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累計PVアクセス5000を超えました。

読んでくださった皆様、ありがとうございます。

不定期更新ですが、これからもよろしくお願いします。

  食後の一服を終え、俺は母さん達と共に他の夫人の所に赴いた。

  まずは第一夫人、シャール母さんの所だ。義母と呼ばないのは、そう言う風習であることと、何より、俺のことも我が子の様に思ってくれていることが一番の要因だ。この家にいる夫人は皆そうだし、兄弟達もそうだ。


「シャール姉様、今お時間よろしいでしょうか?」


  あ、言い忘れていたけど、夫人同士の呼び名は基本、「〜姉様」や「〜さん」だ。「〜姉様」と呼ばれるのは、発言権などが大きい、若い数字を冠する夫人で、「〜さん」と呼ばれるのは、発言権のあまりない下っ端の夫人だ。ちなみに母さんは第四夫人。四人いる夫人達の中で、一番の下っ端である。

  と言ってもこの家では特に差別だとかはされてないし、身分が云々、と言う話も聞かない。一緒に生活していて、本当の姉妹の様に、仲はとても良好だと思う。特に第三夫人のタニヤ母さんとはちょくちょく子育ての相談とか、裁縫の手ほどきを受けている。先週、新しい服を作ってもらったのは記憶に新しい。


「はーい、いいですよー。入ってください」


  シャール母さんから入室の許可を貰って、部屋に入る。入ってと言われるまでは絶対に部屋に入らないのが礼儀らしい。ここら辺は日本とそう変わらないな。


「御機嫌よう、シャール姉様。今日は相談があって参りました」


「私で良ければいくらでも」


  そう言ってシャール母さんは使用人の婆ちゃんに全員分のお茶を用意させる。懐かしい緑茶のような香りがするお茶だ。味は緑茶ではなかったけど。


  シャール母さんはセッタン兄さんとケルベル兄さんの生みの親で、兄さん達以外に子供はいない。そのため、今は一人だ。まぁ、息子夫婦は隣の棟で暮らしているから、孫にもすぐ会えて別段寂しそうではない。それにシャール母さん自身、よく図書館などに出かけており、夫人達の中で一番交友関係が広い。


「もうそろそろヴァリナさんも落ち着いた頃だと思うので、お見舞いに行くつもりなのですが、何を贈ろうか迷ってしまって」


「あぁ、ヴァリナさんはファティーマさんと同郷だったもんね。それだったら他の人も呼ばないとね」


  そう言ってシャール母さんは部屋を出て、他の夫人を呼んで来た。同じ棟だからすぐに集まる。他の小さい(と言っても皆俺より年上だが)兄弟も。

  ちなみに、今この場にいる兄弟は以下の通りだ。


  おととい六歳になった、六女のホウリィ姉さんに、今年五歳になる、双子の三男のアイリとテイリ兄さん。それと同じく今年四歳になる五男のコルシュカ兄さん。皆サーシャ母さんの子で、俺が一番初めに見た兄弟だ。フーダ明けの前、ほっぺたプニプニ攻撃をかまされたな。

  残りの他の姉妹は皆嫁に行き、この家にはもういない。長男と次男のセッタン兄さんとケルベル兄さんは、父さんから任された仕事をこなしつつ、隣の棟で嫁さんと子供と一緒に生活している。


「あら、シャール姉様。シュルッカ様やセッタン達は呼ばないのですか? それにお義父様達も」


  入って来たのが夫人と子供しかいなかったため、母さんが不思議に思って尋ねた。


「えぇ。今回はしなくとも十分だと思います。セッタンやシュルッカはどうせ男手として、町会経由でこれから何度も顔合わせをしていきますから。今回わざわざ相談しなくとも、何かあれば向こうから来ると思いますよ。


  ヤシャプヮ(セッタン兄さんの第一夫人)さん達も、セッタン達と一緒の方が話しやすいでしょうし。それに、相談するんだったら、私達である程度意見をまとめて、みんなが揃う晩御飯の時にした方が良いと思います。あくまでファティーマさんが主体ですから」


  母さんの問いに、シャール母さんは淀みなく答える。その答えに、母さんも納得の表情だ。

  それから、母さん達は何を贈るか相談し始めた。その間、ホウリィ姉さんは一番小さい俺のお守りをして過ごす。他の兄弟も一応してくれるが、木のおもちゃで遊びながらだ。


「アイリとテイリはもうどんなお馬がいいか決めた?」


  俺をあやしながら、ホウリィ姉さんが木のおもちゃで遊んでいた兄さん達に尋ねる。この世界では馬は身近な生き物で、男は皆、五歳になると自分の馬を持つ。また、馬が買えないような家でも、馬を持っている人に借りて、必ず一人ででも乗りこなせるようにする。生活のためでもあるが、それ以上に、馬に乗れない男は男として認められないのだ。


