第37話「悪い子だ。」
---キアラ視点---
お姉様が地獄に属する神だと分かったのは、つい最近のことだ。
それを知った妹のノッテは、飛び上がって喜んだ。闇の精霊の彼女は、地獄に属するお姉様と相性がいい。喜ぶのは当たり前だ。
私は光の精霊。相性がいいのは、天界に属する神。
お姉様と相性がいいと思っていたのは、私の勘違いだったらしい。
そもそも私は、光の精霊のくせに陰キャだ。闇の精霊のノッテは、あんなに明るくて、誰とでも笑って話せるのに。
何度、あの子に嫉妬しただろう。数えるのは、とっくにやめた。
精霊は、無からある日突然生まれる。親はいない。いるとしたら、それは生まれるきっかけになった概念や事象だけ。
私たちは、光と闇の双子として生まれた。光があるから闇があり、闇があるから光がある。二人は対の存在だ。
だからこそ、名前をくれた神は、私たちにとって親になる。
名付けは、精霊にとって何より重い。眷属として、生涯の忠誠を誓うということだから。
お姉様は悪くない。それは分かっている。私が勝手に裏切られた気になって、勝手に傷ついているだけ。
本当は大好きなのに……
分かっているのに、心が追いつかない。気づけば、お姉様を避けている。
その横で、ノッテは今日もべったりくっついている。
羨ましい。そう思ってしまう自分が、本当に嫌になる。
さるゆきに憑依しようと言い出したのも、私だった。光の精霊のくせに引っ込み思案で、素の姿では人前に出られないから。ノッテは、そんな私に合わせてくれただけ。
優しい子だ。その優しさに甘えて、また嫉妬する。最低だと思う。
私は、偽りだらけだ。
偽りの姿を借りて、偽りの自分を演じている。本当の私は、暗くて、嫉妬深くて、勝手に拗ねている。
お姉様は、名前をくれた人。私にとっての、たった一人の親。
その親に、偽りの姿を見せ続けている。
お姉様…名付けとはいえ、親に偽りの姿を見せる私は、悪い子だ。
名前をつけなければよかったと、思われるだろうか。
死んだら、私はお姉様に裁かれるのかな。それならせめて、最後くらいは、本当の私を見せたい。
暗くて、嫉妬深くて、どうしようもない、ありのままの私を。
それでも、お姉様は、私を見てくれるだろうか。
お姉様たちは、時空を渡ってロザリーたちを追いかけていった。
私は、用があると嘘をついて、ここに残った。
お姉様に、嘘をついた。
また一つ、悪い子になった。
時空を超えていくのだから、きっとすぐに戻ってくる。それこそ、今すぐにでも。
今の私はグチャグチャだ。
心の準備なんて、できてなんかいない。
私は、どんな顔をしてお姉様に会えばいいの?




