第27話 人造無双
オレの左手には龍を形取った痣がある。
あれはオレが厨……中二の時に交通事故に遭い生死の境を彷徨った(気になっている)時に異世界へと辿り着いた事がある。だがバキュームっぽい車に跳ねられたオレの全身には致命傷とも言える打撲があり、瀕死の状態で異世界の街道で倒れていた。
せっかく異世界へとやって来たのに何故か既に生命の炎が消えようとしていたオレの目の前に白いローブを纏った龍神様みたいな美女(?)が現れて一言こう呟いた。「これでは使い物にならないからリテイクだね」と。あの時に異世界への転生を垣間見たオレは何時向うの世界へ再召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、前回の検証では異世界初となる生体コンピューターの開発を志したのだが、その結末は惨敗とでも言うべき結果となってしまった。それはオレが人工生命体を創る為の知識が不十分だったからに他ならない。やはり生命の育成段階において「面倒だから」とメイド服の素材まで一緒に混ぜてしまったのが原因だろう。
あれがもし成功していたら身体のどの部分を斬ってもメイド服という、ある意味金太郎飴的な世紀の発明に繋がったかと考えれば返す返すも惜しい事をした。
おっと、このままではまた話がそれてしまうから人工生命体へ戻るとしようか。
ホムンクルスが最初に造られたのは中世ルネッサンスの頃のお医者様だったらしいと記録にはある。このパラなんちゃら氏が医業をそっちのけで研究していたらしいんだけど、その元となる素材には人間の精子を使ったとされる。
しかしここで”持ってる”オレはある違和感に気付く。
――その精子は誰のだ?
しかも中世のヨーロッパだからアダルドビデオなどと云った最新の文明兵器はまだ発明されていない。もしこれが本当にパラなんちゃらさん本人のモノだとしたら、その採取過程において必要となる”オッキ状態”はどのようにして創出されたのか? その疑問は尽きない。
考えてもみてくれ。そのパラなんちゃらさん(――もうパラさんでいいか)がオッキ状態を作り出す為には左右どちらかの腕というか手が必要で、残った方の手にはティッシュ(があったかどうかまでは判らないが……)か何かを握り締めているはずなんだ。
そこで問題となるのがオッキ状態から発射されたアレをどの様な手段を用いて三角フラスコなる容器まで移すかという事になる。だがここで漢の生理現象について理解の足らない腐女子諸君ならば迷わずフラスコの口をアレに当てておけと宣うだろうが、それこそ人類が長年に渡って男女の相互不理解により関係悪化に悩んで来た歴史と同じ道を辿る事になる事に気が付いて欲しい。
――何故かって?
そんな事も判らないのか……。考えても見てくれ、この際その最中に誰をオカズにしていたとしてもそれが今回の検証結果に影響を与える事は無いから割愛させて貰うが、これから発射へと至る究極のプロセスの最中において、もしアレの先に透明ガラスで出来た三角フラスコが押し当てられていたとしたら世の男性諸君はそのミッションを最後までコンプリートさせる事が可能だろうか? ――答えは”否”である。
――漢とは繊細な生き物なのだ。
しかしパラちゃんの後にもこの種の研究は続けられていた様だが結局は誰も成功させる事が無かったと多くの記録にはそう書かれているが、またしてもオレの上品で明晰な頭脳はそこからある種の違和感を感じ取った。
――もし自分が成功していたら、それを公開するだろうか?
もしこの手の実験に成功してもそれを名声と引き換える事が容易に出来る程度の研究者風情が、本当に究極とも言うべき生命の秘術をその手に収める事が可能だろうか?
もしオレが考える最強のメイド生命の作成に成功したとしたら他人にそれを教えるだろうか? もし生まれてきたメイド生命体を合成物だと公開してしまったら彼女のその後の人生はどうなるだろうか? それは彼女の幸せへと繋がるステップとなりうるだろうか?
次から次へと疑問が湧き起こるが結果として生まれてきた彼女の経歴については隠しておいた方がお互いの幸せになると判断出来る。だってそうだろ? やっと生まれてきた理想の彼女に自身を生み出す為とは言え、三角フラスコを片手に持った自分の状況を説明したいなんて普通なら誰も思わないからな。
だから過去にもし成功した研究者が居たとしても、それが歴史の記録として後世に残される事は無かったのだと推測する。もしかすると本当に成功して自分を生み出したマスターと一緒にその後の人生を幸せに生きたホムンクルスが居ないと100パーセント断言出来るか?
こうしてオレは異世界で知り合った女子たちの細胞からDNAを抽出し生命誕生の瞬間にまで漕ぎ着る事に成功する。前回の失敗を教訓として今度の生成では変な生物の素材は一切使っておらず、人が持つ天然素材100%のみで完成させた彼女なのだが……ある特定の宗派の者たちからは女神の降臨かと囁かれる程の大成功となる。
『よくぞここまで……ん? 誰だ、そのちいっこい生き物は?』
「魔王よ、彼女に”ちっこい”とか”幼女みたい”とかいったワードを使うのはよしてくれないか。これでも本人はいたく気にしているようなのでな……」
『勇者よ、このちっ――タイニーな彼女がお主の理想だという訳ではないよな?』
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「やっと勇者の理想の彼女さんが登場したみたいですね?」
( ゜Д゜)「幼女とメイドの悪魔合体とは、まさかの展開だがや……」
これまでの戦績
1勝17敗(不戦敗13・完封負け3)
1引き分け・無効試合7




