べたあのプリン、勇者のものではなくイリスのものだったのか!?」

「いえ、私のものではありませんが」

「プリンのかたきぃー!」

「ゴボァ!?」

 さすが勇者。ただの右ストレートのはずなのにこの威力……さすがとしか言えない。

「な、なら限定版のアイス……」

「それも違います」

「あ、それ私のだよ! 何でパパが食べてるのか、なぁ!!」

「ゴパァ!?」

 さすが最強の魔族。ただの右ストレート(以下略)。

「食べ物というよりは飲み物……いえ、直接的にいいましょう。薬のことですよ」

「……ああ、アレのことか」

 どうやら、ごまかせないようだ。


「あの薬……魔力を回復するポーションの類いで、性転換の副作用があるといったが……アレは嘘だ」

「え、パッパァがマッマァになる薬じゃなかったの!?」

 うん、ちょっと黙ってくれるかな?

「で、本当の効果はどういったものなんですか?」

「逆に問おう。なぜそのようなことを、魔族ではないものに言う必要があるのかね?」

「質問を質問で返さないでください!」

「いやいや、我は言外に告げているではないか。貴様に教えることは何もない、とな」

「……パッパァ?」

 イリスの焦りと我のいつもと違い雰囲気を感じ取ったのか、勇者が不安げな声を上げた。だが。

「そもそも、すでに手遅れだ」

「「!?」」

 突然、イリスと勇者の体がふらついた。まるで、強烈な眠気が襲ってきたかのように。

「ふむ。やはり、原初の魔王には効かぬか」

「いやいや、なかなかにいい効果ではあるぞ? まぁ、前もって準備をすれば防げなくもないが」

「でたらめな奴め」

「それは貴様も同じようなものだと思うが……」

「魔王! 私に、私達に何をした!?」

 珍しくイリスが戸惑っている。いや、焦っているのか?

「言ったであろう。貴様に教えることは……ああいや、一つ教えてやろう。これからのことだ」

「これから……?」

「我は、無抵抗の生き物を切り刻むのが好きでなぁ。確かに抵抗してくるものにも味はあるが、やはりあの絶望した目というものが心地よくてなぁ……」

「切り刻む……まさか!」

 何かに思い至ったようで、イリスは大声を上げる。

「魔王、お前の名前は”ジャック”だな!?」

「確かに我の名はジャックだ。だが、それがどうした? 名前が分かったところで、何もできまい?」

「クッ……」

「それに言ったであろう? 手遅れだ、と」

「わ、私には……まだやるべきことが……」

「おやすみだ、二人とも」

「「……」」

 ようやく、二人は眠りについたようである。

「さて……ババァ。止めるなよ?」

「ハッ、止めるならもっと早く止めてるよ。それに……」

「それに?」

「困難が多いほど燃えるってモンさ」

「やはりババァは意味が分からん」

 これが男女の差なのか、あるいは犬猿の仲ということなのか。

 理屈で行動する自分に対して、感情で行動するメイ。共通点は、魔王であること。そして、人を愛したことだ。

「神は、まず間違いなく気づいていたのだろうな」

 長年の付き合いだ。どのような結末を迎えるかまでは分からなかっただろうが、あれが神なりの別れの挨拶だったのだろう。

「……ジャック」

「……なんだ、メイ」

「お前は間違っている。だから私が、いや私の意思を受け継いだものたちが、いつかお前を正しい道に導いてくれるだろう」

「なんだ、ついに死ぬ気になったのか? 葬式には出てやるぞ?」

「まぁ、私の時代じゃないからね。あと少ししたら引っ込むつもりさ」

「次代の魔王として活動してからか?」

「いいや、人と魔族の争いを止めてから、だね」

「……そうか」

「ああ、そうさ」

 それだけ言うと、メイは黙ってしまった。

「さて、こっちも仕上げるとするか」

 イリスと勇者を切り刻む……訳ではない。それは、己の願いではない。

「封印術、起動。及び定着。ロック」

 以前勇者に術を施したときは、恐らくメイかイリスの邪魔が入っていたはず。故にそれは不完全なものとなった。だが今回は違う。

 念入りにチェックし、己の術に不備がないことを確認する。

「……ジャック。本当に、それでいいんだね?」

「母親みたいなことを言うな。我はパパだぞ?」

「アンタ、愛をなめてないかい?」

 確かに、前回はなめていたのかもしれない。だが今回は違う。

「前回と比べて、我も進化しているのだ。なめているのはむしろそちらではないかね?」

「……ジャック、あんたまさか……!?」

「世話になったな、メイ。できれば二度と会いたくないものだ」

 その一言を最後に、転移する。

 こうして、一つの物語は終わりを告げる。

 記憶を書き換えられたイリスと勇者は、きっと幸せになることだろう。

 メイもきっと、やり遂げるだろう。

 そして我は。いや俺は……。


「最高神。俺をもう一度、やり直させてくれないか?」

ごちゃごちゃしたけどこれで終わり。疲れたから。

メイはこんなロリババにする気なんてなかったし、魔王だって意味の分からん存在にする予定はなかったんや。

ほい解説。

魔王は元天使で、だから天使時代に天使だった神と出会っていたために友達やってました。が、人間の娯楽に興味を持ち、天使のままでは下界に関わることはほぼ不可能であるために堕天して魔王になりました。なんで最後の方で出てきた神は割と無理してました。ハイ後付け。

で、イリスも勇者も魔王としてのジャックしか知らないため、もう一度天使になればたとえ記憶を取り戻したとしてもたどり着くことは不可能と考え、最高神に願い出ました。

メイさんは精霊と結婚してました。その際色々あったとか。故に、魔族は嫌われることになりました。

イリスは平行世界の住人。そう、元の世界に戻って母親から話を聞けばあっさりと記憶取り戻しちゃいます。ドジっ子魔王だね。

勇者は……アホの子。

あと、魔王のジャックは切り裂きジャックからとりました。一応本名です。

この他にも疑問点たくさんあるだろうけど、正直全然考えてなかったりするから自分で考えて納得してください。もう疲れました(二回目)。

ここまでありがとうございました。

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