表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/63

34

 ダンジョンのおおやしろから、時空の狭間に飛ばされたとき、同時にまた、嵐に会ったようだ、見知らぬ街に来ていた。体のあちらこちらが痛い。現状認識が第一だ、自分の名前はツキヨミ、神を宿すもの。大丈夫だ、自分が誰だかわかる。ショーウインドがある。恐る恐る、顔を写して見る、平凡な女の子がいた。歳は10才位、ふっと眷属達のことを考えた。誰もいない。神威を失ったのかもしれない。自分の装備をみる、眷属達、一人ひとりに渡した、小型亜空間収納庫は無事装着している。もっとも他の人間には、見えないが。


 ツキヨミは大気と、地脈をみる。地脈は活動している。地脈から水を汲み上げて、渇きをいやす。おいしい。大気には魔法エネルギーが、大量にある。洗浄魔法で体を清める。体全体に擦り傷、切り傷、深い傷もある、治癒魔法で全体をいやす。マナ魔法エネルギーを体の中で活性化して、元気を取り戻す。嵐に巻き込まれて、衣服はぼろぼろで、半裸に等しい。光学迷彩魔法で、清潔なワンピースをつくる。どこから見ても、中流家庭のお嬢さんだ。


 この街の情報を知りたい。休むところが欲しい。精神魔法で人々の頭から、少しずつ、情報を取り出す。宿屋の情報、相場、貨幣の種類、10歳の少女が生きていく為の、あらゆる情報を僅かの時間で、取得していく。錬金術師が弟子を欲しがっている。女の子が良いみたいだ、家事も手伝ってもらいたいのだろう。ツキヨミも働きたかった。この歳で一人でやっていくには、大人の協力がいる。もちろん精神魔法で、協力者に仕立て上げるのは可能だ、しかし出来れば、自然な形で、協力者を得たかった。


 錬金術者の人となりと、場所も把握ずみである。紹介者を介せず、一人で錬金術師のところに向った。錬金術師は女性であった。ツキヨミは行き倒れていたこと、貴女が助けてくれなければ、行き場がないことを、錬金術師にうったえた。女性は目に涙し、ツキヨミを抱いてくれた。


 生活は楽しかった。まだ若い錬金術師は、才能にあふれていた。錬金術師とツキヨミは姉妹のように暮らした。ひとつひとつの可能性を確かめながら、技術を極めっていった。錬金術は、魔法とは違う、魔法は大気中のマナ魔法エネルギーを、属性と術式に併せて顕現化する。錬金術は地脈と、妖精の力を借りる。ツキヨミは神なので、そこに神威がかかわるので、もう傍目には、何が何だか分らない。


 錬金術師はツキヨミを名前で呼んだ。ツキヨミは錬金術師を先生と呼んだ。先生はツキヨミと、ひとつ布団で寝ることを、好んだ。何かいやな事があると、ツキヨミを強く抱きしめて、頭を擦り付け、泣いている。嬉しい事があると、布団のなかで、ツキヨミに夜中まで、その日あったことを語る。


 生活は楽ではなかったが、ふたりでいると、楽しかった。先生は、簡単な生活魔法と地脈の力と、薬草によって、庶民に使える、安価なポーションを作り、販売した。住居は店舗と、工房を兼ねていた。ツキヨミと先生は交代で店番、家事・料理、薬草採取、ポーションの作成、薬の作成にあたった。


 ツキヨミは考えています。このままでは、金銭的余裕もうまれない。ポーションに神威をかければ、見たことも無いポーションが生まれるだろうが、眷族も見失ったツキヨミに、そこまでの力が、あるだろうか。主様の国を作る、人々を救う、そういった止むにやまれぬ思い無くて、何の神威だ。何の神だ。ツキヨミは市井の民として、先生と共に生きたいと思った。


 ツキヨミは、先生には内緒で、他の錬金術師の仕事を、見て回った。10歳といった年齢は、警戒されることがなく、色々な技術を見てとれた。ツキヨミは意識もせずに、弱い精神魔法で、錬金技術者の心から奥義を盗み見ていたのだ、自分でも気がつかなっかた、余りに自然体であったから。


 ツキヨミは作務衣に似た作業服のまま、結跏趺坐した。転移陣を設置して、心に脈動する地脈をイメージした。地脈とは何かを知りたかった。心と体がイメージのまま、地中に潜って行く。地中に光る川があった。力強く脈動している。近くには人型の生き物が、飛びまわっている。ひとりがツキヨミに近づいてくる。可愛らしい女の子だ。「あなたは誰」ツキヨミは女の子に、優しく質問する。「フェイーノ、あなたは誰」「私はツキヨミ、地脈について知りたくて、ここまで来たの」フェイーノは、ツキヨミに興味を持って、案内役を買って出る。「ここは、精霊と契約した人しか、入れないの、ツキヨミ様は契約しているの」「私はまだ、誰とも契約していません。此処に来るまで、あなた方の事を知りませんでしたから」「私と友達になってくれたら、契約してあげる」フェイーノは恥ずかしそうに、ツキヨミに提案します。ツキヨミとフェイーノは契約しました。「フェイーノ、此処の水、飲んでもいいかしら?」「うん、いいよ」ツキヨミは両手を器にして、水を汲み口に運びます。「おいしい」ツキヨミは素直な感想をくちにします。「フェイーノあなたに会いたっかたら、どうすればいい?」「名前を読んでください、どこにいても、会いに行けます。地脈が途切れない限り」ツキヨミはさようならをします。先生が呼んでいます。


