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親より先に死んだ俺【改稿版】  作者: 田舎浪漫


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第52話「する必要ある?」



『コーセー、どういうことかしら? あなた、まさか単騎で王城に突っ込んだの?』


 グループ通話越しでも分かる、エマの低い声。俺が無謀な特攻を仕掛けたと勘違いしている彼女は、少しイラ立った様子で問い詰めてくる。だが、俺はどこ吹く風で、ありのままを答えた。


『いや……散歩してたら捕まえた』


 直後、通信の向こう側で長い沈黙が流れた。


 あ、今の言い方は「なめてんのか」と思われるな。俺は慌てて、もっともらしい言葉を付け加える。


『……あー、つまりだ。天が俺に味方したんだ』


 さらなる、果てしない沈黙。


 そして十分後――俺は今、村の広場で絶賛正座中である。


「……まあ、だいたい理解できたわ。そこに転がっている『中身を剥がされた王』と『眠っている不審な小男』を見れば、あなたの言い分が真実だってことはね。居たのを捕まえたのは、当然の行為よ」


 怒れるエマを筆頭に、武装したメンバー全員が飛んできた。


 全員が歴史的な開戦に向けてフル装備だったため、聖剣を腰に差したヤスオや、レールガンの上に座った信長、ドラゴンの姿のまま着地したレンレンの孫たちに囲まれるという、地獄のような圧がすごい。


 レンレンに至っては、怒りで暴れそうになったところを、マミ特製の眠り薬で強制的に眠らされている。


「でもね、コーセー。報連相は正確にしなさい。あなた、いい大人よね?」


 エマが少し……いや、かなり怒っている。このままだと、説教が朝までコースだ。正座のせいで足の感覚がなくなってきた俺は、一か八か、空気を変えるために渾身のセリフを放った。


「……そんなに怒るなよ。でも、怒ってるエマも、可愛いな」


 ゴンッ!!


「今言うことじゃないわ」


《ピコーン! 同意します。今言う事じゃありません。△1ポイント》


《ピコーン! オシリア様程ではありませんが、そのゲンコツは魂への影響が大きいのです。△10ポイント》


 視界が火花を散らす。久々のエマのゲンコツ……魂への影響って?


 俺の意識は、呆気なく手放された。


--------------------------------


 翌朝。目が覚めると、俺はなぜか眩い光の中にいた。


「……ん? ここは……」


 そこは、村の集会所を改造したらしい、記者会見場だった。


 正面には大量のマナカメラが並び、世界中にライブ配信されているみたいだ。会場にはモニターも多数設置されていて、視聴者のコメントも確認できた。


 俺の隣には、強制解除薬のおかげですっかり毒気の抜けた、なんちゃら王も座っている。


「えー、あ、その……。余が、不甲斐ないばかりに、え〜……悪しき精霊に唆され、このような……」


 王が、震える声で謝罪の言葉を述べている。どうやら、憑依されていた期間の記憶はあるらしく、自分がしでかした悪事の重さに、絶望しているようだ。


 すると、最前列に陣取っていた記者の男が、俺に向かってマイクを向けた。


「……えー、コーセーさん。世界が固唾を呑んで見守っていたこの一週間、一体何をされていたんですか?」


 鋭い目つきの記者が、マイクを突きつけてくる。


 ライトが眩しい。隣でガタガタ震えながら「申し訳ない、全ては余の不徳の致すところで……」と呟き続けている王を余所に、質問の矛先は、完全に俺へと絞られていた。


「何って……準備とか、色々と……」


「準備、ですか。革命軍を組織し、トール君を旗頭に立てて国民の不安を煽り、聖剣を大量生産して、一触即発の空気を作った……。それだけの力がありながら、散歩中に偶然捕まえましたで、済ませるおつもりですか?」


「いや、事実だし……」


「最初からその力を使えば、戦争の恐怖に怯える国民も、家を捨てて避難した避難民も、出なかったはずです! なぜ、もっと早く動かなかった!? 本当は戦争を煽って、自分の実力を世界に誇示したかっただけではないのですか!?」


「えぇ……!?」


 記者の怒号に近い追及に、会場がザワつく。


 ライブ配信のコメント欄も、猛烈な勢いで流れていく。


『散歩で捕まるラスボスウケる』


『俺たちの不安を返せよ!』


『魔王の自作自演じゃねーの?』


『トール君を利用して人気取りかよ、汚いぞ魔王!』


「……まあ、そういうこともあるよね? 多分」


「ではお聞きしますが! フェイタル・ガーデンのメンバー全員が、世界に魔王と認定されている。さらに、天空国家スカイのドラゴン部隊、海底国家ショーナンの戦闘部隊、エルフの未知の武器を持った軍、ハニー村の革命軍は全員が聖剣持ち。あれだけの過剰な軍事力を見せつけておきながら、『ごめん、歩いてたら解決したわ』で、納得する人間がどこにいると思っているんですか!?」


