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磁気小僧の恐喝犯

学年は一つ上がったけど、見た目の違いはそれほど大きくない。


相変わらず、自分の錆びついた鉄の王座を守りながら、毎日クラスの雑務を処理している。まるで複雑なゲームのデイリーミッションをこなすみたいなものだ。俺のやるべきことは、自分の縄張り、つまりクラス内の安定を維持すること。で、外については…


今のところ特に予定はない。それは俺のアメリカンギャングスタイルの妹の担当分野だ。


おっ!明確な違いと言えば、俺が妹より少し背が高くなったことくらいだ。まあ、そのくらいの違いだけど。


由香里も前みたいに休み時間になるといつもくっついてくる、という感じから、放課後にくっついてくるってパターンがほとんどになった。彼女の教室の外でチラッと覗いてみたら、どうやら新しい友達ができたみたいだ。


なんだか自分の子供が成長したのを見ているような、ちょっとした感慨深さがある。


風間の奴もそうだ。でも、俺が「幼なじみの観察サンプルが汚染される」って理由で優一に彼を子分にするのを禁止してなければ、今頃まだ使い走りをさせられてたかもしれない。


でも、放課後、帰り道では相変わらず俺のクソ妹のランドセルを背負わされてる。このバカな小僧は、いつまた彼女に騙されて刑期が延びるんだか…


読んでいた伊咲の旧作の単行本を閉じた。これは彼女の家からもらってきたやつだ。ただで手に入るし。


伸びをして、周囲を見渡した。


教室は変わったけど、俺は裏工作によって、隣で寝ている怠け者の妹と俺の専用席をキープしていた。


この位置なら、一目で教室のほとんどの情報を把握できる。例えば、別のナルシストな奴を中心とした5人の女子の小グループとか、ポツポツとある3人組や2人組とか。


それから、付き合いたがらない、あるいは孤立している何人かの個人。


例えば、同じく窓際の前の方に座っている森下鈴子。俺たちと帰る方向がだいたい同じで、たまに彼女が一人でのんびり帰っているのに道中で出くわすことがある。


あんまり言いたくないけど、実はもういじめの問題の兆候が出始めている。現状はまだ一時的に孤立しているってところだ。


でも原因は不明だし、ただの考えすぎかもしれない。それに、今のバランスをわざわざ調査したり調整したりするつもりもない。


だって今は、バグは多いけど動いている状態なんだ。何かを動かせば、このボロプログラム全体がクラッシュする可能性だってある。


もちろん、緊急時対応策がないわけじゃない。でなきゃ、優一が俺の管轄下で自分のギャンググループを作るのを許したりしないだろ?何しろあいつの収入は全部、俺のところで一括管理・計算してるんだから。


クラス内で騒ぐやつがいても、上級生が俺の縄張りにちょっかい出してきても、必ず思い知らせてやる。裏も表も保護者がいて、誰が来てもいい思いはさせないってことを!皆、痛い目を見させてやる!大人の執念深さってやつを思い知らせてやる!


そんなことを考えているうちにチャイムが鳴り、他のガキどもは勝手に席に戻っていった。俺も国語の教科書を出して、ライトノベルの外側に被せた。


隣で突っ伏していた優一は、チャイムを聞いても顔を反対側に向けて寝続けるだけだった。


奈々子が教室に入ってくるなり、俺にアイツを起こせと目配せしてきた。


しょうがない、妹よ、これは俺のせいじゃないぞ!