「俺は虹毛馬が良い!」


  とアイリ兄さんは即座に答えた。虹毛馬とは、セッタン兄さんが五歳の頃、町の外にまで行って捕獲した中型馬だ。サラブレッドほどスマートな体つきではないが、速さはあり、粗食にも耐えるらしい。鬣(たてがみ)から尾っぽにかけて、薄水色から日の入りを思わせる美しい紫色のグラデーションをしており、とても美しい色合いをしている。また、肌は白地にうっすらと薄水色の斑模様があり、空をその身に写したかの様だった。多少気難しい所はあるが、大人し目の性格だ。ファリダットと名付けられており、何度か触らせてもらったが、とても賢く、数回しか顔を合わせていない俺のこともすぐに覚えてくれた。セッタン兄さんに似て、人当たりが良いのかもしれない。


  また、長距離を走れることでも有名で、走行距離の長さと鬣の色から虹の名を冠している。馬市場ではそうそうに見ない、希少な馬だ。機動力を活かし、馬上弓を得意とする兄さんとも相性が良い。


「僕は角付きのカッコイイのが良いな」


  それに続くようにテイリ兄さんが答える。ちなみに、地球では馬と言えば馬一種のことを指すが、この世界では違う。馬(地球以上にカラーバリエーションが豊富)も勿論含むが、それ以外のもの、ユニコーンやバイコーンと言ったファンタジックな生き物や、地球でもお馴染みだった驢馬に鹿、ラクダ等と言ったものも馬に分類される。


  中でも角付きとは、鹿やバイコーンなどのことを指し、気性は荒いものの、その攻撃性の高さなどから戦士が好んで騎乗する種だ。日本の大人しい鹿では想像も出来ないが。こっちの鹿は、「どんな進化したんだ?」と思わず口に出るくらいデカくて凶暴だった。もう二度と近付きたくない。でも、俺の家の大事な商品だから嫌でも触れ合う予定だ。


  ちなみに、ケルベル兄さんが所持している馬も角付きだ。この世界ではバイコーンなどは珍しくなく、馬市に行けば普通に売っているらしい。


  シルヴァンと名付けられたケルベル兄さんの愛馬は、黒地の肌を持ち、深緑色の鬣をした毛足の長い大型のバイコーンだ。恐らく、この町で一、二を争う突貫力と持久力、そして気性の激しさを待つ馬だろう。遠目から一度見ただけだが、俺にはあの馬(シルヴァン)を乗りこなすどころか、近付くことさえ叶いそうにない。と言うか近付きたくない。恐過ぎる。


  そんな恐ろしい馬を乗りこなすケルベル兄さんは当然強い。見た目は細マッチョだ。町で一、二を争う馬上槍の名手で、馬上剣術も上手い。俺達兄弟の中で一番前衛向きだ。商人なのに。セッタン兄さんも前衛でも十分活躍する腕前らしいが、ケルベル兄さんには劣る。本人から経験談と共に聞いたから間違いないだろう。速さと後方をセッタン兄さんが補い、突貫と前衛を担うのがケルベル兄さん達のコンビネーションらしい。

  そのため、ケルベル兄さんは速さよりも馬力を重視し、普通の馬よりも強靭な脚力や持久力を持つ大型馬を普段から愛用している。


「角付きって、テイリじゃ乗りこなせないよ」


「アイリだって虹毛馬なんて早過ぎるよ。きっと父上どころか、セッタン兄さまにだって止められるね」


  笑いながらアイリ兄さんが言えば、むっとしたようにテイリ兄さんが負けじと言い返す。そんな二人の様子を見て、コルシュカ兄さんはアワアワになり、ホウリィ姉さんは特に気にすることなくお菓子をつまみ、コルシュカ兄さんに分けた。俺も欲しがったら、「アージはまだ小さいからダメ」と言って断られた。むむ、残念。その分をすっかりご機嫌な様子のコルシュカ兄さんが食べた。良いな〜。そんな視線を送れば、コルシュカ兄さんは代わりに今まで遊んでいた木のおもちゃを一つ渡してくれた。仕方ない。今はこれで我慢するか。コルシュカ兄さんと一緒に木のおもちゃで遊ぶ。なかなか楽しい。


「ホウリィ姉さまはどう思う⁈」


  言い合いはまだ続いていたらしく、アイリ、テイリ兄さん達が互いに憤慨した様子で声を合わせて問いかけてきた。それに対してホウリィ姉さんは、慣れた様子で「そうね」と呟きながら答える。


「馬市に良いのがいるかどうかによるわ。でも、今みたいに喧嘩してたらきっとお父様は怒って、どんなお馬も買ってくれないでしょうね」


  わざと馬を買ってもらえない、と言う箇所を強調して告げるホウリィ姉さん。その言葉に、アイリ兄さんとテイリ兄さんがハッとした顔になる。


「言っちゃダメだよ、ホウリィ姉さま!」


「そうだよ、もうすぐ僕ら馬市へ連れて行ってもらうんだから!」


「どーしようかなー?」


  そう言いながら、二人にお菓子を食べさせるホウリィ姉さん。お菓子はあっと言うになくなってしまった。幼児の食欲恐るべし。


「新しいお菓子か飲み物を持ってきてくれたら内緒にしてあげるわ」


  その言葉に我先にと駈け出す兄さん達。実に微笑ましい。出来ることなら俺でも食べられるお菓子を取ってきて欲しいものだ。


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