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あなたを解放してあげるね  作者: 青空一夏


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52 あの人に決めた(エレナ視点)

 ガーネット王国の王女である私は、私の小さな国が大国に比べて、あまりにも弱小であることを憂えていた。ガーネット王国は資源が不足しており、外交的な影響力も乏しいため、私は自分の国を助けるため、また国民に希望と幸福をもたらすために、イシャーウッド王国の魔法騎士団に潜入することを決意した。私はそこでお婿さん探しをするつもりだった。


 イシャーウッド王国の魔法騎士団には強くて活力の溢れた男性がたくさんいる。その中でも、真摯に努力する平民騎士という宝石の原石を拾い上げて、私の夫にすることが目的だった。


 そのうえで、大国の文化や政治の動向を学び、その知識を持ち帰り、小国を発展させたいという狙いもあった。私の目標は単なる婚約者の選定以上に、国家と国民の未来を向上させることにある。だから、めぼしい男性を見つけては観察する日々を送っていた。


 そうして、見つけたのがナサニエルという男性だった。彼は平民でありながらも、素晴らしく上品で美しい。おまけに皆から好かれていた。人望があるということは人間にとって大事なことだと思う。


 いつものように、ナサニエル様を観察していたら長い黒髪の騎士が密やかに私に耳打ちした。


「ナサニエルが好きなのでしょう? でも、メイドの身分の君には到底手が届きませんよ」


「ナサニエル様も平民でしょう? だって、平民寮に住んでいますもの」


「ナサニエルはとてもお金持ちで身分の高い侯爵に気に入られていますからね。なにしろ、毎晩屋敷に呼びつけられているらしいです。可哀想に、彼はそれに逆らえないのですよ」


 クスクスと笑いながら去って行く男は、ブレイン小隊長と呼ばれていた。彼の話だと、ナサニエル様は平民で後ろ盾もないから、侯爵の相手を無理矢理させられている、という意味だと思う。私は魔法騎士団館の掃除をしながら平民寮の騎士のひとりに確認してみた。


「ナサニエル様が身分の高い方のお気に入りとは本当ですか?」


「え? あぁ、確かにお気に入りらしいよ」



 別の方にはもっと突っ込んだ質問もしてみた。

「ナサニエル様は毎晩、高貴な方のお屋敷に行くそうですね」


「あぁ、毎晩行っているらしいなぁ。公休日の前日は決まってそこに泊まっているとも聞いたけど、それがどうかしたのかい?」


「いいえ。そのお屋敷というのは、どういった身分の女性のお屋敷なのでしょうか?」


「グラフトン侯爵閣下の屋敷だよ。ちなみにグラフトン侯爵閣下は男性さ」


(男性のお屋敷に毎晩通う? なんとかして助けてあげなきゃ・・・・・・)


 それからの私はナサニエル様が心配で、今まで以上に姿を追うようにしていた。姿を見つければ、遠くからでも駆けつけて挨拶をし続けた。ナサニエル様はちゃんと挨拶を返してくれたし、私に優しく微笑みかけてくれた。


(あの人に決めたわ! ガーネット王国に連れて帰ってあげれば、きっとナサニエル様も喜んでくれる。だって、平民から王女の婚約者になれるなんて大出世だもの)


 やっと気持ちが決まった瞬間だった。


「俺らのナサニエルをなんで追いかけ回しているんだよ。メイドの仕事をサボっちゃだめだろう?」


 後ろから声をかけてきたのは、ナサニエルさんには劣るものの、整った顔立ちのゴロヨ小隊長だった。




 

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