↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親より先に死んだ俺【改稿版】  作者: 田舎浪漫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/55

第50話「特に無いがな。」

 国盗りを宣言した俺たちは、即座に行動を開始した。


 イーサの街にある屋敷を捨て、俺たちが向かったのは、ヤスオの領地内にあるハニー村だ。


 ヤスオが私財を投じて整備してきたこの村は、今や、王国に絶望した者たちの希望の砦となっていた。


「おかえりなさい、師匠! それに……コーセー様たちも!」


 村の入り口で俺たちを迎えたのは、かつて奴隷商から救い出した、マミの兄のトールだった。以前より逞しくなった体つきと、その澄んだ瞳。彼は今、この村の若者たちのリーダー格になっている。


「トール、急で悪いが、ここが戦場になるかも知れん。……王国軍が攻めて来てもいいように、防衛態勢を整えてくれ」


 ヤスオの言葉に、トールの表情が引き締まった。


「……分かっています。王国の連中が、僕たちを勇者召喚の生贄にしようとしていたことも、助からなかった命があることも、エマ様の蜂さんから聞きました」


 王国は、勇者召喚を成功させた。それは、救えなかった命があった、ということだ。


「……戦わせてください。僕たちはもう、ただ震えて待つだけの奴隷じゃない」


 トールの言葉に、周囲の村人たちも力強く頷く。


「よし。だが、俺たちは魔王らしい。俺たちが直接軍を率いると、ただの侵略戦争になってしまう。俺たちが勝っても、この国に住む人たちは幸せになれない」


 俺は、真っ直ぐトールを見た。


「トール。お前が、革命の旗頭になれ」


「え……僕が、ですか?」


 俺は、トールの肩に手を置いた。


「俺たちがサポートする。お前は、この腐った王国を内側から作り直す、正義の象徴になるんだ」


「はっ、はい!」


--------------------------------


 村の集会所で、トールを革命の旗頭に据えた作戦会議が始まった。ギルド支部長をしていたユータが司会進行を買って出て、それぞれの役割を確認していく。


「マミさんは、薬の完成を急いでください。あの勇者たちの力は、フェイタル・ガーデンのメンバーには大した事ありませんが、この村をはじめ、無関係の国民に牙を剥く可能性があります。力を奪うのが得策です」


「りょーかーい! ロザリーっちに、手伝ってもらうねー! ちょっと、あーし時空間通話してくるから、会議すすめといて〜。ここ電波悪いんだよねー」


 そう言って、マミは村で一番高い櫓に向かっていった。


 え? ダークフォンも、電波的なやつなの? キアラとノッテに聞けば一発なんだろうが、聞くと長くなりそうなので、やめておいた。


「キアラさん、ノッテさん。あなた達が、光マナネット商会とダークフォン商会の会長ですよね? 王国関係者の通信を遮断することはできますか?」


「「余裕よ」」


 キアラとノッテが、不敵に笑う。


「頼もしいですね。あとは、革命が正当なものである事を証明するために、これまで集めた証拠を含めて、王国民と世界に向けて、動画配信してください。ただし、聖教国関連は、まだダメです」


「「分かったわ。戦闘もライブ配信するわ」」


 王国の中枢は情報が遮断され、世界には一方的に、相手を非難する情報を流す……もう、サイバーテロやん。


 うーん。異世界の戦いって、こんな感じだっけ?


「次に、レンレンさん。天空国家スカイに、もう一度行っていただけますか?」


「あらん? どうしてかしらん? ダレルには、この前会ったばかりよん?」


「なあ、協力が欲しいなら、五大国家に頼めばいいんじゃないのか?」


 俺が尋ねると、答えたのはヤスオだった。


「無理だな。五大国家は、人間主体の国ばかりだ。アグロニアが声をかけりゃ、向こうにつく」


「ええ。こちらが幾ら道理を説いたところで、人間主体の国家の協力は期待できません。逆に、アグロニアは協力を取り付けられるでしょう」


 ユータが頷く。


「だから、彼らが見下している亜人種が、手を組んでいる事実を見せつけるのね」


 エマが、先を引き取った。


「その通りです」


 ユータが続ける。


「天空国家スカイの竜人種をはじめ、亜人種が協力関係にあり、敵対することが無謀だと、知らしめなければなりません。ですから、スカイの協力を取り付けてください。帰りは、少しでも援軍を率いて戻ってきてほしいんです」