国語の教科書に挟んであったライトノベルを抜き出して、アイツの顔に叩きつけ、すぐに教科書の後ろに隠した。と同時に授業の流れを口にした。


「あ?」


アイツは完全に茫然自失。皆が着席してからようやく授業中だと気づいたようだ。


慌てて教科書を引っ張り出していた。


奈々子はもうアイツのことは構わないつもりらしい。成績さえ問題なければいいからな。


俺がライトノベルを読んでいる横で、優一は眠そうに教科書に頭を乗せていた。


「大空は鳥たちの海。季節風という海流に乗って」


奈々子が授業をしていると、突然止まった。


妙な静けさが、俺の警戒心を刺激した。


顔を上げると、奈々子がまた俺に目配せしている。振り返ると、あのバカ妹がまた突っ伏していた。


「お前、立て!」


俺は立ち上がってアイツの頬を張り、立たせて授業を聞かせた。


「瑠依、今どこまで話した?」


奈々子が突然俺に質問した。


まさか俺を嵌めようとしてるんじゃ…さっき大空とか聞こえたような…


「えっと、大空はハフクのもの?」


俺はライトノベルを挟んだ教科書を手に取り、頭が回らずにそう言ってしまった。


すると、まだぼんやりしている優一以外の全員が、怪訝な目を俺に向けた。


「じ、じゃあ、次の文は?」


奈々子は俺がデタラメを言ったと分かっていながら、無理やり続きを聞いた。多分、俺がどうでっち上げるか見たかったんだろう。


「外で立ってたほうがいいっすかね?」


俺は教科書を閉じて、申し訳なさそうに提案した。まさか本当に「大地はアサラのもの」なんて続けられないし…


それに、もし彼女が本当に親に苦情を言って、美穂が伊咲を叱りに行くようなことになったら、家でしっかり覚悟を決めておかないと、アレク咲大回転を食らうことになる。


奈々子も俺が譲歩したのを見て、仕方なく手を振って外に出るよう促した。


だから俺は、教科書を持って突っ伏してまだ半分眠っている妹の襟を掴んで、引きずり出した。


「あんたがちゃんと授業聞かないから、なんで私まで巻き込むのよ?」


アイツは目をこすりながら、よくもまあ文句を言う。


「お前が寝てるからだろ!」


俺は責任を押し付けた。


「で、どうすんの?」


アイツが意味不明に尋ねる。


「お前は勝手にすればいいよ。俺は保健室にデートしに行くから」


俺はどうでもよさそうに言って、安全地帯へ向かって腰を低くして歩き出した。


「なんであんただけ行く場所があんのよ!私も行く!」


アイツは少し不承不承ながらも、俺の後ろにくっついて言った。


慎重に廊下の角まで辿り着き、俺は立ち止まった。


「なに?」


後ろからついてきた優一が尋ねる。


「教頭がいないか見てるんだ」


そう言って顔を覗かせようとした。


「バカ兄貴、ちょっと待って」


アイツはそう言って俺を引き戻し、スカートのポケットから何かを取り出し、押すと開いた。それは小さな鏡だった。


「これ使いなよ」


アイツは続けて言い、それを俺に差し出した。


「どこで手に入れた?」


鏡を受け取りながら怪しんで尋ねる。


「癖みたいなもの」


アイツは軽く答えた。


アイツとこれ以上詮索するのは面倒なので、俺はしゃがみ込み、地面すれすれに鏡を部分的に差し出した。角の向こうに誰もいないのを確認すると、鏡をアイツに返し、堂々と歩き出した。


保健室の前に着き、すぐにドアを開けた。


「先生!俺の…あ、いないのか」


わざわざ言い訳考えたのにな。


「つまんないね」


優一が俺を追い越しながら嘲笑するように言った。


「いなくてラッキーだよ。言い訳考えずに済んだ」


そう言ってドアを閉めた。


「おやすみ!放課になったら起こしてよね!」


アイツは言うなり、慣れた様子で奥のベッドへ向かった。


「起こすかよ」


俺は美里が普段座っている椅子に座り、背もたれに寄りかかると、彼女がいつも使っている香水の香りが微かに漂ってくる気がした。


教師があんなに強い香水を使うのって、行動規範的に大丈夫なのか?


あくびをしていると、まだお尻も温まらないうちに、突然保健室のドアが開けられ、驚いて息が詰まりそうになった!


