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神位の書  作者: KATSUMI


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第三章 大海蛇 〜其の肆〜


「さぁ、ショータイムの始まりです。貴方たちの実力を観察させて下さい!」

ロキが目を細め悪戯っぽく叫ぶ。


「――寝言は死んでから言え、変態野郎ッ!!」

黒紅のオーラが爆発し、陽炎は弾丸のような速度でキメラの足元へ肉薄した。


「――うおぉぉッ!!」

渾身の斬撃がキメラの巨大な脚部を直撃。しかし、数体の死人が合体したその肉体は、斬撃を物ともせず液体のようにドロリと形を変え、陽炎の腕を飲み込もうと絡みついてきた。


「深追いするな!」

蒼波が横から割り込み、長刀『守護者の剣』を豪快に振り抜く。

「――断影斬!!」

黒鉄の刃が、陽炎の腕に絡みつく実体化した肉塊を瞬時に切り裂き、一瞬キメラを後退させた。


「小僧、こいつはただのデカブツじゃねぇ。気をつけろ。斬った感触がヌルヌルしてやがる……気持ち悪りィ真似しやがって!」


「蒼波、陽炎! 脚を止めて。私が核を狙うわ!」

ノヴァが風となり、キメラの巨体を駆け上がる。キメラの無数の口から放つ高エネルギー弾を紙一重でかわしながら、キメラの胸部、無数の呪印核が集中する【中心】を見定める。


しかし、キメラの背中から触手のような無数の腕が生え、ノヴァを包囲する。


(……左。三秒後に、下から……!)

雫が声にならない声を上げ、必死に指を差して伝えようとする。


陽炎がその意図を瞬時に汲み取る。

「ノヴァさん、足元だ!」

陽炎の叫びと同時に、地面から突き出そうとしていたキメラの棘を、陽炎が短剣で弾き飛ばしました。


「助かったわ、二人とも!」

ノヴァの双剣が、キメラの【中心】にある巨大な呪印核を貫く!

「――疾風の双乱舞」


まばゆい銀光がキメラの体内から溢れ出し、巨体が内側から勢いよく崩壊する。


「おや、おや……。中々やりますね。やはり皇位階級の剣使いと、二人に引けを取らない狂戦士の血を引くものと言ったところですね。」


キメラが泥のように溶けていく中、屋根の上のロキは全く動じた様子もなかった。それどころか、彼は懐から小さな《黒い水晶》を取り出した。


「ククク。試してみましょう」




倉庫の外でも蒼波の部下と、死人還りが激しく対峙している音が聞こえている。


蒼波は長刀を肩に担ぎ直し、陽炎とノヴァに向かってニヤリと笑う。

「おい!ノヴァ、これは貸しだぜ。……俺の部下たちが裏の桟橋に船を用意させてる。この変態野郎は俺が食い止めてやる。……てめぇら二人は、その『お姫様』を連れてさっさと行け!」


「蒼波、あなた……!」


「勘違いすんな。造られた力と鍛錬し磨いてきた俺の腕がどれぐらい通じるか試したいだけだ。……小僧! お姫様【雫】を泣かせるんじゃねぇぞ!」

(この錬金術師…この余裕…何かする気だな)


陽炎は一瞬、蒼波の目を見つめ、力強く頷きました。

「……ああ。恩に着るぜ、ガサツなおっさん!」


「――『おっさん』だと!? まぁ…いい、行けッ!!」


雫の手をしっかりと握りしめた陽炎とノヴァは後ろを振り返らず走り出す。


「面白い、自己犠牲というやつですか。」

(狂戦士に器…まだまだ泳がしてあげましょう。フフ)


「この水晶は呪印核を改良した核、『呪獄』!」

ロキは自らの胸元へ黒い水晶を押し込んむと水晶は呼応するかのように胸の中へー

トク、トク、トク!

ロキの体内で核が脈動し、彼の皮膚の下を紫色の血管のような光が走り抜ける。


「あはは……あははははッ!! 素晴らしい……! 血液が沸騰し、細胞が歓喜に震えている!!」

ロキの身体から、物理的な重圧を伴う紫色の呪力が噴き出し始める。


彼の背後からは、メキメキと異音を奏で巨大な【死の翼】のようなものが広がり、その瞳は完全に理性を失った黄金色へと染まる。


「おいおい……人間に戻る気はねぇってか」

蒼波が長刀『守護者の剣』を構え直し、鋭い眼光でロキを睨みつけた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



倉庫を後にし桟橋に一直線に向かう中、ロキと蒼波の増幅する気を感じとり陽炎は雫の手を強く握った。ノヴァもほんの一瞬、顔を歪める。


背後では、蒼波の放つ重厚な剣気と、ロキが放つ禍々しい呪力が激突し、爆鳴が夜空に響き渡る。



「陽炎、前方に死人還りの増援よ! 止まらずに突き抜けるわ!」

ノヴァが先陣を切り、神速の抜刀で進路を塞ぐ敵を文字通り「消滅」させていく。


周りは蒼波の部下たちと死人還りが各所で火花を散らし、炎が夜空を赤く染めている。


(……怖い……。でも、止まっちゃダメだ)

雫は必死に脚を動かす。

陽炎の手から伝わってくる熱い体温だけが、彼女を支える唯一の道標であった。




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