ココアとショコラ
一週間後
「は、はずかしいよう」
ウェイトレスの格好をしたメイがモジモジしている。
「我慢してくれ。カカオをアピールする絶好の機会なんだから」
俺はそういってなだめる。ここはカイロの町の中央広場である。
商業ギルドの主宰で、新製品の博覧会が行われようとしていた。
「ボクはこの格好好きだけどね。動きやすくて」
ミニスカートをヒラヒラさせながら、アリルが喜んでいる。
「アリルちゃん。だめよ。たしなみを持たなきゃ」
そんな彼女をウードさんが優しく嗜めていた。
他のウンディーネ族もミニスカート姿で、道行く人にチラシを配っている。
「新しい飲み物だって?」
「ええ、南方からもたらされた美味しい飲み物ですよ。ぜひ試飲していってくださいね」
にっこり笑う美少女に釣られて、多くの人が集まってきた。
「皆様、ようこそおいでくださいました」
商業ギルドの人間がウェイターやウェイトレスの格好をして、集まってきた人たちにカカオスープやカカオクリームを無料で振舞う。
「これは何の飲み物なんだ?甘くて美味しい」
「この甘いお菓子は口の中でとろける!こんなの食べたことがない」
あっという間に評判が広まり、ちらほらと貴族階級の人間も見え始めた。
「紳士淑女の方々、この新しいお菓子は陛下も召し上がって折られます。南の地からもたらされた奇跡のお菓子です」
俺もウェイターをしながら、さりげなく陛下の名前を出してアピールする。
「へ、陛下もお召し上がりに?それではいただこうかしら」
「うむ。甘みの中にわずかに含まれる苦味が、野性味を引き立てて美味しい」
「言われてみれば、どこかに高貴さが感じられる」
一度口にした貴族たちは、勝手にカカオを褒め称えてくれた。
よし、これでイシリス国にカカオが広まるだろう。
「今回入荷したカカオは、お試しということで多くはありません。ですが、多少なら融通できますので、興味がある方は商業ギルドまでお問い合わせください」
評判がいいとみるや、ギルドマスターはちゃっかり商売をはじめていた。
「うちの商会に卸してくれ!」
会場の隅では、勝手にオークションが始まる始末である。俺たちがただで渡したカカオが高値で売られるのを見ていると少し腹正しいが、これも宣伝である。ここで商業ギルドに恩を売っておけば、今後は便宜をはかってくれるだろう。
それに、ここで大体の相場が決まったら、今後の商売の参考になるだろうし。
こうして試飲会は大盛況となり、カイロの町では新しく「ココア」という飲み物や「ショコラ」というお菓子が大流行になるのだった。




