続編その4-1 双子の成長(リリアン視点)ー僕はお父様のような英雄になりたい!
今日は、僕とグリオ、それにエドワードお兄様とエリザベスも一緒に、森の奥深くに隠された滝を探しに行くんだ。朝からわくわくして、大冒険のために朝食もいつもよりたくさん食べたよ。
エリザベスには「朝から、よくそれほど食べられますわね?」と驚かれたけど、「エリザベスこそ食べなすぎだよ。いいかい? 僕らは育ち盛りだ。たくさん食べていっぱい冒険しなきゃ、大きく逞しくなれないぞ」と教えてあげた。
「逞しくならなくて良いです。私、魔法騎士団総長になりたいわけではないですから。お母様のようになって、お父様のような素敵な方と結婚するのが夢ですもの!」
「そっか。とても良い夢だね」
双子の妹エリザベスは、自慢の妹だ。音楽と絵の才能に恵まれているし、とても優しい。今だって、僕の口の周りについたケチャップを、さりげなく拭いてくれている。
「今日は滝探しの探検にグリオと行くけど、エリザベスも行くだろう?」
「森に探検? 私は遠慮しておきます。グリオの背に乗るのは怖いですもの。高いところは嫌いです」
可哀想に。エリザベスは高所恐怖症なんだ。だから、僕は「綺麗なお花があったら摘んできてあげるよ」と言った。
「いいえ。綺麗なお花はそのまま、そこで咲いていてほしいです。摘んでしまったら可哀想だわ。リリアンお姉様のお話だけで充分です」
そんなふうに言うエリザベスはやっぱり優しい。花や緑が好きで、おしとやかでいつもにこにこしている。僕はエリザベスが大好きなんだ。
☆彡 ★彡
結局、探検は僕とエドワードお兄様とグリオで行くことになった。お母様には秘密だよ。グリオに、エドワードお兄様とまたがり、「空の散歩をしてくる」って言っただけだ。大人たちに秘密の大冒険ってわくわくする! グリオの背に乗れば、森まではひとっ飛びだし、上空から見下ろす光景は絶景だった。
森に入るとグリオの背から降りて、僕たちはわくわくしながらその道を歩き始めた。もちろん、ここは魔獣がいる魔の森じゃないから危険はないはずだ。途中でいろんな鳥たちに会ったし、橋がない大きな川にさしかかると、またグリオの背に乗せてもらう。
途中、森にしか咲いていない珍しい花や植物を眺めながら、愉快な気持ちで歩いた。メモも持ってきていたから、花や植物の形や色なんかをくわしく書いたよ。これは、あとでエリザベスに教えてあげるためだ。
そして、ついに僕たちはお目当ての滝を見つけたんだ。本当に美しくて、僕は思わず「わぁー!」って叫んじゃった。グリオに「滝の上から急降下してみたいな!」って言ったら、グリオは「よかろう、我の背中にしっかりとつかまれ!」って言ってくれた。エドワードお兄様も「私も行くよ!」って言って、僕たちはグリオの背にしっかりとしがみつく。
グリオは滝の上空高くまで飛び上がって、急降下! 空から見下ろすと、滝の轟音がすさまじい。滝壺が遠く霞むほどの高さだ。グリオの背は広く安心感を与えてくれるけれど、同時に僕の胸の中では恐怖と興奮が渦を巻いていた。
グリオが一声轟かせると、僕たちは空を切り裂くように急降下を始める。風が顔を叩き、髪を乱す。そのすべてが生きている実感を与えてくれた。下へ、下へと加速する中で、僕の心は奇妙な平穏を見つけた。この瞬間、僕はただの女の子ではなく、空を駆ける勇敢な騎手に変わったんだ。滝の水しぶきが上がる地点に近づくにつれ、グリオは巧みに翼を操り、速度を緩めた。
水面すれすれで飛ぶ感覚は、もはや言葉では言い表せないほどのスリルだった。僕たちは一体となり、自然の壮大さの中で自由を全身で感じた。この瞬間、僕は何者にも束縛されない。
グリオの背中に乗ることで、世界がどれほど広く、美しく、そして驚異に満ちているかを実感できた。僕の心臓はバクバクだったけど、すごく楽しかった!
「グリオ。僕が大きくなって、お父様のように魔法騎士団総長になったら、一緒に魔獣と戦ってくれる?」
「いいとも。ナサニエルの娘と戦えるなんて嬉しいぞ。ずっと、リリアンとエドワード、エリザベスの側にいよう。我はナサニエルとデリアの子孫とともに常にある」
グリオはとても嬉しそうだった。僕たちはグリオとずっと一緒だよ。格好良くて強いお父様と、綺麗で優しいお母様、それから頼りになるエドワードお兄様に、才能溢れる可愛い妹エリザベス。僕の家族は完璧なんだ!




