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神位の書  作者: KATSUMI


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第一章 狂戦士 〜其の伍〜

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

陽炎は走っていた。


(雫!無事でいろよ)

陽炎が駆け抜ける。


(見えた!…ん!?)

あと少しのところで、陽炎の足が止まる。


(何だ…この感覚は)

陽炎は慎重に辺りを見回す。

(いる…誰かが俺を見ている…何処からだ)


カラン…コロン、カラン…

音が聞こえる。遠くより聞こえる音がだんだんと近くなる。

陽炎は金縛りあったように立ち止まり動けない。

(なんだ…これは)

微かに動く目線を音のする方に向ける。


「陽炎…貴殿が狂戦士…」

闇夜の中から腰の背後に小刀を身につけた女が現れた。その女の容姿は着崩した着物を羽織り、下駄を履き足首には鈴をつけていた。また顔立ちは整い、髪は長く色は白銀で後ろで結っている。肌の色は透き通るような白で手足はすらっと長く申し分のない体型である。

しかも眼は猫の目のように鋭く、夜の暗闇で光り輝いている。


(こ、これは妖術…妖刀使いか)

階級上位のソードマスターであることが佇まいでわかる。


「…器…を心配しているのか…」

不敵な笑みで妖術使いの女が尋ねる。

「…よく目を凝らして…見てごらん」


何故気づかなかったかはわからないが、女の傍らに雫が気を失っているというより眠っているようにみえる。


「雫っ!!」

陽炎が叫ぶ。


雫の指が微かに動き、ゆっくりと目を覚ます。

段々と意識が戻り、周りの状況が普通でないことを認識する。

しかし、声を失っている雫は叫ぶ事もできない。


この状況に雫はもちろん、陽炎も把握しきれていない。

(な、なんだ…この妖術使い)


「ふふふ…更に周りを…よく見るがよい」

妖術使いが言う。


(え?…こ、これは!?)

先程、須佐能袁と一緒にいた時、影から現れた者と同一人物であろう者達の亡骸が何十体と横たわっている。

(気づかなかったのではなく、気づけなかった…この女が腰に差している妖刀…その力か)


「雫という名の器に…狂戦士の陽炎…面白いわ」

妖術使いの女が妖艶な表情をする。相変わらず、猫の目のように鋭く、光り輝いている。

「…知りたい?」

妖術使いの女が焦らすように言う。


雫は今の状況が分からず、ただパニックになっている。

妖術使いの女がそっと、雫の頬に手をやる。

「無理もないね…ふふふ」

すると、雫がまた眠るように目が閉じていく。


妖術使いの女が、陽炎に向かってニヤっとする。

(わたくし)は、帝直属の騎士影の騎士団(シャドウナイト)の一人、禍姫(カラミテ)…」


妖術使いの女、禍姫は妖艶な笑みを零しながら話す。

「帝の命を受け、須佐能袁様にお会いしにきたら…あら、不思議…建物まわりに…影から気味の悪いヤツらがウジャウジャ…出てくるんですもの…クス」

禍姫が悪戯な笑いをする。

「…だから(ニャっとする)…サヨナラしてやったわ〜」



この世界に生きているもので、影の騎士団のことを知らない者はいない。

帝の忠実な配下であり、影の騎士達一人一人が尋常ではない手練れであるのと同時に、まともな者がいないと言われている。

そして、相対した者にあるのは〈死〉のみと言われ、死神と畏怖される存在である。



(帝…会ったことはないが、須佐能袁からは聞いていた)


シャナは未来が見えている。今お前を生かすと判断したのも、必要だからだろう…」 

陽炎は、幼き日に須佐能袁に言われたことを思い出した。


「…陽炎、雫を早く連れていきな…阿修羅様に会わないといけないんだろ…」

そう言うと、禍姫は楽しそうに笑みをした瞬間消えた。


禍姫の声が頭の中から聞こえる「早く行きな!」




陽炎は、雫を抱えて走り出すと闇へと消えていった




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






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