「先生!」


振り返って美里が戻ってきたのかと思ったら、同時に別の「先生!」という声が入口から聞こえてきた。


「先生、いますか?」


明らかに上級生らしい二人のガキが入口に立っていて、そのうちの一人の少年が、もう一人の少女を支えながら尋ねた。


「いないよ。彼女どうしたんだ?」


尋ねながら観察する。擦り傷で、場所は右膝。基本的な清掃で十分そうだ。


「屋外で活動中に転んじゃって…保健の先生がどこに行ったか分かりますか?」


少年は少し焦っている様子だったが、素直に答え、それから尋ねた。


「俺も分かんない。とりあえずそこに座れよ」


椅子を引きずって隣の薬品棚まで行きながら言った。


「じゃあ、保健の先生はどこで見つけられますか?」


少年はさらに尋ねるが、言うことを聞いて、泣いている少女を連れて傍らのベッドに座らせた。


「知るかよ」


傷の手当に必要な物を見つけて、走って戻った。


「動くなよ!ちょっと我慢しろ!」


見たところ、それほど酷い転び方ではない。少し皮が破れた程度だ。傷を洗浄し、消毒して、絆創膏を貼れば大丈夫だ。


「保健の先生、呼ばなくていいんですか?」


少年はまだ心配そうに尋ねる。


「必要ないよ。それにどこ行ったかも分かんないし」


少女の傷を洗浄しながら、少年を適当に相手する。


すぐに終わった。


「よし、他に痛いところは?」


片付けながら続けて尋ねる。


「こ、ここ」


少女は泣き声交じりに手も差し出してきた。


そうだよな、転んだら無意識に手をつくよな。


「おい、絆創膏もう一枚取ってくれ」


手の傷の洗浄を続けながら叫んだ。


二人のガキがビクッとした。


「面倒くさいなあ。あんた医療資格とかあんの?無茶しちゃって!」


ずっと隣のベッドに寝転んでいた優一が毒づきながらも、起き上がって取ってくれた。


「おい!動くな!」


少女に言う。優一の返答でまた二人がビビッて、少女が思わず手を引っ込めたからだ。


「はいよ」


ちょうど手の傷の洗浄が終わったところで、優一が絆創膏の箱ごと持ってきた。


「一枚でいいって言っただろ、もう」


文句を言いながら包装を開け、少女の最後の傷に絆創膏を貼ってやった。


「他に痛いところは、もうないよな?」


片付けながらもう一度確認する。


「転んだところ、まだ痛いの」


彼女は鼻水を啜りながら、素直に質問に答えた。


でも、小妹妹よ、ちょっとは遠慮ってものを覚えたほうが…


「じゃあ、痛いのをすぐに消し去る魔法を使ってあげようかな!」


片付けの手を止めて、わざとらしく神秘的に言った。


「本当?」


彼女は半信半疑で尋ねた。


隣のベッドに寝ている優一は、呆れた顔で俺を見ている。


「嘘だったら、隣の奴は犬な!」


続けて答える。


「おい!」


優一が何か言おうとしたが、手を振って遮り、すぐに非常に真剣な表情を作り、彼女の傷口の近くに手をかざした。


「聖なる力は香り高き糧なり、ここに月の女神スナの名において、傷つきし者に痛みを消し去る慰めを与えたまえ!痛いの痛いの、飛んでいけ!」


どうしていいか分からなかったけど、注意をそらせば痛みも和らぐことは知っている。で、咄嗟に頭に浮かんだ滅茶苦茶な呪文をでっち上げた。


「どうだ?」


さらに尋ねる。


二人はただ茫然と首を振った。効果はあったってことだ。隣で優一が呆れたように何か呟いていたが、多分俺を罵っているんだろう。


「戻らなくていいぞ。二人ともここで放課になるまで一緒に待ってろ」


片付けながら続ける。


「すごいんだね!」


我に返った少年が近づいてきて感嘆の声をあげた。


「ちょっと離れて…それとこれ、ゴミ箱に捨てといて」


そう言って片付けたゴミを彼の手に押し付ける。このガキ、なかなか言うことを聞くな。


でも、うるさいのはやっぱりうるさい。俺が席に戻っても、ずっと質問攻めにしてくる。俺をAIか何かと勘違いしてるんじゃないか?


「中野先生、今日だったか忘れたけど」


保健室のドアがまた勢いよく開かれ、お馴染みの無骨な声が聞こえてきた。


「おっ、先生、来るの遅すぎっすよ!」


うるさいガキから逃れるチャンスを掴み、すぐに固定NPCに話しかけに行った。


「ここで何してるんだ、小僧」


先生も気軽に挨拶を返す。


「友達が頭痛いんで、付き添って来ました」


前もって考えておいた理由を答える。


「先に彼女の傷の手当をしてやるよ。お前の友達、熱はあるか?」


体育教師はそう言いながら、転んだ少女の方へ歩いていく。


「大したことないです。ちょっと寝れば治ります」


答える。


「君が包帯を巻いたのか?」


体育教師は、もう処置済みの傷を見て、すぐに誰がやったか見当をつけたようだ。


「ちょっとしたことですよ」


俺は椅子に寄りかかって目を閉じ、非常にリラックスした様子で答えた。


「なるほど、佐藤先生がお前は小さいのに大人びてるって言ってたのも頷けるな、ははは!」


彼は歩み寄り、俺の頭に手を置いて、例の明るい笑い声をあげた。


「小さくないっすよ!」


彼の手を払いのけながら言う。


「じゃあ、保健室はお前に任せた。体育委員も残ってくれ。先生は授業に戻らないといけないからな」


彼は言うなり振り返ってドアの外へ行き、去り際にドアを閉めるのも忘れなかった。


おいおい、俺まだ中学二年生の二周目だぞ。そんなに信用しすぎじゃないか?