 ツキヨミは錬金術について考えていました。ツキヨミの知る錬金術は、卑金属から貴金属を精錬する技、様々か物質から、別の物質を作る技、生命まで作る技ですが、ポーションも錬金術なのでしょうか。


 フェイーノは最近、ちょくちょく先生の工房に、遊びにきます。先生もフェイーノが気に入って、離しません。夕食に招待して、そのまま一泊です。ベッドで3人で寝ます。いつの間にか、工房は妖精たちの、たまり場になっていました。


 相変わらず、貧乏でしたが、先生とツキヨミは研究に、余念がありません。妖精たちも、様々な素材を持ち込んで、先生の研究を助けます。


 お金に成りそうな、研究成果が出来ました。薬草ケーキです。元気のない妖精に少し食べてもらっただけで、元気になりました。


 土地だけは、広いので、店舗を瀟洒な食堂にかえました。パスタ、ピザ、ケーキ、スープ、薬草サラダ、ポーション入りぶどう酒、紅茶、みんな先生とツキヨミと妖精が、考え出した健康メニューです。ほかの店では、絶対味わえません、毎日ツキヨミが地脈の光る川に、水汲みに行きます。


 研究の日々、先生とツキヨミは充実しています。しかし研究に欲が出てきました。少し小銭が溜まったので、馬車と馬を買いました。本当はツキヨミが、亜空間収納庫から出した、オートマタ馬に馬車を買い足しただけです。これで素材探しに遠出できます。妖精達が馬車に改良を加えます。自分達も、一緒に行きたいのです。


 最初は時速15kmぐらいのスピードで、郊外では40kmぐらいのスピードで走ります。馬は不自然にならない程度に、反重力魔法で馬と馬車を浮かせます。もちろん足元は光学迷彩で細工して、誰の目にも普通に走っているように、見えます。馬車にはトイレも付いています。


 先生は大喜びです。早速希少な薬草を採取します。妖精も手伝います。お昼の時間です。大勢で食べる食事は、楽しいものです。最近は妖精も、先生のお宅に頻繁に泊まって行くので、食べ物の好みも把握しています。


 ツキヨミは馬車に設置した、転移魔法陣から、地脈の光る川に転移して、川の水をバケツで運びます。反重力魔法を使うので、そんなに重くありません。


 妖精たちが、先生の料理を手伝います。ワイワイガヤガヤで楽しい食事です。先生は、この日常がずーと続けばいいのにと、思っています。


 遠出したため、貴重な材料が手に入り、先生は中級ポーションの作製に成功しました。街の中で、先生の評価は高くなりました。これで生活に追われる事無く、研究三昧の生活が出来ます。


 ツキヨミは錬金術で、ポーション以外の使い方を考えます。鉱石素材から魔道具を作ったり、武器を作ったり、魔術的効果を持ったアクセサリーの作製、基本的には練成魔方陣の力を借りるといいます。魔法と何が違うのか、わかりません。


 ツキヨミは街を散歩します。普通は先生がついてきます。一人だと寂しいのです。最近は、妖精が先生に取り付いています。先生の研究を、すぐ傍で評論します。ここを直せばいいのに、あそこで失敗したんだ、とかなんとか。でも先生は楽しそうです。いままで誰も見てくれなかったのです。


 この世界の魔法師を声も懸けずに、一瞬見つめます。幻影魔法です。魔法師は心の中で、ふっと思いついた疑問を、何時間も考えます。ツキヨミが抱いている疑問をです。練成魔方陣を使う錬金術が、なぜ魔法では無いのか。。薬であるポーションを作るのが、錬金術なら、なぜ武器である聖剣造りも、錬金術なのか。


 散歩は終わりです。ツキヨミは妖精達と、お昼寝の時間です。先生も真ん中で、寝ています。


 上級ポーションは、うまくいきません。妖精たちも、なぜ上級ポーションが巧くいかないのか、共同研究者として、かしましいです。


 健康促進料理は、非常に評判がよいです。喫茶店向きの瀟洒な建物で、味わう滋養豊かな料理は、庶民価格です。ポーションの余りを食材にいれてます。癌末期の年寄りが、毎日通ったら、癌が無くなったとか、認知が直ったとか、毎日、街の新聞に、体験談が載ります。


 いま、地脈の光る川の近くでは、意地でも先生の研究を完成させようと、妖精たちが頑張っています。ツキヨミも先生との研究が面白くって、のめり込んでいきます。


 こんどは、ダンジョンの中の素材探しです。浅い階層なので、ツキヨミと先生と馬だけです。開発されすぎた場所なので、魔物も出ません。ときたま下に行く冒険者と会うだけです。苔類が採取の対象です。ツキヨミと先生が移植ごてで採取します。3階でやっと、魔物に会えました。幻影魔法で逃げて行きました。3階のコケ類の採取も終わり、地上にもどります。妖精達が怖いもの見たさで、固まっています。


 研究所で何十種類もある、苔のエキスを分析します。妖精達も、ツキヨミが汲んできた地脈の光る水を使って、上級ポーションに、挑んでいます。あと僅かです。完成です。みんな先生に、盛大な拍手をします。


 


 


 




 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