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ビッグボス

俺はフェルとセドリックに続いて建物の中に入った。

意外と広い。まず目の前に踊り場、そして左右から上れる階段。

人はそこそこいる。20人くらいだろうか。

壁には新聞のような記事がズラズラ貼られていた。

服や武器なども掛けてある。誰かの剣や魔法の杖みたいなものも、小刀まで。沢山だ。

踊り場の奥にはカウンターに綺麗なお姉さんが立っている。

髪の毛は赤毛で服装も似合っている。西洋のアイドルのような顔立ちだ。

そのせいか、いろんな人から話しかけられている。列まで作っているくらいだ。


「あの方はこの建物の受付人です。新人で可愛いと評判で最近は毎日のように男が来るんです」


アイドルも大変だ。


「行きますよ」


そう言われてセドリックについて行った。

階段を上りながら異変に気づいた。フェルが居ない。数秒前まで隣にいたのに。いつの間に?

そう思い見渡してみる。

階段を登る最中に丁度良い角度で見えた踊り場の奥のカウンター。

フェルが居た。あの人盛りの中にすごい声でお姉さんにアピールをしている。

そんなに綺麗なんだろうか。

さっきちらっとしか見えなかったからなんとも言えない。

よし、俺もあとで挨拶をしにいくか。

いや、これは一個人の礼儀として挨拶をしにいくべきだな。

セドリックはそんなのお構いなしに進む。

アイドルは後にして俺もついていくことにした。

一々突っかかっていたら時間がかかりそうだ。

2階に着くとフロアから見えた真ん中のドアを奥へと進んだ。

廊下の両サイドには様々な部屋がある。中は見えないがドアの上に◯◯室と全ての部屋に書かれていた。

学校を思い出すな。奥に他とは少し違う作りのドアがある。恐らくそこがボス部屋だろう。

初期装備の俺は生きて帰れるだろうか。

ドア前に立つとセドリックがノックを3回した。

すると中から太い声で


「おう、入れ」


と聞こえた。

声からして強そうだ。


「失礼します」

セドリックに続いて俺も


「し、失礼します!」


内装は校長室の明るい感じの部屋だ。

中に入るとボスがいた。明らかに勝てない。

ハゲの頭にタトゥーが入っているし、身体がでかい。胸板と肩幅がボディービルダー並みだ。

服装はスーツっぽい服。白シャツのボタンが弾きれんばかりに踏ん張っている。

女の人ならまだしもゴリゴリの筋肉マッチョの胸ボタンなんぞ要らないに等しい。胸ボタン君にはこれからも是非頑張ってもらいたい。


「....報告は以上です」


どうやらいつの間にかセドリックが報告をしていたらしい。

「ご苦労....君がアルティか」

威圧されてます。いや多分なんもしてないだろうけど、僕にとっては威圧されてます。助けて。

「は、はい!」

しまった。緊張して変な声が出てしまった。

「随分と元気が良いじゃねぇか!アハハハ!」

まずい脇汗が大洪水になっているかも知れない。

ボスは笑いながら、報告書を読み頷いている。

「よし!ナタリが言ってるんだ大丈夫だろ。フィリア!」


「はい!今行きます」


ボスが誰かを呼ぶと部屋の右の壁のドアから白髪で長髪の女性が急足に入ってきた。

「ナタリの連絡鳥の報告書に書かれてある情報で住民書と測定やら、色々頼む」


「了解です」


そう言いまた女性は部屋に戻って行った。

多分今のがナタリが言っていたババアだろうと思うのだが、見た目はかなり若そうだ。顔立ちは完全に20歳前半くらい。しかも美人。

「俺の名前はヴァルダー。一応、政府の次くらいに偉い人をやっている。よろしくな。あ、自分で言うのもなんだけど、強面だけど怖くないから安心してね」

なんか最後らへんちょっと可愛く言うのを意識したのだろうか、気持ち悪かった。なんというか顔と声と仕草が合って無さすぎるというか。


「大丈夫、アルティ。通常運転です」

あ、なるほど。


「了解です。セドリックさん」

一呼吸置いて、


「色々と準備があるから夕方また寄ってくれ」


「分かりました...では、失礼します」


「し、失礼します」


そうして部屋を出た俺とセドリック。


「夕方、アルティは先程言われたように、ここに一度立ち寄ってください。では、私はこれで」


「あの、それまで俺は何をしておけば..?」


「なんでも良いです。街でも探索してみてはいかがです」


ならばそうするとしよう。犬耳、猫耳の女の人とか一度は見てみたい。別にやましい気持ちとかではなくただ単純に一目崇めてみたいだけだ。

「行きますよ、フェル」

いつの間にかセドリックはそう言いフェルの首根っこを掴んで外へ出て行っていた。

じゃあ俺も探索開始!