「うるさいな、向こう行ってろ」


あの少年がまだ質問を続けようとしたが、チャンスはやらない。質問される前に追い払った。


全く、人の休憩時間を邪魔するなよ。


その後、俺は美里の椅子に寄りかかってしばしうたた寝し、授業が終わる頃に現れた三番目のドアを開ける奴が現れるまでそうしていた。


でも、今回は運が悪かった。俺たちを逮捕しに来た奈々子だった。


下校前に戻れば気づかれないと思っていたのに、彼女が早めに俺たちを探しに来るとは。彼女が口をきかずに真剣な顔で立っているのを見て、俺はすぐに椅子から飛び降りた。


「すみません、悪かったです!」


すぐに土下座した。


「はあ…まあいいわ。あなたの弟は?」


彼女は仕方なさそうに顔を覆いながら尋ねた。


「ちょっと待って!」


そう言って彼女が寝ているベッドの方へ走った。


気持ち良さそうに寝てるな。なら、容赦はしない!今日二度目のビンタをご馳走してやる。


「あ?」


突然の強制起動で混乱している妹に、先手を打って告げ口する。


「全部優一のせいです。アイツが、アイツがここで寝たいって言ったんです」


俺はわざとらしく無実の表情を作った。


「信じないわよ」


まさか奈々子に引っかからないとは。


「えへっ!」


どうやら責任逃れはできそうにない。


「さっさと戻りなさい。話が終わったらもうすぐ下校時間だから」


奈々子が続けて言う。


もう俺たちを追及するのも面倒になったらしい。


教室に戻らされ、まだお尻もつかないうちに、また奈々子に一杯食わされた。


「後ろの二人は立って聞きなさい!」


彼女はわざと厳しく言った。


この腹黒い田舎女め!


「この間、通知が来ていたわ。近所で不審者が他の生徒を脅しているっていうの。だから、みんなは集団下校の後はできるだけ外に出ないように。特に後ろの二人、自分で帰宅する者は気をつけなさい!」


彼女はそう言って突然語調を強めた。


まさか俺にも関係あるとはな…


「今日は以上にしましょう。みんな帰り道は気をつけて、列から離れないように!後ろの二人は、自分たちが連れている他のメンバーを絶対にはぐらせるんじゃないよ!」


奈々子は念を押すように言った。ただし、最後の言葉は語調を強めてわざと強調していた。


「はーい!」


ガキどもが一斉に答える。


下校前に、奈々子は俺たちに厄介な宿題を残していった。授業中に寝ていた優一には今日の授業内容を五回書き写す罰、俺には自分が言ったことを100回書き写す罰だ。


下半分を言わなくて本当に良かった。言ってたら二倍の二百回だったかも…


でも明日は週末だし、時間はたっぷりある。


荷物をまとめてランドセルを背負い、隣のクラスに俺の可愛い子を待ちに行く。今は友達と話しているから片付けるのに少し時間がかかるけど、こうやって娘を待つような感覚もまた一味違って悪くない。しかも、変わらず俺に抱きついてきてくれるんだから、本当に最高だ!


ただ、隣の妹がいつも少し攻撃的な目を向けてくるのが難点だけど。


帰る前に、まずは別の駄菓子屋に寄った。だって、学校給食の栄養がどこにあるか分かったもんじゃない、全然足りないんだよ!


まずはお菓子を調達だ。


でも、金曜日は固定NPCが入口にいない。何せ、上級生は俺たちより一時間多く授業がある。そしてこの日の時間割は、ちょうど低学年の下校時間に上級生のあるクラスに授業が入っているので、うちの体育教師は見張りに立てないのだ。


良いニュースとしては、学校には体育教師は一人だけじゃないってことだ!今は、黒くて短い仮面のような、期間限定NPCに代わっている!


