将来のために①
マールの研究は、思ったよりも興味深い内容だった。
3、4日に1度ほど、マールの研究室へと訪れ、彼の論文発表に必要な研究の手伝いを進めていく。
マールの手伝いと、普段の授業、サークル活動や自分の勉強をしているだけで、あっという間に時間が過ぎていく。
新たな年になってもそのルーティンは変わらず、あっという間に学年末の試験の時期が近付いてきた。
さすがに試験期間が近付いてきてからは、マールも気を使ってくれたのか、手伝いの頻度はめっぽう減った。
ユイとしても勉強に集中できるのは助かるので、空いた時間は試験勉強に時間を使った。
そのおかげか、期間中の試験は、どれも手応えとしては満足のいくものであった。
試験期間最終日。
4コマ目に最後の試験を残すのみとなったユイは、食堂で甘いものを摂取しながら、最後の追い込みをしていた。と言っても、興味本位で受講した教科であり、探掘コースそのものの総合成績にはさして影響もないため、少しばかり気持ちに余裕がある。
最終日ともなると、上級生であれば、すでに試験が終わった者も出てくる。そのため、食堂内はほどよい喧騒に包まれていた。
「ユーイー……」
2コマ目の授業終了の鐘の音とともに、ユイの姿を見かけたハンナが弱々しい声でやって来た。
「おはよう、ハンナ。どうしたの、情けない声出して」
「あたしたち、5年だよねー? 何で下級生と同じくらい試験があるのよー……」
話を聞くに、どうやらハンナは今日1日、全ての時間に試験があるらしい。
確かに5年生ともなれば、ユイのように最終日は1、2教科くらい、もしくはすでに試験期間を終えているかだ。ハンナのように丸1日試験があるのは珍しいかもしれない。
「そもそも、鑑石コース自体が、試験教科多いんだよぉ……」
「それは……仕方ないんじゃない? 鑑石って言っても、その中でさらに細々とした役割があるのだし、専門を見つけるまでは全般的に学ぶのが常なのでしょう?」
「それはそうなんだけどー……」
分かっていても文句を言いたくなるらしい。
そんなハンナに対し、ユイは頑張れと言うしかない。
テーブルに突っ伏したままのハンナに代わり、栄養となりそうな食事でも持ってきてあげようと、ユイは席を離れていった。
ユイの持ってきた昼食を書き込むように食べ、食後に気付け薬を一気飲みしたハンナは、風のように次の試験へと向けて去って行った。
ユイ自身も昼食をとり、4コマ目の試験開始まで食堂で勉強をして過ごす。
昼以降は、知り合いに会うこともなかったため、落ち着いた時間を過ごせた。
──そして、4コマ目の授業終了の鐘が鳴る。
「終わった……」
これにて、試験は全て終了である。息をつくと同時に、ぽつりと言葉が漏れた。教室内は、これで試験が終わりの者たちの話し声で賑やかになってくる。
ユイはさっさと荷物をまとめて、教室を後にした。
試験結果は、だいたい全試験終了後の2、3日後には、全学生に知らせがもたらされる。
今回も例に漏れず、試験終了から2日後、ユイの手元に試験結果が届いた。
──まあ、想定の範囲内かな。
総合評価Aと記載された結果。
試験の結果は、相変わらず教科により得手不得手がはっきりしているが、それでも全体的に見て良い方だろう。探掘関連の教科の成績も、軒並みA〜B判定だ。
成績表を眺めながら、ふと、この後のことを考える。
試験が終わったので、ユイはこれから新学年が始まるまでは休暇となる。その間にやることはたくさんあるが、今日くらいはのんびりしても許されるだろう。
考えた結果、まずはいつも通り隠し部屋へと向かおうと決めた。
あてもなく進んでいた足を、学生棟へと方向転換し、ユイはのんびりと校舎内を歩いて行った。




