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白黒出版・白版~本が売れない時代だから出版を考える~  作者: 伊阪証


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『ポラリス~導きの天使~』のレビュー

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本作の最も優れた部分は、強大な魔術や入り組んだ世界設定ではなく、不完全な者同士が互いの欠けた部分を知り、それでも同じ場所で暮らそうとする人間ドラマである。名も性別も持たなかった下級天使が、スピカたちとの出会いによって「僕」という自我を得てポラリスになる導入には、物語全体を支えられるだけの強さがある。ポラリスを妬んでいたアダムが、その甘さに反発しながらも救われた者の存在を認め、やがて背中を預ける相手へ変わっていく過程も良い。悪魔や魔物との共存も、正論一つで差別が消えるのではなく、仕事や祭りや日々の付き合いによって距離を縮めようとしている。本作は、人物同士が少しずつ相手を見る目を変えていく場面にこそ魅力がある。

文章にも、血の味や匂い、震える手、固く結ばれた口元など、人物の身体を通して感情を渡せている箇所がある。一方で、視点変更を作者の注釈で説明すること、行動より先に設定や歴史を長く語ること、戦闘中にも冷静な分析が続くことによって、読者がその場に立つ前に場面が解説されてしまう。特に痛みは、「激痛」「筋繊維が千切れる」と大きな言葉で示されるものの、その直後に呼吸、判断、姿勢、視界、発声がどのように崩れたのかまで続かないため、損傷の程度は分かっても、人物が味わった痛みとしては残りにくい。

本作の最大の問題は、能力に設けられた代償が人物の人生を変える結果ではなく、戦闘中に消費され、休息によって回復する資源として扱われていることである。アレウスの限界突破は「耐久限界を超えれば死ぬ」と語られながら数日後には全快し、ペントラの魔力枯渇も少し休めば歩ける程度まで戻る。二心銃も、感情を失うという重い設定を掲げながら、数発撃つ限りは感情という名の残量を減らすだけで終わる。どれも人物の身体、判断、関係、以後の生活へ傷を残さないため、代償ではなくクールタイムとして機能している。

もちろん、欠損や後遺症がなければ山場が成立しないわけではない。回復する傷であっても、痛みの最中に呼吸が途切れ、視野が狭まり、判断を誤り、助けを求める声すら出せなくなるところまで書ければ、その場の苦痛そのものが読者へ残る。しかし本作は、大きな損傷を説明する言葉の途中へ冷静な状況分析が入り、戦闘後には短期間で回復する。痛みを文章で押し切る力と、後へ残る結果の双方が不足しているため、人物が何を賭けたのかが読者に届かない。正直、ゲームのクールタイムシステム程度に留まっていてこれではワンピースのギアと同じになってしまう。

この問題が最も明瞭に現れるのが二心銃である。設定では感情を切り取って撃つとされながら、実際に弾丸へ込められているのは、日差し、緑の匂い、仲間との思い出といった記憶である。感情と記憶は別物であり、失った後に生じる弊害も異なる。恐怖を失えば危険を避けなくなり、悲しみを失えば死者を悼めず、喜びだけが残れば笑顔のまま残酷な判断を下す可能性がある。記憶を失うのであれば、救った仲間の名前が出てこない、その相手と交わした約束だけが抜け落ちる、共有していた出来事を他人事として聞く、といった関係の破損が生じるはずである。現在は何を失う能力なのかが定まらないまま、「重い代償を持つ技」という設定だけが先行している。主人公はまだしもアレウスやティルレットは少し軽すぎる。

そのため、代償が人物の選択に必要だから設計されたのではなく、強力な能力には制限が必要だから、とりあえず実装されたように見える。テンプレート的な悪役についても同様である。分かりやすい悪を使うなら、その人物にしか出せない執着や嫌悪を徹底して描き、倒された瞬間の解放感まで強める必要がある。そこへ進まないなら、正しさや弱さを加えて関係を揺らす邪道へ進む必要がある。現状では悪役が主人公の成長イベントを発生させる役目に寄り、人物よりもゲーム内の敵キャラクターに近づいている。

ただし、この欠点は本作の長所と正反対に位置しているため、修正によって大きく伸びる。二心銃によって失った思い出を、ペントラが恋心と新しい経験によって埋めていくのであれば、能力の代償、恋愛、人物の変化が一つの物語になる。「忘れたなら、またアタシを好きにさせてやる」と言えるだけの時間を二人が過ごせば、ラブコメとして置かれていた恋心が、主人公の欠落を支える役割へ変わる。作者が得意としているのは、傷そのものより、傷を抱えた者同士が歩み寄る過程である。だからこそ、代償を消すのではなく、その傷を次の人間ドラマへ渡すべきである。

本作に必要なのは、設定や能力をさらに増やすことではない。戦闘が終わった後にも、使った力の結果が人物の身体、判断、生活、関係に残り続けるようにすることである。等身大の魅力とは、人物が弱いと自称することでも、恋に赤面することでも、日常的な軽口を交わすことでもない。その人物が持つ力と置かれた状況に応じて判断し、その選択によって以前と同じ自分ではいられなくなることである。本作は人と人が結びつくところまで書けている。あとは、その結びつきがなければ生きられないほどの傷を、設定ではなく物語の中へ残す必要がある。

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