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第9話 女の園へ

ヘルメス号の修理が完了した。


データ送信機能は切ってあるが、ザナがもはや脅威ではない事を伝えるための大量の情報データが持ち込まれた。

ファッションや外食・娯楽といった消費文明に関わる情報も・・・である。

「これを見れば軍事国家なんて止める気になるかな?」とジュノがはしゃぐ。

だがサラは「普通の人はそうかも知れないけど、執政委員会の婆さん達はどうかな?」



レイや近所の人達が見送る中、ヘルメス号はザナの宇宙港を発進。

規定航路を通ってノーマに接近し、軍事衛星の識別区域に入る。


「こちら偵察艇ヘルメス号。惑星ザナにおける偵察任務を終えて帰還しました。着陸許可願います」

そうリアが送信する。そしてヘルメス号は軍事宇宙港への軌道に誘導され、大気圏に突入した。



宇宙港上空に近付くと、正門周辺に報道陣や多くの野次馬が見える。正門は警備陣で固められていた。

リアはパネルを操作しながら「放送電波は入るかな?」


モニターにニュース映像が映る。大々的に報道されていた。

「安否が気遣われていた三人の少女兵が帰還。心配されたザナでの虐待の実態は如何に」

そう叫ぶ中年女性アナウンサーの声に込められた歪んだ感情を垣間見て、リアは前途多難を感じた。


リアが「こういう誤解を解くのって大変じゃないかな?」

「そのために帰って来たんだから」とサラ。

ジュノが「またザナに行けるかな?」

「行けるわよ。ノーマが軍事国家なんて止めて平和になればね」とサラ。

リアとジュノが「キーツ達に会いたいな」

「そのために、大勢の人の前で訴えるの」とサラは言った。



ヘルメス号が着陸し、三人が艦から降りると、そのまま装甲車に乗せられて宇宙港を出た。

そして首都の軍事施設に向かう。監視役らしい三人の武装兵の威嚇を込めた視線に、ジュノは怯えた。


そんな不安をどうにかしようと、サラは指揮官らしい女性兵に訴える。

「私達、どうなるんですか? みんな私達の事、心配してくれてるんですよね? ザナの人達、悪い人じゃないです。人工子宮で子供作って、女性だって大勢居て、女日照りでもないし、文明の再建も進んでます」

女性兵は睨むような目つきで「そういう話は後で聞くわ。今は執政府の指示に従いなさい」


軍事施設に連行された彼女達は先ず、健康状態をチェックされる。

そして放送施設のような部屋に入った。

サラはマイクの前に座らされる。正面にテレビカメラが構えている。

そしてカメラの前でサラは、もはやザナが脅威ではない事を訴え、共存の道を求めた。



マイクに向けて語るサラの映像は、大々的にメディアに流れた。

人知れずヘルメス号の船底でその映像を見る五人が居た。

アンナ・ロディ・キーツと二人の武装コマンド、あのバンとロードだ。


ザナでヘルメス号が修理される時、機関部の一画を改造して秘密の居住スペースを作った。

そこに潜んでノーマに潜入し、最悪の事態に備えるためだ。

ノーマ首脳部がこのまま平和共存の道を選ぶ可能性は薄いと、ザナ首脳部は判断したのだ。そしてサラ達の身に危険が及ぶであろう事も。

その予想が的中した事を、サラの演説と称してメディアが流した映像で知った。


サラの顔と誰かの声が画面の中で語っている。

「私達三人は着地の際の事故でザナの男たちに捕まり、酷い虐待を受けました。監禁されて何度もレイプされ、幼いジュノとリアは心に深い傷を受けました。幸い、隙を見て脱出することが出来ましたが、そうでなかったら今頃、生きていたかどうかも解りません。彼等は以前にも増して狂暴な野獣となっています。きっとここにも攻めてきます。どうか皆さん、彼等を罰して下さい」



彼女を知る三人は唖然とした。

アンナが「これ、サラだよね?」

「けど声はサラじゃないよ」とロディ。

「要するにアフレコかよ。それで証言の捏造か? 酷いな」とキーツ。

バンが「まあ、こうなる予想はついてたけどね」


「サラ達はどうなるんでしょうか?」とロディ。

「二度と人前には出られないだろうね。声が違うってバレるだろうから」とロード。

「けど、家族とか彼女を知る人は気付くんじゃないですかね?」とキーツ。

アンナが「そういう人は居ないって、サラが言ってた。他の二人も」

「つまり最初から捨て駒のつもりだった訳ね」とロード。

「これで世論を煽ってザナに侵攻って段取りって訳かよ」とロディ。


ロードが言った。

「この船がザナ侵入時に採集した警戒態勢のデータは自動的に送られていたよ。攻め込むための準備に必要だからね」

「サラ達を救出して下さい。下手すると口封じで殺されちゃう」とアンナは訴えた。

「そのつもりだ」とロードとバンが答える。



演説を終えるとサラ達は別々の場所に連れて行かれ、窓ひとつ無い部屋で監禁された。

定期的に食事が運ばれるだけで、接触する者も居ない、外部の情報は一切入らない。監視カメラだけがこちらを睨んでいる。

これで戦時体制が終わって文明再建が始まる・・・という期待が甘かった事をサラは痛感した。


あの演説を見た人々はどう思ったのだろうか。

そもそもあれは公開されたのだろうか。

ジュノとリアはどうしているのだろうか。



ヘルメス号の船底で五人は状況の把握に努め、計画を練る。

「それで、サラ達は今、どこに?」とアンナ。

「ここだよ」とロードが説明しながら情報端末を操作する。

モニターに宇宙港から首都までの地形図が映る。


「こんなの、どうやって」とキーツ。

「着陸前に放ったドローンが彼女達を乗せた車を追跡してね。この地図はそのドローンからのものだ」とロードが説明。

「そこに侵入して救出ですか?」とロディ。

「その前に施設の情報を入手する必要がある」とロード。


アンナが「どうやって彼女達を見つけますか?」

バンが「スーツに発信機が仕掛けてある。24時間後に作動するようになっている」

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