表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気化魔法で世海征服  作者: 大沢雅紀
33/37

準男爵

「他にもこのようなものがあります」

俺はまず砂糖をいれてないカカオスープを献上する。それを一口のんだ毒見役は、苦そうに顔をしかめた。

「これはカカオと申しまして、血圧をさげたり体の健康を増強する効果があります」

「……ですが、その、苦いので陛下がお召し上がりになるにはいささか……」

そう苦言を述べる毒見役を遮って、俺は今度は砂糖を入れたスープを献上する。それを飲んだ毒見役の表情は綻んだ。

「これなら、大丈夫かと」

「ふむ。なら飲んでみよう」

陛下が砂糖入りカカオスープを飲むと、気に入ったみたいで何度もお代わりをした。

さらにメイの提案によって生まれた、水分を飛ばしたカカオクリームも試食してもらう。

それを舐めた陛下は頬を緩ませた。

「ふむ。美味い」

「このカカオという種は、単品ではおいしくありません。しかし、わが国の砂糖を混ぜることで、絶品の飲み物やお菓子と生まれ変わることになるのです」

これを貴族階級や富裕階級に流行らせたら、もうかりそうだ。なんとしても陛下のお墨付きをもらわないと。

「見事じゃ。新たな交易相手を開拓した功績により、卿に準男爵の地位を授けよう。ガーナ国とやらの交易は、卿が取り仕切るがよい」

陛下はガーナ王国との貿易許可証を発行して、俺に下賜してくれる。これで交易ルートの独占という利権を手に入れることができたな。

俺は手に入れた利権を確固たるものにすべく、活動を始めるのだった。


カイロの商人ギルドを尋ねた俺は、新たな交易路を拓いたことを報告する。

「南の未開地……ですか?」

「ああ。そこで新たにできた「ガーナ」という国の取引だ。今のところ信用を得ているのは私だけだが、その国の女王陛下に紹介することはできる」

俺はカカオスープやカカオクリームを差し出しながら、その有用性をアピールした。

「交易に参加したいという商人を募りたいが、紹介してくれないか?」

そう頼み込むが、ギルドマスターは渋い顔をしていた。

「今まで未知の取引先を求めて南方に向かった船は数多くいました。しかし、その殆どは帰ってきていません。南方にいるのは会話もできない野蛮人ばかりだと聞きます」

ギルドマスターはカカオスープを飲みながら、複雑な顔をした。

「このスープが美味しいことは認めます。ですが、命の危険を犯してまで手に入れるべきものとは思えません。残念ですが、既存の大商会に話を持っていっても、船を出すのは断られると思います」

それを聞いて、俺は考え込む。冷静に考えたらギルドマスターの言っていることはもっともである。

まだカカオスープのことは広まってないし、ガーナにダイヤの原石がたくさんあるというのも確定した話ではない。今の段階では雲をつかむような話かもしれなかった。

「わかった。なら、南の交易路を拓くにはどうすればいいと思う」

俺の問いかけにギルドマスターは少し考えて答えた。

「まずカカオを流行らせることだと思います。こういった嗜好品は一度広まれば一気に需要が拡大します。そうするには……」

ギルドマスターはある提案をする。それは短期的に判断したら損することだったが、俺は必要なことと割り切って受け入れた。

「では、後のことはすべて私に回せてください」

そう告げるギルドマスターの顔は、これで儲けられるとホクホクしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