第10話 双剣無双
「良い子のみんなへ」
世の中にはイロイロな二刀流がありますので、決してお父さんやお母さんにはくわしく聞かないでください――以上、先生からのお願いにゃ。
オレの左手には聖龍の刻印(のようなただの痣)がある。
それは何も知らない第三者が見たとしても龍の形に気づく事が無いように巧妙に隠されている。(第8・9話参照の事)何故なら左手を握り絞めて特定の姿勢と角度からでなければ聖なる龍の姿が現れないようになっているからだ。これはオレに敵対する邪悪なる者たちの目からオレを護るために施された封印だ。
これはオレが厨……中二の時に交通事故に遭った時に出来た傷痕で、あの時に異世界への転生を垣間見た(ような気がしている)オレは何時向うの世界へ召喚されても困らないようにと、こちらの世界の知識を学び続ける宿命を負っている。
さて、前回までの調査によって火薬や鉄砲の運用をムリなく行うには多大なる労力が伴う事が判明した。実際の火薬は湿気易く使用するより戦場まで運び届ける間にも品質管理が必要でハッキリ言うとジャマくさい。
――考えても見てくれ。
魔王と対峙するよりも火薬を包んだ油紙が濡れないように細心の注意が必要で途中の戦闘において水系魔法の使用が制限されてしまうのだ。水どころか火魔法を使う場合にも引火爆発が心配で心配だし、風魔法で包み紙が飛散したらもうやってられない。
とにかく火薬を持っているだけで魔法戦がメチャメチャ不利になる。敵さんはアホみたいに魔法をバカスカ撃って来るのに対してこちらは大地属性くらいしか使える魔法が無い。そのストレスによってオレのハーレムパーティ女子たちのイライラがマックスとなる中でオレは戦い続ける事になる。前門には凶悪な敵の魔法部隊が居て、そして後門には不機嫌な女子たちがズラリと居並ぶ。きっと魔王の間へ辿り着く前にオレの精神が擦り切れてしまい悲鳴を上げる事になる。
……という訳でやっぱり鉄砲では無く剣の道を志そうと思う。
だがここで諸君らには言っておきたい事がある。
これは後退では無い。
異世界の真の平和と勝利の為に、ここは敢えて己の信念を曲げてでもより確実な手段と戦略をもって事に当たろうと考えた末の転進である。断じて後退では無い――大事な事だから念を押しておく。……決してそうでは無いのだ。
しかし剣や刀が廃れてしまったこちらの世界とは違って異世界ではドワーフなどの優秀な鍛冶師がいっぱい居るとハスだよな。――となればこちらから持っていくべきものは製造技術では無くて、こちらの世界でこれまでウン千年に渡って磨き抜かれた剣術ではないだろうか?
こう見えてもオレとて剣道部員のハシクレ。
し・か・も、剣道3級の腕前だ。
異世界の身体強化魔法があれば21世紀生まれの上品な腕力しか持たないオレでも二刀流の夢が叶う。(と思う)古くは巌流島の宮本某にはじまり、最近では”剣芸術常時接続”と言う名の戦記に登場する黒い剣士のように華麗に舞うのだ。
だが、まてよ? そうなると左手でも右手と同じように扱えるようになる必要があるな。訓練方法としてすぐに思い付くのは左手で箸を持つとか、あとは左手で文字を書くと言うのもありかも知れない――やはり今日のオレも冴えてる、思い立ったらすぐに実行あるのみだ。
何を隠そうこのオレは書道なら初段の腕を持っている。
最初に利き手である右手で書いた作品を手本として全く同じ文字を左手で書いて行く。何枚も何枚も決して途中で諦める事無く延々と書く。例え今は辛くともこの訓練の先に待つ夢の二刀流生活を思い浮かべてただひたすらに書く。
『よくぞここまで辿り着いたな勇者よ!ん、今日は一人か?』
「魔王!これを見てくれ!オレはついにやったぞ!ついに左手でも右手と同じくらい上手に書けるようになったんだ。」
『うむ、さすがは勇者だ、確かに綺麗に書けておる。――書けてはいるのだが何も”生理休暇”などと楷書で書く必要は無いと予は思うのだが……』
……オレの苦悩は続く。
(;´・ω・)「剣道3級って結構ビミョーじゃないですか?」
( ゜Д゜)「女子たちが居ないうちに魔王とゲフンゲフン……これもある意味両刀使いという事だがや」
これまでの戦績
1勝8敗(不戦敗8)1引き分け←NEW!




