プロローグ
月曜日の朝、石巻駅北側の駐輪場には多くの人が押し寄せる。
と言っても、ほとんどは大学生と社会人で、制服を着る中高生はほぼ見かけない。
石巻は宮城県第二の経済規模を誇る都市であり、高校も集中している。
だから周辺地域から石巻へ通う高校生はそれなりにいても、逆は少ない。
市内の高校の制服姿で自転車を停めた帆足麻美は、少しばかり周りの目が気になった。
学校へ行く道から外れて駅に来たことを、同級生に知られていないといいな、と思いながら歩きはじめた。
人の波に混ざって南北自由通路「石巻ステーションブリッジ」を渡っていく。
駅南側に降り立った麻美は改めてスマートフォンを開いた。
これから会う人物の服装を確かめるためだ。
黄色のスタッフジャンパーに黒のショルダーバッグ。
ゆっくり見回すと、該当する人物が目に入った。
黒い髪を後ろでまとめた女性。
メッセージの通り蛍光イエローのナイロンジャンパー。
イベントスタッフでお馴染みの服だ。
黒いショルダーバッグは左肩に掛けている。
下はビジネススーツのスカートのようだ。
麻美の胸が緊張と興奮でいっぱいになった。
心臓が激しく脈打って息をするのも苦しい。
これからあの女性に声をかけ、名前を告げる。
どこへどうやって行くのか、詳しくは知らない。
それでも構わない。
私はこれまでの孤独から解放される。
ほんの少し、生まれが他の人と違ったばかりに長く続いた孤独。
どれほど苛まれてきただろう。
今日で全てが変わる。




