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神位の書  作者: KATSUMI


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第九章 楽園2 〜其の肆〜


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


アルケイデスを倒したのも束の間、ヘパイトスが奇声を上げ、白熱を纏った巨槌を振う。

【——コロナ・スマッシュ!!】


陽炎の瞳の輝きが増す。第六感を会得したことにより、狂戦士の力を更に引き出すことができるようになっていた。

「…遅い」


陽炎に攻撃を仕掛けたヘパイトス、それを見ていたメラムプース、ヤコブが驚愕する。

勿論、雫も何が起こったのかもわからなかった。


「——う、嘘…」


ドサッ


ヘパイトス、メラムプース、ヤコブの3人の商人が生き絶えて、その身が黒く濁った霧になり散っていった。



「…陽炎」

雫は何故か底知れぬ恐怖を感じる。

目にも止まらぬ、陽炎の圧倒的な力を目の当たりにしたからではない。

そして、狂戦士の力の暴走を恐れたのでもない。

この先、近い未来で陽炎との『別れ』を感じたのであった。


「さぁ、急ごう。ノヴァさんたちが危ない」

陽炎は雫の手を取り、高台下のノヴァたちの元へ急いだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



高台の下、三人の剣士の命運は風前の灯火だった。


「ハハハ! 最高のコレクションの完成だ!」

カーライルの歓喜の声と共に、数十の『機兵騎士』の槍が、膝をつく蒼波と動けない紫苑へ向けて一斉に突き出される。


死の風が首筋を撫でた、その瞬間。


――ドォォォォォォォンッ!!


高台の頂から、黄金の流星が叩きつけられた。


「……悪いな、待たせた」

爆煙の中から現れた陽炎の背中には、翡翠の輝きを纏った雫の姿。


陽炎が着地と同時に放った衝撃波だけで、迫りくる機兵騎士の先鋒は紙屑のように吹き飛んでいた。


「陽炎……! 雫も無事なのね!」

血を拭いながらノヴァが叫ぶ。


「ええ。……ここからは、私たちの番です」


「——『癒えよ(ヒール)』!」

雫が真言を紡ぐと、翡翠の風がノヴァ、蒼波、紫苑の三人を包み込む。肉体の疲労と傷が急速に塞がり、限界を迎えていた三人の剣士に再び「鋼の力」が宿った。


「馬鹿な……!? メラムプースたちはどうした! ヤコブは何をしている!」

傀儡師カーライルが、糸を操る指を震わせて絶叫する。


「あいつらならもういねぇよ。霧になって消えちまった。……次はお前らだ」

陽炎の言葉に、残された商人たちは戦慄した。


最強の鑑定眼と回避不能の嘘を持つ者たちが、これほど短時間で排除されるなど、彼らの「計算」にはなかった。


「ヒッ……ヒャッハハ! 笑わせんじゃねえよ! まだこっちには数万の軍勢と、僕の特等席があるんだぜ!」

道化師ジョーカーが狂ったようにトランプをばら撒く。同時に、伝導師マーキュリーが喉を震わせ、大気を振動させる絶滅の歌を歌い始めた。


「……蒼波さん、ノヴァさん。それに紫苑。後ろの雑魚と呪歌ノイズの相手、任せてもいいか?」


「ふん……。若造に格好つけさせてばかりでは、剣士の名が廃るというもの」

蒼波が長刀を静かに構え直し、鋭い眼光をマーキュリーへと向ける。


「一瞬で終わらせるわよ。紫苑、いくわよ!」

「はい、ノヴァさん!」

三人の剣士が、再び「剣の極致」へと踏み込む。


後方の脅威が消えた陽炎は、アゾットの柄を握り直し、正面のカーライルを見据えた。


「雫。……あいつの指、全部へし折るぞ」

「うん、陽炎。……あなたの心、全部伝わってるよ」


雫が陽炎の肩に手を置く。

第六感で繋がった二人の魂は、もはや言葉を介さずとも完璧な連携を見せる。


陽炎の『不壊の熱量』が極限まで高まり、異空間の空気が、あたかも大天位の一角が降臨したかのように重く、熱く、歪み始めた。



「さあ……そろそろ店仕舞いだ、商人ども」


「生意気な……ッ! 私の最高傑作たちで、その傲慢な顔を塗り潰してやる!」


傀儡師カーライルが狂乱し、十本の指を複雑に交差させた。

地平線を埋め尽くしていた数万のリビングデッドと機兵騎士が、目に見えない呪糸に引かれ、互いの肉と鋼を強引に融合させながら巨大な山を形成していく。

それは、数千の死を一つに凝縮した、異空間を埋め尽くすほどの「超巨大肉塊魔獣」へと姿を変えた。


「ヒャッハハ! 潰れちまえ!」

ジョーカーがその魔獣の背後から、小さな町なら数発で吹き飛ぶほどの威力を秘めた漆黒のトランプを雨あられと降らせる。


「……させない。——『静寂サイレンス』!!」


雫が突き出した掌から、波紋のような翡翠の光が広がった。空間そのものを鎮めるその真言は、空中で炸裂しようとしたトランプの爆鎖を強制的に中和し、ただの紙屑へと変えていく。


「なっ、僕の爆辞が……!?」

「今よ、紫苑!!」


ジョーカーが動揺した一瞬を、ノヴァは見逃さなかった。


「【銀閃・旋風】!!」

ノヴァが自らの体重を限界まで「軽く」し、爆風の余波を利用してジョーカーの懐へ肉薄する。


「おっと……!」

ジョーカーが逃れようとした背後、そこには既に紫苑が音もなく立っていた。


「逃がしません。……【村雨・十六夜】」

神速の抜刀。十六の斬撃がジョーカーの四肢の関節を正確に捉え、その逃げ道を完全に断つ。


「ギ、ギャァァァッ! 僕の、僕の衣装が……!」


「叫ぶ暇があるなら、地獄で踊ってなさい!」

ノヴァの双剣が、重力加速度を乗せた一撃でジョーカーを地面ごと叩き潰した。




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