そう言い外に出ようとした瞬間。あることを思い出した。

おっと、危ない。何か忘れていると思ったら。

進行方向を回れ右して直進する。

挨拶をしなくては。

人盛りは少し収まったような気がする。

今は体感3時くらいか。


「あのぉ、要件がある人だけ来てくださると助かります」


本人はかなり声を張ったつもりか、両手を口の近くに寄せて叫んでいる。

そのせいか胸を張っている。

!!

こ、これは...。

遠くからでも見間違えることはない。

この高さ。この幅の広さ。間違いなくエベレスト並みだ。

なるほど、これが幾たびと登る人を失意させてきた。幻の、伝説の山。

俺はいつの間にか人混みの中の一員となる場場所に立っていた。

あれ、いつの間に?


顔もしっかり見えた。

これは....お姫様か何かだろうか。

というか。

俺はいま夢を見ているのだろうか。

よく見ると綺麗な赤毛に黒いメッシュが入っている。

顔は言うまでもなく、仕草まで可愛い。


その時、奥から物音がした。

と、同時にドアが開いて怪物が出てきた。

「か、怪物だ」

俺以外の人たちも、動くことができなかった。

いや、待て。人間か?

目を擦るとはっきりと人が立っていた。

お、おばさん!?ちょっとまて、何歳だこの人。

胸の辺りに名札があることに気づいた。

読んでみる。


フカミ・チヨコ。

75歳。


どういうことだ。明らかに日本人の名前。

さらに、さっきまで一緒にいた人達が悲鳴をあげて逃げていく。


何が起こっているんだ。

その時、最前列にいて逃げ遅れた青年がチヨコに捕まった。そう、いつの間にかカウンターを越えてこちらまで出てきていた。

チヨコは青年に近寄ると同時に青年の口に目掛け深いキスを繰り広げた。

俺は動けなかった。正確には足を滑らせて転んだのだ。

初見殺しだが、早く気がつけた方だったのに。

なんて運が悪いんだ。自分の運を恨んだのはこれが2度目だ。チヨコは次々と逃げ遅れた人々を襲った。

襲われた人は生気を吸い取られたような顔をして、釣り上げられた後の魚みたいにピクピク動いていた。


チヨコは俺を次のターゲットとして、口をふにゃふにゃしながら目線に釘を打っていた。

チヨコ、だめだ。来るな。


「むにゃむにゃ」


や、やばい。こいつ、入れ歯が入ってない!

なんて言ってんのか分かんないし!

まずい、チヨコが来る!

だめだ焦って立てない。


「く、来るなぁ」 


キスは、まだしたことがないんだ!

やめろ!

俺のファーストキスは美人とが良い!

神様!仏様!誰でも良いから化け物を止めてくれ!

俺はなんとか後ろに引いたが背後はもう壁だった。

その時にはもうチヨコが俺にダイブしてきていた。

そして、ゴツンと壁と背中が当たった瞬間。

壁にかかってあった剣がバランスを崩して俺の頭目掛けて落ちてきた。運良く柄側が下だったおかげで死なずには済んだらしい。

実際、それに気づく前に俺は気を失っていたのだが。


「痛っ。あ、死ぬ」


俺は何が起こったかも、何が起こるのかもー確認できずに気を失った。

気を失う瞬間、

「ばぁちゃん!待って!その人はダメ!」

って聞こえた気がしたようなしないような。

でも記憶の途切れ方はチヨコのダイブだ。この世界には神も仏もいない。いるのはチヨコだ。


その日から俺はチヨコがトラウマとなったのだった。

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