表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/29

どうやら私だけがロリコンだったみたい…

任務完了! 小さな可愛子ちゃんたちを家まで送り届けた!


その後、帰宅途中、優一が「そういえばこないだあの怪しい人から巻き上げたしさ、今日はお菓子の予算、ちょっと増やさない?」と提案してきた。


確かに1万円って結構あるように見えるけど、実際使ってみると大したことないし、節約しないとなーとは思いつつも、正直言うと俺も飲み物とかお菓子とか買って帰りたい気分だったから、まあいいかってことで了承した。


それで、帰り道にあるコンビニで軽く品物を物色して、バックパックに詰めたけど、それでも手提げがいくつか必要になるくらい買っちゃった。


ちょっと買いすぎた感ある? ま、自分で稼いだ金じゃないから気持ちよく使えるってものさ。


そんなこんなで、手提げを提げながらジュースを飲みつつ家路に向かっていると、道端の目立たない一戸建てから、ちょうどゴミを提げた知った顔が出てきた。


そう、俺たちにお菓子代を提供してくれた例の怪しい人物だ!


三人とも互いに相手だと気付いたけど、あんまりにも突然で全員固まっちまった。だって我が家はもうすぐそこなんだ! こんな近くだったのか?


我に返った俺は、即座に手提げを放し、リュックのショルダーストラップにぶら下げてある防犯ブザーを掴み、一気にジュースを飲み干してパックを捨てると、まだ状況を把握できていない優一の手を引いて後退した。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 話を聞いてくれ、ちょっとでいいから話を聞いてくれ!」


怪しい、山田さんちから出てきたおじさんが、慌ててそう言いながら、ポケットから財布を取り出して5000円を差し出した。


うーん、これならちょっとくらい話を聞いてもいいかもな。


「あんた、何やってんの? お金見たらすぐ前に出るのやめてくれない?」


優一が前に出ようとする俺を引っ張った。


「おっと! そうだな、まずは話を聞いてから、通報するか決めるわ!」


俺も我に返って彼に叫んだ。


「君たちは、この先の椎名家の子だろ? 実は俺たち、もっと前に会ったことがあるんだ。もちろん、数日前のあれよりもずっと前にね!」


彼は弁解を始めた。


でも、そう言われると、かえって警戒心がマックスになるんだけど。


「つまり、前から俺たちを狙ってたってことですか?」


俺は問い詰めた。


「違う、違う、とにかく落ち着いてくれ! 俺は絶対に悪人じゃないんだ! 頼む、信じてほしい」


彼は必死に説明している。


彼の方が俺たちよりずっと緊張しているように見えるし、ここが彼の家なら、ここで犯罪を起こすってのは考えにくい。


「他に家族とかいるんですか?」


用心深く探りを入れてみた。何せまったく知らないおじさんだし、信頼なんて簡単に得られるもんじゃない。


しかも俺たちは彼から1万円巻き上げたばかりだし、ここが本当に彼の家かなんて、わかりっこない。


「いや、今は…いない」


彼は少し悲しげに答えた。


「どういう意味ですか?」


「仲間はもういないって意味じゃない?」


隣で優一が推測を口にした。


「これで誠意は十分だと思わないか? 話を聞いてもらえるための」


彼は答えず、財布を投げてよこした。


「なんか俺たちが脅してるみたいになっちゃうんですけど…」


俺は仕方なく言った。


「いや、開けてみればわかるから」


彼も仕方なさそうに言う。


俺は慎重に、投げられた彼の財布を取りに行った。まさか暗器とかじゃないよな?