「分かったわぁん」


「私も、天空国家に行くわ」


「駄目です。マリンさんは、海底国家ショーナンです。やることは、レンレンさんと同じです」


 ユータはそう言うと、ポケットから一枚の写真を取り出した。


「ああ、拒否はダメですよ? これは、マミさんから頂いた、人魚姿のあなたの写真です。世界中にバラ撒きますよ?」


「くっ、卑怯よ。そんなの、断れないじゃない」


 流石、元ギルド支部長。人の扱いがうまいわあ。


《ピコーン! 乙女の秘密を脅しのネタにするなんて……クズです。△10,000ポイント》


「ユータ、良くないぞ! そういうのは! 普通にお願いしないとダメだ」


《ピコーン! 遅い! 人の扱いがうまいと、褒めましたよね? 窘めるべきです。△10,000ポイント》


 すんません。リーダー失格です。


「失礼しました。コーセーさんのおっしゃる通り、今のは私が悪かったです。マリンさん……レンレンさんの若かりし頃の写真を報酬に、行って頂けませんか」


「そういうことなら、仕方ないわね。私も吝かではないわ」


 ユータめ。最初から……何でもないです。


《ピコーン! セーフにしておきます》


「後は……できれば、クルスさんにも参加して頂きたいところですが……」


「あー、私がメッセージをアカリに送ったから、すぐ帰ってくるわ」


 天国にも電波が通じるのか。ダークフォン、恐るべし。


 それにしても、さすがエマ。有能だなあ。出会ったころのポンコツは、どこに行ったんだ?


「ユータ、俺はどうする?」


「ヤスオ、あなたは、協力を得られそうな冒険者を勧誘して来てください。リストを一応作ってありますので」


「ああ、それは良いんだが、ギルド支部長だったユータのほうが、スムーズに行くんじゃないか?」


 確かに、俺もそう思うわ。


「そうしたいんですが、私は、ギルドを追われた身です。表立って動くと、王国に気づかれやすいんですよ。それに、これから聖武具の大量生産に入りたいんです。革命軍全員が聖武具を持っていたら、面白くないですか? ただ、一人では、さすがに厳しいので、ドワーフの国に応援を頼んでいますがね」


 うわぁ。全員が聖剣持ちとか、卑怯だろうなあ。


《ピコーン! 卑怯なことをするのですか?》


 しません! えっ、今日、判定さん厳しくないですか?


《ピコーン! 今日はドウミョが休みで話し相手がいなくて、じっくり見て粗探しをしているとかではありません》


 あっ、はい。変なことを聞いてすいませんでした。


「エマさんは、蜂を使った情報収集をお願いします」


「分かったわ」


 後は、俺か。


「俺は、何をすればいい?」


「はい? ………あ、コーセーさんは、何かあれです。はい。あー、トールさんのサポートをお願いします」


 ユータが、今考えたであろう役割を、俺に告げる。


 うん。俺のこと、絶対に忘れてたな。ユータ、俺泣くぞ!?


「時間の猶予は、二週間くらいでしょう。それまで各々行動をお願いします」


 ヤスオが、トールに、大将らしくビシッと締めろと促している。


「――全員、準備にかかれ! 俺たちが、この国の闇を終わらせるんだ!」


 村人たちの咆哮が響いた。


 ただの小蝿だと思って舐めているアグロニアの王、そして、裏で糸を引く卑屈の精霊グラウ。


 ……お前たちが作った魔王という虚像が、本物に変貌する瞬間を、特等席で見せてやるよ。


《ピコーン! 汚名返上ではなく、本物の魔王になるという決意表明ですか?この場合、天国省の魔王対策課へも通報を行います。神々に魔王と認定されますと…》


 ごめんなさい。言葉の綾です。他意はありません。


 とにかく、俺たちは動き出した。


 まあ、俺がする事は特に無いがな。



徳ポイント:△295,679ポイント

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。