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神位の書  作者: KATSUMI


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第二章 魔獣

歩き始めて半日が過ぎようとしている。

夜も数刻前に明け今は明るくなっている。

チラッと陽炎が隣で歩いている雫に目をやる。

(そろそろ休まないと限界だな…)


雫は一生懸命に陽炎に迷惑かけまいと歩いていた。

しかし、ほぼノンストップで歩き通しで疲労困憊していた。


「ん…」

陽炎は常人離れした目をもっており、遠くに見える建物を見つけた。


雫には距離がありすぎ建物とは認識できていない。

声を出した陽炎に向かって不思議な顔をする。


陽炎が笑顔で雫に言う。

「雫!集落がある。多分…村だな。あと少し頑張れ!」


陽炎が見ている方向に目をやる。

(………)

目を凝らして見ようとしても、見えない。

(えー本当に見えてるの!?)

心の中で思う。


その仕草を見た陽炎が笑う。

「生まれつき目はすごくいいんだ。さぁ!行こう」


その言葉に疲れていた雫の顔が生気に満ち明るくなる。

二人は駆け出していた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


西の大陸。

村の名はバルサ。

今陽炎と雫が向かっている村の名だ。

村人の人口は千人程度。主産業は農業と酪農。

裕福ではないが、慎ましい暮らしを望む者が集まってできた村落である。


「またか…」

一人の村人の目の前に、無惨な姿になった牛の頭だけが転がっている。首から下は何ものかに喰いちぎられた後が残っている。しかも不思議なことに一切の血痕がない。


(これで3頭目だぞ!…どうなってやがる。このままだと一家飢え死にしてしまう!)

男は怒りで握った拳が震えていた。


その後ろから駆け寄ってきた女がそっと男の肩に手を置く。

「…あなた、きっと大丈夫よ。村長が街からハンターを雇ってくれるって聞いたわよ」


「…そうだな」

妻が心配させてはいけないと、夫である男が微笑んで言う。

(俺の勘が当たるなら、普通の獣ではない。…ハンターレベルなら無理だろう…剣使いでなければ……)


「おーい!リュウにアキさんー」


男と妻が振り返ると向こうから、村長のゴルバンが早足でこちらにきている。ゴルバンの後ろに見たことのない女が一人。一緒に近づいてくる。


夫のリュウが妻のアキに言う。

「あの女性がハンターか!?」 


「そ、そうみたいね…弓矢を背負っているみたいだから」

アキは先程、夫に掛けた言葉を訂正したくなってしまった。


弓矢を背負っている女性は、二人の予想通りハンターの女である。

身体に沿った女性用の軽量である白銀の甲冑を着用しており、外見からもスタイルの良さがわかる。顔は甲冑と同じマスクをしており口元は分からないが、目はくっきりと大きくブルーの瞳をしている。髪は明るい茶色で、左右の一部分を三つ編みにし、後ろで一つに束ねているため肩よし少し下ぐらいの長さで、動くには邪魔にならないであろう。手足もスラっと長い。

雰囲気はあり、ハンターを名乗るだけあって堂々としている。


(…若く見えるな、見た目は24、5歳ぐらいだが、この雰囲気…30歳は超えているだろうな)

リュウが弓矢に目をやる。


(…業ものだな)

リュウは少し驚いた。

実は酪農家になる前は、武器屋で働いていたこともあり、それなりの目利きができる鑑定士でもあった。


「遅くなってすまんかった。また犠牲を増やしてしまったわい…」

村長のゴルバンが気の毒そうに小さく、リュウとアキに言葉をかける。


「いや、村長のせいではないんだ。その後ろにいるハンターさんを紹介してくれよ」


「そうじゃった!隣街バガンで腕利きのハンターで有名なノヴァさんじゃ」

ゴルバンは自信満々にハンターのノヴァを紹介する。


「私の名はノヴァ。よろしく」

言葉少なく挨拶をする。

挨拶をするや否やノヴァは牛の残骸を確認する。

(…これは普通の獣ではない。魔獣(デアブロ・ビースト)だな…)


「わかりますか?何の仕業か」

リュウがノヴァの表情の変化を見て問う。


「これは、おそらく獣は獣でも血痕が無いということは、血を好む獣、つまり魔獣だな。三百年は生きている大物だろう」


ノヴァの的確な判断能力にリュウが思う。

(村長が言うように、実力は本物だろう)


「倒せますか?」


「問題ない」

ノヴァが静かに言う。

しかしノヴァには一抹の不安があった。

通常魔獣は人の近くには現れない。何故なら、非常に能力が高く、魔獣の最上位の神獣化したものなら人語を理解し話せるものもいる。人を殺めると必ず集団で返り討ちに合うことを知っているからだ。そのため森の奥深くや深海、山岳など人と接することを避ける場所を棲家としており、滅多に魔獣に出会うことはないからだ。

(何か胸騒ぎがする…)


「よかったじゃない!あなた。これで安心できるわね」 

アキが喜ぶ。


「夜は魔獣が活性化する。今直ぐに準備し討伐に森に入る」

そう言うと、ノヴァは来た道を戻っていく。それを見た村長も追いかけるように去っていった。





去っていく後ろ姿のノヴァを見つめながらリュウは考える。

(…ノヴァ。思い出せないが聞いた事あるような…)










 

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