拾い上げてすぐに開けてみると、運転免許証に個人情報が載っていた。


山田小五郎、年齢36、写真も住所も一致している。


でも念のため。


「防犯ブザー、しっかり握ってて」


優一にそう言って、背負っていたバックパックを下ろし、スマホを取り出して、このおじさんの免許証を写真に撮り、優一のメールアドレスに送信した。これで証拠は残した。


これで謎の神隠しに遭うってことはないだろう。


それから俺は財布を持って山田おじさんの方へ歩いていった。ついでにさっき落とした手提げも拾う。


「おい、あんた何やってんの!」


優一が叫んだ。


「じゃあ、これからあなたの言い訳を聞いてあげますよ」


俺はできるだけ冷静に振る舞い、財布を彼に返した。次の瞬間、彼が俺を捕まえて走り出すかもしれないけど、今のこの身体じゃ、成人男性の拘束から逃れられるはずもない。


彼も不安そうにそれを受け取った。


「ええと…よかったら中で話さないか?」


彼がドアを押し開けながら言った。


「あんた、安全なの?」


優一が走り寄ってきて、小声でささやいた。


「心配なら、ずっと防犯ブザー握ってなよ」


俺はそう言って彼と一緒に家の中の庭へと入っていった。優一はしばらく考え込んだ後、結局ついてきた。


「ここでちょっと座ってく? お茶でも飲む? お菓子でもいいけど」


彼はそう言いながら、リビングと庭を隔てる障子を開けた。


俺は家の中をざっと見渡した。リビングの片隅に一際目立つ仏壇があり、線香の香りがした。どうやら絶やさずに供えているらしい。障子を開けるとすぐに匂ってきた。そして、仏壇に祀られているのは、一人ではなかった。


「結構です。自分たちで持ってきてるんで」


俺はそう言ってバックパックを縁側に置き、中から買ってきた飲み物とお菓子を取り出した。


これから言い訳を始めようとしているこのおじさんの分も忘れずに。


「おお、サンキュー」


彼はそれを受け取りながら言った。


「どうせあなたが払った金ですからね」


俺はお菓子の袋を開けながら言った。


優一って奴は、警戒して縁側の反対側に座っている。


「さあ、言い訳を始めてください」


俺はポテチを食べながら言った。


そしてその後、彼の口から語られたのは、悲劇としか言いようのない人生の物語だった。


リビングの仏壇に祀られているのは、彼の妻と二人の娘だった。


長女は先天性の心臓病を患い、幼くして他界。次女は小学生の時に誘拐され、遺体で見つかった。


そして妻は、二人の娘を相次いで失った精神的ショックから、ある夜、車で郊外へ出かけ、自らの命を絶った。


残されたのは、もう二度と家族の帰らぬ家に、たった一人で住む彼だけだった。


なぜここを離れず、子供を脅すような真似をするのか、俺は彼に尋ねたことがある。


彼の答えは、もう行く場所などない、ここには妻と娘たちとの全ての思い出があるから、だった。彼は話しながら、そっと涙を拭っていた。


俺はただ、目の前のこの男が不憟でならなかった。そして隣で妹は、この話を聞いて、もう抑えきれずに俺に抱きついてボロボロに泣いていた。


俺は彼女の手で、鼻水を服に擦り付けられないようにしながら、必死に防いだ。


だが、このおじさんがなぜチンピラみたいな子供たちを脅すのかという問いに対する答えは、彼の娘に起きた悲劇を、他の子供たちに繰り返させないためだった。だから、あの日も、簡単に信じてついてきそうな子供をここに連れてきては、脅したり叱ったりして、簡単に見知らぬ人を信じてはいけないと覚えさせていたのだという。


でも、俺たちみたいに逆に脅して金を巻き上げるような奴らに遭遇したのは初めてだったらしい。


あの時は、すぐにでも逃げ出そうと思ったそうだが、俺があとで言った言葉が、自分が見つかったと思わせてしまったらしい。


「おじさん、ごめんなさい。前回はあんなにきつく罵ったりして」


優一は泣きながら彼に駆け寄り、謝っていた。


いや、あの時罵ったの、俺なんだけど?


