経過録最終日
それから、ぼくは家族といっしょに住んだ。お父さんのマシュー、お母さんのローズ、妹のノーマ……そして、大切なアルとキニアン。
お父さんはとても力もちで、どんなに重たいものも持ち上げちゃうんだ。いつもモジャモジャのヒゲを上げて、にっこり笑っていた。お父さんの口グセは、"お前はじまんのむすこだ"って。よく分からなかったけど、その口グセを言っている時のお父さんはいつもうれしそうにぼくの頭をなでてくれた。
お母さんは体が弱いけど、ぼくにやさしかった。ぼくがケガをしたらすぐにばんそうこうをはってくれたんだ。病気にかかっているみたいだから、今度はぼくがお母さんを助けるんだ。
ノーマはぼくより年下だけど、とてもしっかりしていた。仕事でどんなにつかれていても、ぼくを見ると笑ってくれた。最近、ノーマの顔色が良くなった気もする。怖かった顔も、よく笑うようになった。ぼくはノーマの明るい笑顔が好きだ。
キニアンはいつもぼくの側にいてくれる。たまに遠くを見てさみしい顔もするけど、ぼくを見るとすぐに笑顔になってくれた。キニアンはたまにピーナッツ味のアイスクリームを買って来てくれる。ぼくが好きだったものらしい。ぼくはキニアンといっしょにアイスを食べる時間が幸せだった。
アルはすっかり元気になって、ぼくのベッドの上を走り回っていた。アルのお気に入りはチーズの形をしたまくらみたいだ。アルは、ねるときはいつも、ぼくのおなかの上でねていた。ぼくもあったかいアルの体をつつんでねていた。
キニアンは、ぼくとアルはこのままみんなのこともわすれちゃうって言ってた。ぼくもときどき、みんなの顔と声がどこかにいってしまうと感じる時がある。そんな感覚におそわれる度に、ぼくはみんなの名前をさけんだ。こうしていると、みんなの中にぼくがいるって感じられる。
そろそろ時間だ。アルといっしょに、朝ごはんを食べに行かないと。




