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輪廻が嫌なら異世界転生。底辺職の先行斥候だけど『出納』スキルで好き勝手に生きてやる!  作者: 秋乃せつな
第4章

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第70話 発注

 職人街だ! と言っても過剰な期待はしていない。ここはスラムなので。それでもまず、かなり急ぎで作って欲しいものがタライです。そう、湯舟なんだよね。うまくいくかなぁ。(ます)でいいんだけど。


 移動はみんな一緒に。ライズたちも、マイクのお陰もあってだいぶ装備が整ってきている。立ち居振る舞いも変わってきていて、冒険者っぽくなっている。どこから見てもカモって言う感じは脱したな。今度は逆に装備を狙った格上が怖いよね。今なら俺がいるから襲ってくれる人がいたら逆にありがたいんだけどなぁ。そういえば最初にマイクが装備してた革鎧もあったな。今度ライズに見せてみるか。使えればいいけどな。メンテすればなんとかなるかな。剣とベルトもあるんだった。


 職人街に向かいながら、とにかく身体強化の強度を上げる訓練をしろと説く。彼らにもスキルを持っている者がいるだろうが、そこは部外者の俺が触れられない部分なのでなにも聞かない。オルカのスキルはちょっと反則だ。使いこなすためにも本人の身体強化をもっと育てなければ。


 一日森の中で強制的に鍛えたオルカは一気に壁を越えた感じがある。ライズたちは優等生的な伸び代を感じるけど、オルカは完全に天才系だよね。街中でのサバイバルでぎりぎり砕けそうな鋭利な刃だったけど、それを一回ぶっ壊して鍛え直してる感じ。ライズ達はどっちかというと理屈と鍛錬で伸ばすのが向いてそうなんだけど、オルカはライオンの檻に放り込んでみたくなるというか……やらないけどな!


 筋トレや格闘技と違って身体強化の強度や練度の成長曲線ってぶっ壊れてるんだよね。隠れ要素で目に見えないレベル設定あるんじゃないかこれ? 身体強化も魔法も訓練次第で成長できるからやらない手はない! でしょ。


 街外れの職人街に来た。技術さえあればいいんです! まずはキリエの実家の金物工房へ。やっぱり金属の材料を手に入れるところから難しいみたいだ。とりあえず欲しいのはフライパンだ。直径三十センチ以内でひとつ発注。鉄で錆びてなきゃなんでもいい。鉄板はちょい厚めで。育てていくのが楽しみだな。明日キリエに持って来てもらうということでお金も払って終了。


 次にウィルの木工製作所だ。風呂の説明からだね。その場で湯を溜めることを説明。水漏れ厳禁。裸になるからささくれ立ってたらダメです。底の栓はあったらうれしいけど無しでもいい。脚付きに出来るならしたいけど底が抜けても困るからそこはお任せ。さぁ、木材はありますか! これは金さえ出せば手に入るそうです。金ならいくらかかってもいいんで作りましょう! と、いうわけで木材を扱っている製材職人の集落に行くことにする。運ぶものが高価すぎるので『銀狼(ぎんろう)の牙』にもその場で直接護衛依頼を出す。実際は運送屋仕事だけどね。切り出すためのノコギリや斧を積んだ台車を引いて出発。身体強化でいくらでも速く引っ張れるのだが、台車の方がもたないので速度が出せない。


 森の伐採はバーランダー伯爵に課された使命でもあるので、ある程度安定して木材は存在している。『黒の森』ほどではないが『恵みの森』の木も魔力を含んでいて、木材として優秀なんだそうだ。商材としても優秀らしい。本当に『恵みの森』なんだな。製材所はスラムと森の中間地点くらいにあった。村のような感じで集積、加工、乾燥保存の場所としてコミュニティを形成している。集落の周りは魔獣対策で丸太を地面に突き立てるように埋め込んで防壁にしている。


 こっちがスラムの職人ということで客としてけっこう下に見られていたみたいだが、俺とオルカが出ていって高級木材を選んだらビビッたのか急に丁寧な扱いになった。ウィルの親父さんも良い材料が扱える仕事が出来るのでうれしそうだ。ちょっといろいろ作ってもらおうと思って家具用の高級木材も仕入れた。本当なら収納に入れて持ち運びとか保管したいんだけどなー


 個人にしては買った量が多くて高級品だったこともあり、製材所の方で荷馬車を出してくれることになった。これ、壁の中の店には当たり前にやってるサービスっぽいな。台車も荷馬車に載せたこともあって思ったより早く戻れた。


 帰り道の途中でオルカがウサギを三匹確保した。タタっといなくなったかと思ったらその足でウサギ掴んで戻って来るっていうスピードで狩ってた。投擲(スローイング)ナイフで一発だ。ウサギは『銀狼(ぎんろう)の牙』とその場にいたウィルの親父さんに一匹進呈した。


 材料を運び込んだら風呂と風呂桶の製作は数日掛かるのでお任せだ。材料の盗難が怖いから速攻で作るとは言っていた。そもそもこんな大きなものを作って大丈夫かと心配されたが『大丈夫』の一言で終わる話だ。どこになんのために運ぶなんて情報は秘密にするのが普通なので。


 他にも簡単な作りでいいからとテーブルとかイスを発注。こんな高級素材で大型家具の製作依頼はなかなかあることではないと喜んでいた。ウィルも家族に対していい仕事を持って帰ったとまんざらでもなさそうだった。ウィルもまだ十三歳だもんな。ちょっと恥ずかしそうなのがほっこりする。というわけで手付として半金を支払ったところで今日やれることは終わりかな。


 俺たちは今夜は『夕暮れの泉亭』に泊まるつもりなので余った時間を『銀狼(ぎんろう)の牙』の戦闘訓練として一時間ほど付き合った。内容としては武術ではない。それは俺がわからん。やるのは身体強化の強度を上げる訓練だ。要するに魔力をどう扱うかってこと。無駄なく、効率良くを徹底的に繰り返す。ハンドサインの習熟と同じ。職人の手仕事の技術と同じ。何も違わない。


 ライズとルシアが鉄剣を振っていたのだが、これがなんか(さま)になっている。お前ら、剣の才能かスキルあるんじゃないか? 時間があれば振れるだけ振った方がいいとアドバイスしておく。ただし、その本物の剣を使って打ち合いはぜったいするなと釘を刺しておく。怪我の元だし、剣が痛んでもったいない。ウィルの親父に木剣作ってもらってそれでやれ。どこかで素振りの基礎だけでも習わせたいな。まあ、そのうち余裕が出来たらこいつら全員、森に連れて行くかな。泣かせてやろう。


「じゃあライズ、今日はこんなところで。悪いね。明日も付き合わせてしまうことになりそうだ。デミトリーやゲットーファミリーのこともある。屋台のことはただの仕事だからね。自分の身を守ることを最優先に動けよな」


「おう。わかってる。それから明日は俺たちのギャラはいらないぜ」


 ニヤリとしてライズが言う。


「魔力操作の訓練はちゃんと続けろよ。身体強化は裏切らないからな!」


 筋肉は裏切らないのノリで言っておく。

 さて、ウォーカーはいるかな? お前さんが貴族だってわかったからな。積極的に巻き込んでもいいってことだ。


 それが『高貴なる者の義務ノブレス・オブリージュ』ってやつだよね!



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