「そんなことしてたら、本物の誘拐犯として捕まっちゃいますよ」


俺は仕方なく続けた。


「でも、普通はちゃんと家についてくる奴らには問題ないんだ。もし騙されなければ、怖がらせたりもしないしね」


山田おじさんは答えた。


「でも例外も結構いてね。鈴子って子がいるんだが、その子は全然怖がらないどころか、放課後にたまに遊びに来てくれるんだ。ただ…」


彼は、どこかで聞いたことのあるような名前を口にした。すると、その子が来た。


「山田さーん! 山田さん、いるー?」


玄関の方から、どこか聞き覚えのある声がして、おじさんの言葉を遮った。


この鈴子ってのは、俺たちのクラスの、ちょっと問題を抱えてそうなあの子だ…


だから聞き覚えがあるわけだ。


彼女は俺たちがここにいるのを見て、すぐにまたビクビクした様子で壁の隅に隠れてしまった。


「大丈夫だ、おいで」


おじさんがなだめるように言った。


「俺たちが悪かったみたいですね。彼女、同じクラスなんで」


そう言って俺は立ち上がり、彼女の方へ歩いていった。


「森下鈴子だよね? 悪意はないんだ。俺たちは明日莉亜たち一派とは関わりがない」


俺は手を差し出しながら言った。


「本当…?」


彼女はまだ少し警戒した様子で言った。


「どちらの味方もしないよ。少なくとも今はね」


俺は続けた。


彼女はしばらく考え込んだ後、ようやく俺の手を握り返してくれた。


でも、その手を握った時、手首に明らかな擦り傷のようなものがあるのに気づいた。思わず彼女をざっと見渡してみると、どうやら簡単な事情ではなさそうだ。


「優一、ちょっと彼女と一緒にいてやってくれ。俺はおじさんにまだ聞きたいことがあるから」


俺は振り向いて言った。


「おう」


まだ泣き終わらずに鼻水を啜っている優一が答えた。


でもおじさんの方は、俺にびっくりした様子だった。


優一が彼女を連れて、庭の隅の方で話が聞こえないくらいの場所に行ったのを確認してから、俺は縁側に戻って腰掛け、足をブラブラさせながら、残りの半袋のポテチを手に取った。そして小声で尋ねた。


「おじさんがさっき言いかけたのって、彼女のアザのことですよね?」


俺は不意に訊ねた。


「えっ? ああ、気づいたか?」


おじさんは哀れみのこもった目で、隅にいる鈴子の方を見ながら言った。


「具体的には、どのくらいご存知なんですか?」


「一度だけ見たんだ。多分、彼女の父親だと思うが、路上で彼女に暴力を振るっているのを。俺が止めに入ったんだ。おそらくその時に、彼女は俺のことを頼れる相手だと思ったんだろうな。その後、何度追い返そうとしても、たまにここに来ては隠れているんだ。それに、会うたびに新しい傷が増えていることがある」


山田おじさんは詳しく答えてくれた。


二人の娘を失った父親にとって、自分の子供に暴力を振るうような奴を黙って見ていられないのは当然だ。そして鈴子は、おそらく彼が手を差し伸べてくれたことを、助けを求めて良い相手だと捉えたのだろう。


となると、これは本当に厄介なことになった。他人の家のことに簡単に口出しできるものではないが、山田おじさんが黙って見過ごすとは思えない。彼はどう見ても怪しい人物だけど、少なくとも悪人ではないのだから。


「はあ…彼女には、これからうちに来るように言っておきます。私が一緒じゃないと、あなたのところには来ないように」


俺は有無を言わせぬ口調で言った。


今思いつくのはこれだけだ。俺は彼女の成長を何とか取り戻したい。そして、おじさんが無関係の人に傷つけられるのも防ぎたい。


「なぜだ?」


彼は顔を向けて俺に尋ねた。


「これから言うことはあまり良い言葉じゃないけど、でも事実です。彼女はあなたの娘じゃない。ただの別の哀れな子どもです。おじさん、もう今は彼女がいつ来るか楽しみにしているんじゃないですか? そこからして、もう完全におかしいんです。あなたの気持ちは理解できないでもないけど、これはあなたが訳も分からず捕まらないためです。だって、もし私があなたに企みがあるって言ったら、警察はどっちを信じると思います?」