去年の夏休み後に着任した新人で、元陸上選手だったとか。それに、この流線型の低空気抵抗な体型を見ると、あのチビで田舎者の担任よりも年下なんじゃないかと思えてしまう、信じ難いけど。


ところが、俺たちが駄菓子屋から出てきた時、クラスのあの、多分一人が好きな女の子もちょうど出てきたところで、俺たちと同じ方向に歩いていたけど、20メートルほど距離を置いていた。


歩きながら、駆け寄って挨拶しようかと考えているうちに、彼女は分かれ道を曲がってしまった。仕方ない、俺たちはあっちには行かない。


でも、ナンパを諦めたその時、前方の電柱に新しく「付近に出没する不審者に注意」という立て札が増えているのに気づいた。そしてその立て札のすぐ傍には、明らかに怪しい人物と分かるオッサンが立っていた…


全然隠す気ないだろ!


俺は前に歩いていた二人の小さな可愛い子を捕まえた。


「おい、ちょっと待て」


それから優一を呼び止めた。


「あ?」


彼女は怪訝そうに振り返った。このアイツは全く警戒心というものがない。


「あいつ、どう見ても普通じゃないだろ?」


説明する。


「分かってるよ」


アイツはどうでもよさそうに答える。


「なのに、なんであっちに行こうとするんだ?」


俺は呆れて言う。


「何怖がることあるの?前に交番もあるし、何かあったら、あんたのランドセルについてるこれ、飾りなわけ?」


アイツは真面目くさって言う。


「確かに…」


俺の言葉が終わらないうちに、あの不審者がこちらに向かって動き出した。


俺は急いで由香里と風間を背後に庇い、ランドセルの肩紐に付けてあるブザーのリングに親指をかけ、どんな状況でもすぐに引きちぎって鳴らせるように親指を握り締めた。


「お嬢ちゃんたち、おじさん、この辺に引っ越してきたばかりで、散歩してたら家が分からなくなっちゃって…」


奴は言いながら近づいてくる。


「下がれ!ロリコン野郎!こっちはこれを鳴らすぞ!」


手を伸ばして制し、大声で威嚇した。


「あの…兄貴、お前がそれを言う資格あるのか?」


優一の奴は俺の言葉を聞いて近づき、小声で突っ込んだ。


「お前、うるさいな!」


遠慮なく言い返す。


「頼むから興奮しないでくれ!おじさんはただ道を尋ねたかっただけで…これをお前さんたちにやるから、もし道案内してくれたら」


不審なオッサンはまだ諦めず、飴玉まで取り出して誘惑してきた。


全く、自分の言い訳がどれだけ貧相か、ちょっと考えてみろよ!俺が代わりにやるなら、最低でもクレープでも持ってくるね。成功率もお前の安っぽい飴よりずっと高いだろうに。


「前に交番があるから、警官さんにお前の話、信じてもらえるか聞いてみたらどうだ?そんなもん、誠意のかけらもないな。まったく」


首を振りながら軽蔑した口調で言う。突然クレープが食べたくなってきた。


「ああ…大人は忘れちゃいけないことも、たまには忘れるもんなんだ」


容疑者のおっさんは、なんだか気落ちした様子だ。でもまだ諦めていないらしい。


「兄貴、それじゃダメだな。代われよ」


優一が一歩前に出た。逆に、向かい合っていた成人男性の容疑者が後ずさるほどだった。


「おやおや、おっさん、それって人生、失敗してるんじゃない?その程度の飴玉で、今どきの子どもが騙されると思ってるの?それに、その言い訳、あまりにいい加減すぎない?まさか知能の方もイマイチで、普通の女性が一緒になってくれるわけないよね?」


アイツは言いながらゆっくりと前に進み、このおっさんは何も言えずに、どんどん後ずさりしている。


「でも残念でしたね、そんなもんじゃ、今どき子どもだって騙せませんよ。まさかおっさん、自分のアレもそんなに無能で、人に見られるのが怖いから子どもを騙そうとしてるんじゃないでしょうね?それも残念、子どもが見ても怖がらないだろうね」


アイツは手を後ろに組んで、左右に揺れながらさらに前進する。


「想像つくけど、おっさん、女の子の手すら握ったことないんでしょ?私を抱きたい?すごく抱きたいんだろ?いつも可愛い女の子が胸に飛び込んでくるのを想像してるんだろ?」


アイツは続ける。でもなぜか、向こうを攻撃しているというより、俺を攻撃しているようにしか聞こえない…


「もし5000円出すなら、特別に頭撫でさせてあげてもいいよ、クズおっさん!」


アイツは立ち止まり、牙をむいた。こいつ、ゆすってるんじゃないか!


