55 素晴らしい計画が・・・・・・その2(ブレイン視点)
その人物がくるりと振り返り大きな声を張り上げた。
「ブレイン! お前、私をここに呼びつけて何の用だ? ペーンに言われて来てやったが、私は忙しいのだぞ」
よく見たら、部屋の隅にはペーンが立っていた。
「へっ? エリーゼ副団長、その格好は?」
「あぁ、母親が模擬戦の後はこれを着ろとうるさくてな。私もいい歳だ。誰でもいいから男を見つけろ、と急かされている。これでもリラゴ伯爵家の長女ゆえ、家は継がねばならぬ。どうあっても婿は必要らしい。まったく困ったものだ。女の幸せは結婚だけじゃないのになぁ。そう思うだろう?」
「は、はい。つっ・・・・・・ちょっと、待ってください。なにかふらふらします。気持ちが悪い。吐きそうです」
「お前、飲み過ぎたのか? ったく、しようがない奴だな。ペーン、ナサニエル。お前らは戻っていいぞ。こいつは私が面倒を見る。まぁ、たいして使えなかったが、私の部下だった男だ」
「はい! よろしくお願いします。どうやら、ブレイン小隊長はエリーゼ副団長殿を好いているようでありますっ! 筋肉ムキムキのその腕に抱かれたい、と言っていたような気がします」
(ペーンめっ! いい加減なことを言うなよ)
「なんと、誠か? ふーーん。こいつは無能だが顔は悪くないしなぁ、お飾りの婿ならありか? 前向きに検討してやろう。はっはっはっは」
「では、エリーゼ副団長殿! 失礼します。行くぞ、ナサニエル。お前の体調は戻っているはずさ」
「ん? 確かに。もう苦しくない」
「うんうん。ナサニエルはなにも知らなくていいぞ。さぁ、デリア様のところに戻ろう。絶対、心配しているから」
ペーンはにこにこと去っていき、僕はまた嵌められたことを悟った。さっき割り込んで来たイアゴにグラスをすり替えられたのかもしれない。
(くっそ! あのメイドとの会話をペーンに聞かれていたのか? なんてこった。僕はエリーゼ副団長が苦手なんだよぉ)
しかし、今日の副団長はちょっと綺麗かもしれない! あの筋肉、素敵・・・・・・いやいや、そんなわけあるかぁーーい!
と、思ったらエリーゼ副団長が覆い被さって来て、唇を奪われた。いやいや、やめて、僕の身が危ない。
やめてーー!
☆彡 ★彡
「キスはまぁまぁだったな。合格点をやろう。お前は私の婿になれ。魔法騎士団を退き、辺境の先にあるリラゴ伯爵家のカントリーハウスで、婿修行をしろよ!」
「え、辺境の地なんて嫌です。王都がいい。田舎なんて嫌いだ」
「口答えをするなっ! お前の返事は『イエス』のみ。姿勢を正せ、顎を引け、私が話をしているときはまっすぐ目を見ろ! こらっ、目を逸らすんじゃない! わかったな!」
「Yes sir」
「声が小さい! 腹に力を入れろ! 自信を持て! 私といる時はいつも戦場と思え!」
「イエッサーー!!」
やばい。僕の婿入り先が決まった瞬間だった。こんなはずじゃぁなかったのに・・・・・・




