第一話 ハズレ職業
数ある作品から本作を選んで頂きありがとうございます。
初の投稿となり、つたない部分も多々ありますが楽しんで頂けたら幸いです。
人は七歳になると、一生に一度だけ神の祝福を受ける。
その日、与えられた職業が、その者の人生を決める。
剣士。
魔法使い。
聖騎士。
賢者。
優れた職業を授かれば王国に仕え、富も名誉も約束される。
一方で、戦う力を持たない職業は、それ相応の人生を歩むしかない。
そして、この世界には誰もが口を揃えて"ハズレ"と呼ぶ職業が存在する。
――【鑑定士】。
魔物や道具の価値を調べるだけ。
戦えない。
強くなれない。
冒険者にも必要とされない。
そんな職業だった。
少なくとも、誰もがそう信じていた。
「次、アルト・フェルディア。」
神官に名前を呼ばれ、俺は祭壇へ向かう。
神殿には村中の人が集まっていた。
父も母も、どこか期待したような目でこちらを見ている。
俺も期待していた。
将来は冒険者になる。
魔物を倒し、世界を旅する。
幼い頃から抱いてきた夢だった。
「神像へ手を。」
言われるまま神像へ触れる。
すると眩い光が神殿を満たした。
水晶に文字が浮かび上がる。
「職業――」
神官が目を細めた。
「【鑑定士】」
静まり返る神殿。
次の瞬間、誰かが吹き出した。
「鑑定士だってよ。」
「あれだけは勘弁だ。」
「冒険者は無理だな。」
「かわいそうに。」
笑い声はすぐに広がった。
俺は唇を噛む。
父は肩を落とし、母は心配そうに微笑む。
「アルト……生きてさえいれば十分だ。」
慰めの言葉。
でも、それは夢を諦めろと言われたようで苦しかった。
俺は黙って神殿を出た。
気付けば村外れの森まで歩いていた。
誰にも会いたくなかった。
木陰へ腰を下ろし、空を見上げる。
「……終わったな。」
冒険者。
英雄。
そんな夢は、今日終わった。
その瞬間だった。
頭の奥で鐘の音が鳴る。
――カン。
透き通るような音。
目の前に青白い文字が浮かんだ。
【固有スキルを確認】
《真実の眼》
「……スキル?」
思わず目を擦る。
消えない。
夢じゃない。
固有スキル。
それは何万人に一人しか持たない、生まれながらの才能。
しかも鑑定の儀では表示されない。
本人しか知ることのできない秘密。
恐る恐る意識を向ける。
すると視界が変わった。
目の前の石に文字が浮かぶ。
【石】
価値:なし
「……鑑定?」
近くの木を見る。
【若木】
樹齢:六年
鑑定士らしい能力。
少しだけ詳しく見えるだけか。
期待した俺が馬鹿だった。
そう思った時だった。
視界の端を、一羽の小鳥が横切る。
何気なく視線を向ける。
その瞬間。
今までとは明らかに違う文字が浮かんだ。
【フォレストバード】
状態:右羽骨折
三日後――死亡。
回避条件あり。
「……え?」
息が止まった。
死亡?
鳥の未来が見えた?
そんな馬鹿な。
慌ててもう一度見る。
回避条件。
ヒール草を与える。
生存率:100%
「未来……?」
鑑定じゃない。
こんなの、聞いたことがない。
俺が混乱していると、突然、森の奥から悲鳴が響いた。
「きゃああああ!!」
続いて獣の咆哮。
反射的に走り出す。
茂みを抜けた先で、一人の少女が巨大な狼型の魔物に追い詰められていた。
グレイウルフ。
村の近くでは滅多に姿を見せない危険な魔物だ。
逃げろ。
頭ではそう分かっている。
それでも足は止まらない。
その時、《真実の眼》が再び発動した。
【グレイウルフ】
撃破可能。
勝率――68%。
条件を表示しますか?
俺は思わず息を呑んだ。
「……条件?」
青白い文字は、まるで俺の問いを待っていたかのように静かに揺れた。
――第一話 終
最後まで読んでいただきありがとうございます。
今後も投稿していくので何卒ご贔屓に。