「あの…おじさん、帰り道思い出したから、もう…」


容疑者のおっさんは、そう言って逃げ出そうとした。


「兄貴、逃げようとしたら、鳴らせ!私はもうあいつの顔は覚えたから。交番の近くでやるなんて本当にバカだし、顔を隠そうともしないんだから」


優一が突然真剣な口調で言う。


「OK!」


俺はアイツに答える。


「お嬢ちゃん、おじさんが悪かったって分かってるんだ。許してくれよ?」


容疑者が泣き言を言い始めた!


「条件を選べるのを選ばないなら、財布置いていけ、バカ!さもないと、このまま前の交番に通報するから!」


アイツははっきりと吹っかけてきた。


「ダメだ、ダメだ。おじさんは帰るよ。お前さんたち、遊んでな。気をつけて帰れよ!」


怪しいおっさんは誤魔化そうと、そう言って立ち去ろうとする。


「小学生が徒歩で行ける範囲なら、距離は2キロ以内だろう。総当たりなら1ヶ月もかからないはずだ。警察が入れば、1週間もあれば見つかるかもしれないな」


後ろから付け加えて言う。ただ脅かしているだけだけど。


「全部は多すぎる。少しなら…」


まさか怪しいおっさんが値切ろうとしてきた!


「5000!」


優一が値をつけた。


最初のと何も変わらん!


「一万!」


後のクレープのために、俺は値上げを選んだ。


「よし!一人一万だ!」


俺の良い妹の意味は、つまり人数分で計算していたのか!


「やっぱりちょっと少なくしようぜ、一万だってもう結構な額だろ」


小声で言う。


「私は別に構わないけどね。兄貴、もっとお菓子買う予算はいらないの?」


優一が続けて誘惑する。


「妹よ、俺たち今、恐喝してるんだぞ」


注意を促す。


「分かってるよ。じゃあ一万で?」


アイツはそう尋ねるが、明らかにまだ欲しがっている。彼女がこのまま道を踏み外さないように。


「一万だ。地面に置いて、ゆっくり下がれ!」


俺は直接言った。


怪しいおっさんはあっさりと金を出した。地面に置いた。今日は風がなくて良かった。


奴は一歩一歩後退していき、俺もブザーのリングをしっかり握りしめ、慎重に前に進んだ。


一万円札を手にするまで、ようやく手を振って奴を逃がしてやった。


この怪しいおっさんは児童誘拐に見えたけど、悪意はあまり感じられなかった。それに、放課前に奈々子が言ってた子どもを脅す不審者って話もある。


だって、本当の誘拐犯なら、こんなに簡単に話が通じるわけがないし、一万円も置いていったりしない…このお札の指紋情報だけで、十分逮捕できるのに。


「兄貴、あんな簡単に逃がしちゃっていいの?」


怖がっている二人の小さな可愛い子を連れて、優一が歩いてきて尋ねた。


「悪意はなかったんだよ。本物の犯人が物的証拠を残すわけないだろ」


札をポケットに突っ込んだ。


「ロリコンの考えなんて私には分かんないけど、少なくとも収穫はあったね!またコンビニでお菓子買ってこ!」


アイツはそう言って家に向かおうとする。


「何考えてんだ、まずは迂回だ」


アイツを捕まえて言い、それから隊列を反対方向へ進ませた。


「それと、さっきチラッと俺のこと罵ってなかったか?」


歩きながら問い詰める。


「してないよ」


アイツは誠実に答える。


「じゃあ、後でコソコソ俺のこと言ってなかったか?」


さらに問い詰める。


「してないってば!どうやってあいつを罵ればいいか分かんなかったから、実は最初からあんたのこと、あからさまに罵ってたんだよ!」


アイツは否定し、それから正直に言うと、逃げ出した。


「おい、このクソ野郎!」


少し考えてから、ようやく反応して悪態をついた。


アイツは、二人の小さな可愛い子を置いてはいけないのを分かっていて、前でこっちに向かってあっかんべーをしている!


金が誰のところにあると思ってるんだ。後でお菓子なんか買ってやるもんか。

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