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神位の書  作者: KATSUMI


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第七章 北大陸 〜其の陸〜


「——見えた! あの巨大な排気シャッターが中央管理局への入口よ!」

フィーネが強烈なGに耐えながら、前方にそびえ立つ鋼鉄の円形扉を指差した。


ノヴァと紫苑は速度を落とすことなく、そのままゲート手前で鮮やかに着地。背負っていたフィーネと雫をそっと下ろした。

「ハァ、ハァ……。死ぬかと思った……。あの数の呪術機兵の中、あの距離を走り抜けることができるなんて。やっぱり半端なく凄いんだね、ハハハ」


「ここで再度、確認するね。することは2つ。一つは、昔のように誰もが行き来できるように防御システムを破壊する。もう一つは、政府の要人を操りドヴォルグが閉鎖都市になった元凶の錬金術師のロキを倒し、ホメロスこと弥勒様を正気に戻す!いいわね?」


「ええ。準備は万端よ」

ノヴァが不敵に笑い、双剣の切っ先を鋼鉄の扉へと向けた。


「……行きましょう」

紫苑が村雨を鞘に納め、一歩、扉の先へと足を踏み出す。雫もコクっと頷き後ろからついていく。


注意を払い静かに中へ入っていく。

そこは、これまでの無機質な機械の世界とは一変した、異様な空間だった。

壁一面を埋め尽くすのは、演算回路と、それに編み込まれた巨大な『陰陽術の陣』。中心には巨大なクリスタル状のプラットフォームが浮かび、そこから数千本もの青白い光の糸が、ドヴォルグの街中に向かって神経のように伸びている。


その周りに施設所属の研究者が数名が機器の画面を確認しながら打ち込みをしている。


「ん?君たちは誰だ」

その場でシステムを制御していた研究者の一人が気づく。


「誰だも何も、この街の『閉鎖的な支配』を終わらせに来た者よ!」

ノヴァが鋭く言い放ち、双剣の切っ先を突きつけた。


研究者たちは一瞬で顔を青ざめさせ、打ち込みを止めて後ずさりをする。彼らにとって、この『絶対防御』を突破してここまで生身の人間が辿り着くなど、計算外の出来事だったのだ。

「馬鹿な……パイプラインの防衛線が突破されたというのか!? ……」


一人の研究者が、震える指で端末の警報スイッチを押そうとする。

「動かないで。」

紫苑が電光石火の速さで踏み込み、村雨の鞘でその腕を制した。

「私たちは、貴方たちに危害を加えたい訳ではありません。……自由と仲間を取り戻しに来ただけです」


雫はその光景を横目に、吸い込まれるように部屋の中央へと視線を向けた。


青白い光の糸が集束するその中心。

無数の管と電極に繋がれ、半ば宙に浮くような形で固定されている男——調律師ホメロスが、そこにいた。



その時——

「おや……せっかくの繊細な『調律』が台無しではありませんか」

プラットフォームの影から、拍手をしながら一人の男がゆっくりと姿を現した。


豪奢な黒い儀礼服を纏った男——錬金術師ロキ。

その姿を見た瞬間、四人から殺気が溢れ出す。


「ロキ……! 今日こそ決着をつけてやる!」


「おっと、怖いですねぇ。私はただ、この国の演算システムを少し……いえ、劇的に『改良』してあげただけですよ。」

ロキはニタァと笑い、傍らにある巨大なシリンダーを愛おしそうに撫でる。


「見てください。九年もの歳月をかけ、ようやく完成した『生体演算機・ホメロス』です。かつての最強の陰陽師も、今や感情を排した完璧な商人の一人……ほら、雫さん。お父さんに挨拶してはどうですか? もっとも、彼にはもう、あなたの顔を『娘』として認識する回路は残っていませんがね。ククク」


「貴様ぁッ!!」

ノヴァが弾かれたように地を蹴った、その瞬間。

突如としてシャフト全体の回路が赤く発光し、耳を突き刺すような不協和音が鳴り響く。


「……イレギュラーの接近を確認。防衛プログラム……起動」

電極に繋がれたまま、ホメロスがゆっくりと(まぶた)を持ち上げる。

その瞳には慈愛の光はなく、無機質な銀色の輝きが宿っている。彼が右手をわずかに動かしただけで、ノヴァたちの足元の空間が「歪む」、目に見えない重圧音が彼女たちを床へと叩きつけた。


「っ……、何、この、力……!」

紫苑も必死に村雨を杖にして耐えるが、ホメロスが発する『不協和音』は、直接頭の中で鳴り響き、手で塞ごうが抗えない狂いそうな音色を奏でる。


「うあぁぁぁーっ」

常人のフィーネと雫は、耐えられず倒れ込み失神する。


「フィーネっ!雫っ!」

(…くっ。このままではフィーネと雫が危ない)

ノヴァ、紫苑ともに、この状況が非常に危険だと分かっていたが、自分自身も正気を保つことで精一杯であった。


「無駄ですよ。彼は今、この国の『王』なのですから。」

ロキが勝ち誇ったように笑い声を上げた、その時です。



ドゴォォォォォォンッ!!!


背後の入り口が、爆炎と共に粉々に粉砕した。

「!?」



「……王だか何だか知らねぇが。……俺の仲間を泣かせるヤツらは全部まとめて『消去』してやるよ」

立ち込める煙の中から、全身から黄金の湯気を立ち昇らせた陽炎が、アゾットを担いで現れた。

(…あまりもたないな…五分。それ以上は身体が…)






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