第五話
翌朝、経理部に顔を出した優子は、いつも通り仕事を始めた。
エルウィンが、なんとなく雰囲気が違う気がして、おずおずと聞いてくる。
「スズキさん……なんか、顔がほやほやしてません?」
「してません。この月次表の集計、間違ってるので直しておいてください」
「は、はい……あの、陛下が今日もいらっしゃいますが」
「存じてます。陛下、五分後に書類お渡しできます」
ヴィクトルに向かい、優子は書類を差し出した。
「お待たせしました、陛下。馬の飼料費の件、内訳を三パターンで出しました」
「ご苦労」
ヴィクトルは書類を受け取りながら、小声で言った。
「モモカが今朝、『よう!』と言った」
「聞きました。まだ一歳なんですけど」
「なかなかいい返事だった」
「教えないでください」
「余ではない、自然に」
二人はそれ以上何も言わず、仕事に戻った。
エルウィンたちは、なんとなく察して、他の人間も全員うつむいて書類を見る。
午後五時、優子は机を片付けた。
「お疲れ様でした。明日の朝、続きをやります」
「ああ」
「陛下もお疲れ様でした」
立ち上がり振り返ると、ちょっとだけ、柔らかい声で言った。
ヴィクトルは書類から目を上げて、同じように柔らかく頷いた。
桃花が待っている部屋へ、優子は帰っていく。
今日も定時で。
でも昨日より、少しだけ足取りが軽かった。
鈴木優子の次のタスクは「桃花の離乳食が食べられる食材を増やすこと」と「王国会計の複式簿記化」。
そして、新たに「ヴィクトル陛下との結婚式典」に関する試算表が追加された。
どれを先にやるかについては、現在検討中です。
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