記憶をなくしたお嬢様 エーベルside
これまで投稿したエーベルsideの話を少しまとめました。
消した話もありますが、どこかに編集して入れているので話に影響はないです。
投稿ペース少し落ちます。
タオルを変えにお嬢様の部屋に向かっていると「うそでしょー」と大きな声が廊下に響いた。
お嬢様に何かあったかもしれない。急いでお嬢様の部屋に入るとお嬢様は何故か鏡の前で立っていた。
月明かりにプラチナブロンドが反射してまるでこの世のものとは思えない…ってお嬢様は今生死を彷徨うぐらいの熱を持ってるんだぞ。
お嬢様のお体に障ったら大変だ。ベッドの方に促すとお嬢様はキョトンとした様子でこちらを見ていた。
旦那様に報告すると声をかけ旦那様の部屋に行く。旦那様にお嬢様が目覚めたと報告すると旦那様は仕事をしている手をとめお嬢様の部屋に向かった。
お嬢様の部屋に入るとお嬢様はベッドにおらず、また鏡の前にいた。
俺はお嬢様に再度ベッドに行くように言った。
旦那様もお嬢様に優しい笑みを浮かべて声をかけた。
「あの!ここどこですか?」
普段のお嬢様らしくない一言により俺と旦那様は凍りついた。
俺より少し早く現実逃避から帰還し、「シャロ?パパの事は分かるかい?」と聞いた。
お嬢様は何も覚えてないといった様子で首を傾けた。
うそだろ…
旦那様は足をプルプルさせて崩れて落ちた。
わー いい気味。
さすが侯爵家の当主とだけあって立ち直りは早く、一言お嬢様に告げ部屋をでた。
俺も頭の整理をつけたくて部屋を退室した。
退室して一歩踏み出すと目の前に旦那様が立っていた。
部屋に戻るんじゃないのかよ…
「エーベル正直に答えろ。私の娘シャーロット・フランチェスカは生死を彷徨うぐらいの熱を出していた。ここまでは間違いないな。」
「はぁ…そうです。」
ああ…面倒くさい。部屋に戻って頭で整理しようと思ったのに
「ここからだ。部屋に入ると熱を出したとは思えないぐらい普通な様子の娘がいた。そして私の事、フランチェスカ家の事をまるで覚えてないかの様な態度だった。」
「たぶんですけど、本当に覚えてないと思います。専属になってから今まで私の前に出た事は一回もなかったので」俺は自分の意見をいった。
「本で読んだ事があるな。稀に高熱で記憶をなくす事があると…今回の件はそういう事なのか。」
知るか。旦那様の読んだ本の内容なんて知るわけがない。
でもお嬢様の心の傷がなくなればそれでいい。
奥様は見た事がないが、お嬢様をこの世に誕生させてくれて感謝はあれどお嬢様の傷になるのなら害でしかない。
自分の部屋に戻り、ランプもつけず上着を脱ぎ、ベッドに投げる。
そして今日一日の出来事を思い出す。
お嬢様は熱で倒れる前におっしゃった言葉。「いなくならない?」
これは俺の見解だが、お嬢様は奥様が亡くなられて居なくなる事に不安を感じていたんだろう。
全く…お嬢様には呆れる。
「俺は死ぬその時までお嬢様の側を離れないですよ。例えお嬢様が俺を忘れても…
貴方は私の恩人で愛する人だから俺の気持ちを知った時貴方はどうするんでしょうね。」
俺の独り言は闇へと消えた。




