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神位の書  作者: KATSUMI


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第二章 魔獣 〜其の陸〜


村の入り口。

リュウとアキ、そして雫の三人が心配そうに待っていた。


森の方角を見つめていると、遠くに影が見えた。

段々と大きくなると、その影が2つあり人影に。

そしてー

待望の陽炎とノヴァの二人だとわかる。


(カゲロウ!!)

真っ先に話すことができない雫が駆け寄る。

陽炎の顔を見て、彼女の瞳に涙が溜まる。

(よかった……生きてて、本当によかった……っ!)


「悪いな雫、心配かけた」


陽炎の隣で彼を支える「ハンターの女」の素顔を見て、リュウは言葉を失った。

(……やはり、あの時の……。いや、あの時よりもずっと、人間らしい顔をしているな)


かつて帝都で「死神」のように恐れられた執行官の面影はなく、そこには一人の青年を慈しむ、美しい女性の姿があった。


「リュウさん、だったかしら。魔獣は仕留めたわ。もうこの村は大丈夫、安全よ」

ノヴァは清々しい表情で告げる。


「……あ、ああ。感謝する。……ところで、ノヴァ。君はこれからどうするんだ? また、隣街でハンターを続けるのか?」

リュウの問いに、ノヴァは一度陽炎の顔を見、それから彼に寄り添う雫に視線を移した。


彼女の鋭い「目」は、雫がただの村娘ではなく、何か【巨大な運命】を背負わされていることを瞬時に見抜く。

「……いいえ。私の『特別任務』は、まだ終わっていなかったみたい」

人知れずノヴァは、甲冑の中にしまっている白銀の双剣の柄を強く握りしめた。


「陽炎、あんたたちの目的地は東の大陸。阿修羅様のいる『マーベラス』でしょ? ……私も行くわ。あのガサツな隊長に、この十三年分の文句を叩きつけてやらないと気が済まないから」

ノヴァが小悪魔的な笑顔でウインクする。


「よろしくお願いするれよ。ノヴァさん」

陽炎も笑顔で返事をする。


(…な、何?この雰囲気。何かあった??)

雫は二人を見てキョトンとした。



「ハハハ!了解。俺は公会堂で待機している村長と、被害に遭った酪農家にも連絡して、今日からは安心してぐっすり眠れることを教えよう!」

リュウが大きな声で高笑いをしながら陽炎とノヴァの肩をポンと軽く叩く。


「では私は、陽炎さん、ノヴァさん、雫さんをうちに招待するわ。大したものはできないけど、お祝いしなきゃね!それから疲れただろうから今日は泊まっていって。」

リュウの妻、アキがニッコリと笑顔で三人の顔をみて話す。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


リュウの家へ招かれた三人。

大鍋で煮込まれた具沢山の酪農家スープと、焼き立てのパンの香りが漂う食卓。


「さぁ、たくさん食べて! 陽炎さんは怪我もしてるんだから、栄養をつけなきゃ」


アキの温かい言葉と料理に、戦場にいた陽炎とノヴァ、それと半日歩き詰めだった雫は目の前の暖かい料理をみて安堵する。


陽炎は、行儀を忘れてスープを口に運びました。

「うめぇ……! 生き返るな、雫、お前も食えよ」


雫はコクコクと頷きながら、美味しそうに食べる陽炎の横顔を、少し複雑な表情で見つめています。

(…シンさん)



マスクを外し、美しい素顔を晒してスープを飲むノヴァ。彼女の視線は、時折、雫の首元やその瞳に向けられていました。


(……やはり間違いない。この子の内に眠る『何か』……。かつて帝都で起きた十年前の惨劇と同じ匂いが……)


(はっ!! 『器』)

ノヴァの瞳が一瞬見開いた。


(須佐能袁様が敢えて名を偽り少女と二人暮らし…)

ノヴァは少し皮肉のような笑顔をした。


(…この子、雫がそうなのね…須佐能袁様)



ノヴァはそっと雫に語りかけました。

「……雫。怖がらせるつもりはないけれど、明日からは少しだけ、私の『授業』も受けてもらうわよ。陽炎が守りきれない時に、あなた自身が生き残るためにね」


雫は驚いたように目を見開きましたが、ノヴァの瞳にある真剣な慈しみを感じ取り、静かに、力強く頷きました。




食後、陽炎が泥のように眠りに落ちた後。テラスで夜風に当たるノヴァのもとへ、リュウがやってきました。


「……ノヴァ。君が帝都を去ったのは、やはり十年前のあの噂の事件が原因なのか?」


「…………。ええ、そうよ。人の感情を取り戻した私には耐えられなかった。ある調査で向かった先々での大量虐殺」

ノヴァが一呼吸置く。

「そして極めつけが……い、一万人の…禁忌による生贄…」


「現場を見た私は…涙したわ…。耐えられなかったの…その時の私には。その生贄にされた…一万人は………」

ノヴァが手を握りしめ、空を見上げる。


そして静かに目を閉じた。

「…全員が…子供……………………怖かっただろうなって…」

声が震えていた。

ノヴァは幼き陽炎と重ねてしまったのである。



「私は怒りに我を忘れた…そんな私を静止させてくれたのが、阿修羅様」


「…今は、隊長・阿修羅様より、ながーい休暇をいただいているの…フフフ」


ー回想

阿修羅様は、魔導の領域に入ってしまう一歩前で私を強く、強く抱きしめてくれた。

(ノヴァおまえが居る場所はここだ、そっちじゃない)

(…少し離れろ。)

(そーだ休暇だ!)

(命令だ!おまえが大丈夫になるまで、休暇を命ずる)

(次、隊長(わたし)に会う日が、休暇明けだ)

(…いつまででもまっているぞ)

(必ず克服し、帰ってこい!)




ノヴァは月を見上げ、かつての同僚であり、陽炎たちの目的地にいる阿修羅(アスラ)の顔を思い出していた。

「阿修羅様も、きっと同じ思いで待っているはずよ。……この『器』の少女と、かつての『狂戦士』をね」



ノヴァは、近衛兵の役から離れたキッカケと戻ろうとするキッカケが同じという事実に運命(さだめ)を感じぬにはいられなかった。






翌朝。村人たちに見送られ、三人は再び歩き始めます。





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