 記者が、さらに身を乗り出す。


「これは、もはや悪質なドッキリと言わざるを得ない! あなたが英雄気取りで散歩をしている間、どれだけの人が死を覚悟したと思っているんですか!」


 あー、だんだん面倒くさくなってきた。


「……争いは何もうまないし、国が変わるきっかけになったなら、良くない?」


「なっ、ぎゃ、逆ギレですか!?」


 記者が、顔を真っ赤にして言ってくる。


「過程はどうあれ、これで国は変わるだろ? そもそも、俺たちが動くまで、国や王に疑問を感じた奴はいないのか? 貴族にしろ、あんたたちにしろ。今まで、見て見ぬ振りをしてたんじゃないのか?」


「そ、そうだ……! 悪いのは、余に憑依した精霊だ! このコーセー殿は、余を救ってくれた恩人で……」


「陛下、あなたは黙っていてください! 今は、魔王の不誠実さを追及しているんです!」


 記者が、なんちゃら王を秒で黙らせ、再び俺に質問を重ねる。


「では、コーセーさん。あなたは、国民や革命軍の皆さんに、謝罪はしないということですね?」


「しないよ? する必要ある? 感謝してくれとは言わないさ。仲間のために動いただけだから。でも、謝る理由がない。……ところで、あんた、どこの記者の人?」


「私は、フェニキア新聞です。それが何か?」


 あー、そういう事ね。


 俺は、壁際にいるフェイタル・ガーデンのメンバーに声をかけた。


「なあ、キアラ、ノッテ。勇者召喚や違法奴隷に、聖教国と聖女が関わってる証拠を、全世界に配信してくれ。今すぐだ」


「なっ、どういうことですか!? そんなデタラメな情報を流すなんて、ありえませんよ!!」


 記者は、今日一番、顔が真っ赤になった。まあ、記者というより、工作員だろうけど。


「マリン、この記者を拘束してくれ。エマ、勇者は今どうしてる?」


 俺の発言に、マリンがすぐさま記者を拘束し、エマが眷属の蜂を確認する。


「コーセー、ごめんなさい。勇者を見張らせていた眷属の連絡が、途絶えたわ」


 あー、遅かったか。


 ヤスオが言っていた。召喚された勇者の半分は、聖教国に引き渡される予定だと。……まさか、もう動いたのか。


 考えても仕方ない。今は後始末をしないとな。記者がうるせーし。


 そう考えていると、アグロTVの腕章を着けた記者が、話しかけてきた。


「あのー、すいません。展開について行けないのですが、どういうことでしょうか?」


「うん? あー、今回の件は、聖教国も少なからず関わっているんだよ。まあ、認めないだろうけど。詳細は、動画で流すよ」


 アグロTVの記者にはそう答え、トールを呼んだ。


「まあ、過程は想定外だったけど、今回の革命の終着点は決めてあったんだ。トール!」


 トールは、俺の横に走ってくると、マイクを握って話し出した。


「あー、僕達、革命軍は、様々な可能性を考えていたんですが、王が誰かに操られていた場合の終着点は……」


 皆が、固唾を飲んでトールを見守る。


 そして、


「この国を、立憲君主制の民主国家に変更します!!」


 トールがドヤ顔で宣言し、俺も、ビシッと決まったなと思った。だが、記者たちは首をかしげ、コメントには、『なにそれ?』『パンにつけるとうまいやつだ』とか、皆ピンと来ていない。トールも、慌てて補足する。


「立憲君主制の民主国家についての説明も、今日中にマナネットにアップします」


 何か、締まらない記者会見だな。


 だから俺は、カメラ目線で言ってやった。


「あー、皆さん、最後にひと言。我々フェイタル・ガーデンは、フェニキア聖教国に宣戦布告しまーす!」


《ピコーン! ドウミョが戦争を止めろと言ったのに、新しい戦争を始めるのですか? ある意味、私たち密告課にも喧嘩を売ってます? △80,000ポイント》


 ………。


 それにしても、分かってきた。善行がドウミョさんで、悪行がドウジョさん担当だ。


《ピコーン! 正解です》


 ドウジョさん。いつもすいません。もう少しやらかします。



徳ポイント:△370,690ポイント

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