第一章 狂戦士 〜其の肆〜
帝が目を開き、須佐能袁を顔を見た。
「…私の今から伝えようとしていること、大体察しているような顔だな。」
須佐能袁が真剣な表情で口を開く。
「ああ、五年前の狂戦士つまり、陽炎の不可解な覚醒の事件…その後の…」
「帝、見ねーんだがどこにいやがるんだ?知ってるんじゃーねーのか?」
須佐能袁が帝を睨む。
帝が目逸らし、天井を仰ぐ。
「さすがだな。だが、私もヤツが何処にいるかはわからない…しかし、やろうとしている事はわかる」
「…三人衆の一人、大天位の称号を持つ爆轟の阿修羅。」
「…で、アスラじゃないだろ」
帝が目を細める。
「アスラは私の命で探っている。ヤツが何処にいるのか。だが、見つけたと思ったらいつもそこにはいない」
「つまり」
須佐能袁が問う。
「…中にいる。私達の中に」
帝の目が鋭くなる。
「見つける事は未だ叶っていないが、居たであろう現場から狂戦士、つまり陽炎の第二覚醒をさせる器が見つかった。余程その時は身を隠すのに焦ったんだろう」
「うつわ?」
「そう。器…」
帝の部屋には、奥に扉を隔ててもう一室ある。
須佐能袁は、その方向に目をやる。
「ま、まさか…」
そう言うと、急いで扉の前に行き、ドアを開ける。
部屋の中央より奥を見た瞬間、(やはりな…) 須佐能袁は、帝に会う前に予感していた考えが当たったとわかった。
そこには、少女がいた。
目は虚ろで人形のように意識がないようである。
「その少女は1万人の生贄の元、禁忌の呪法を施された器だ」
(な、なんて酷いことをしやがる!…) 須佐能袁は拳を握りしめ怒りに震えた。
「わかった、俺はこの子を救いたい。面倒をみるよ」
「そう言うと思った。…辛い使命だがよろしく頼むよ、スサ…」
須佐能袁の顔を見る帝の表情が一瞬、ほんの一瞬悲しんだように見えた。
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「陽炎、もう立派な男だ。」
話しを終えると、優しく須佐能袁は言葉をかけた。
陽炎は、自分、そして少女〈雫〉を守るために姿を消した事が分かり心が震えた…
「…しかし、陽炎にあった今日、本当に今日異様な殺気を感じた」
須佐能袁は昼間、建物の陰から見られていた事に気づいていた。
「…奴らに見つかってしまったようだ。」
須佐能袁は今日でこの暮らしの終わりがわかっていた。
須佐能袁は足早に話す。
「あの子、雫は話せないのではなく、帝の力で辛い記憶と言葉を封じている…」
「えっ!?」
陽炎が声を出す。
「雫の声に呪法、つまり狂戦士の第二覚醒を促す狂声の印が組まれている。それを阻止しなければならなかったんだ。今のお前が狂戦士化すれば、どうなるか…想像できるだろう?」
「しかし!雫の声も戻し、陽炎自身も狂戦士化しないただ一つだけ方法がある…」
と、言いかけた時だった。
辺りの空気が変わる。
すぐさま須佐能袁と陽炎は異変に気づき臨戦体制をとった。
ササー…木々が揺れる。
その木々の影から何かが現れる。人だ、一人、二人、三人…まだまだ異常に増えてくる。
「サーカス団じゃねーよな」
須佐能袁が皮肉を言葉にする。
「陽炎と…名乗る男と…雫と名乗る女を…いただきにきた…」
その声は無機質で抑揚もなく冷たく重い声だった。
「二百人ほどか…陽炎、今すぐ家に戻り雫を連れて、東の大陸のマーベラス国に阿修羅がいる!阿修羅に会いに行け!アイツなら何とかしてくれる!!」
須佐能袁が声を押し殺して陽炎に伝えた。
「でも、コイツら…異様な殺気」
「早く行け!!雫を頼む!!!」
須佐能袁が陽炎の背中を押した。
「わ、わかった!」
陽炎に矛先が向かわないように、須佐能袁がわざと大声を上げ突っ込んでいった。
「舐められたもんだな。この俺にこの数は足りねーよ」(しかし、一番最後に出てきたフード野郎…アイツはヤバそうな匂いがする)
…出すか、草薙…)
須佐能袁が右手を真横に出し手のひらを広げた。
(来い草薙)
その瞬間、空間が歪みその歪みから一本の刀が現れる。
その刀は見た目こそ我々が知る日本刀と呼ばれる形をしているが、目にするだけで斬られたような錯覚をおこす尋常なる極まれし刃であった。
(何年ぶりかな…)
須佐能袁の目つきが変わる。
次の瞬間、辺り全ての空間が静まり返り無音になる。
一瞬…いや、刹那……
全ての人ならざる者達は、自分が斬られたことも気づかなかったろう。
瞬く間に、二百人の死屍ができあがる。
(さぁ、ラスボスのお出ましか…)
フードを被りし人物は全く動く気配がない。
しかし徐々に重苦しい空気が立ち込める。
それは重く、更に重く…
(コイツ…魔導の領域に踏み入れているな…)
須佐能袁の額に汗が滲む。
「…やはり素晴らしい剣技。さすが須佐能袁…」
フードを被りし人物が、ゆっくりと手を伸ばしフードを外す。
「!!!」
あ、貴方は…