俺は至って真剣に説明した。


それを聞いて、彼は長い沈黙の後、


「…君の言う通りだ」


と言った。しかし、その薄いベールを突かれたことで、彼はむしろホッとしたような表情を見せた。どうやら彼自身も気づいていたようだ。


「ありがとう、椎名の…長男君。こんな話を誰かとしたのは、本当に久しぶりだ」


彼はそう礼を言った。


「どういたしまして、兄弟。瑠依って呼んでください」


俺はポテチを食べながら答えた。


「え?」


彼は明らかに、その名前が女の子っぽいことに驚いていた。


「おじさん、もう子供を脅すのはやめた方がいいですよ。もし必要なら、俺たちがここに来て盛り上げ役をやってもいいですけどね」


俺は続けて言った。


「いや、いいよ。君たちがここにいると、とても温かい気持ちになるけど、その分、どうしても過去を思い出してしまうからね」


彼は予想外にも断った。


「おじさん、そう言われると会話が続かなくなるんですけど」


俺は容赦なくツッコミを入れた。


「それで、あんたはあの二人をどうしたいんだ?」


彼は庭で虫と遊んでいる二人を見ながら、俺に尋ねた。


「まあ、うちの弟はしょっちゅう外をうろついてるんで、たまにはここに遊びに来させますよ。月1万円の友達料でどうですか?」


俺はそれをいいことに、真顔でふっかけてみた。


「あんたら、見た目によらず結構したたかだな…って、ちょっと待て? あれ、弟なのか?」


彼は呆れつつも言い、ようやく問題に気づいて俺を見た。


誰だって優一って奴がまだ髪を切ってないのが悪い。


「そうですよ。それに、実は俺たち、もういい年なんですけどね」


俺は冗談めかして、本当のことを言った。


彼はからかわれたように苦笑いしたが、拒否はせず、同意を求めるかのように、リビングの隅にある仏壇の方を見た。


「おじさん、俺の頭撫でてみます? 初回は無料ですよ!」


俺はポテチを置いて、前回の優一の動きを真似て、自分の頭を指さし、やはり冗談めかして言った。


重くなりかけた空気を、少し和らげようと思ったのだ。


「ま、マジか?」


すると彼は、非常に真剣な口調で尋ねてきた。


これはちょっと、引っ込みがつかなくなってきたな…


「えっと、ちょっとだけなら無料。次からは有料ですからね」


そう言って、俺は仕方なく少し近づいた。


すると山田おじさんは、震える手で、そっと、そして慎重に、俺の頭の上に手を置いた。伊咲みたいにいつも俺の頭を叩こうとしたり、美穂や京介みたいに愛情を込めて撫でるのとも違う。


何と言うか、よくわからないけど、彼は非常に複雑な心境だった。彼の目には、ここに座っているのが自分の娘であってほしい、もう二度と触れることのできない娘に、もう一度触れたいという願望が込められていた。


それが偽りだとわかっていても、彼はまるで、自分の目に映る最も大切な人を愛おしむかのように、優しく撫でていた。


しかし、彼はすぐに手を引っ込めた。自分の娘はもう二度と戻らないとわかっているからだ。でも、潤んだ目からは涙が止めどなく溢れ出していた。


「おじさん、ちょっとトイレに行ってくるわ。ゆっくりしてて、ゆっくりしてて…」


おそらく、数人の子供に自分の姿を見られたくなかったのだろう。彼は逃げるように立ち去った。


これには俺の良心もちょっと痛む。こんな風に弱みに付け込んで、哀れな中年男から金を巻き上げるなんて、本当にいいんだろうか…


でも、金銭的な価値に換算しなければ、美穂や京介に申し訳ない気がする。だったら、心理カウンセラーみたいな仕事として、料金を取ることにしよう。


それに…


俺は顔を上げて鈴子を見た。この問題については、まだ良い解決策が思い浮かばない。それに、もしかしたらそんなに単純な話ではないかもしれないという気もする。


今のところは、様子を見るしかないようだ。


わけのわからないことが、どんどん増えていくなあ。


それにしても、山田おじさんにこんなことされると、まるで俺だけが、子供に近づく目的を持ったロリコンみたいじゃないか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