表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラスの世界  作者: 旧式突撃歌
1章 おとぎ話はこうやって始まる
34/36

変革した世界で······~最狂の存在~

 極彩色の光は様々な色を描き出す。俺の周囲は様々な色に染まり、綺麗な一枚の絵を描くんだ。


「これはーーまさかとは思うが、全てを書き換える為······ふふ、ふはははは!!なるほど、なるほど。実に愉快だ」


「嘘でしょ。これって、永続現実未来世界エンドレスリアルループの発動の合図······させない。ダメ。こんなのダメに決まってる!!」


 未歩の声に呼応するように、機械の籠手が咆哮を上げる。真っ直ぐ未歩は俺へと踏み込みーー渾身の一撃を叩き込む。が、極彩色の壁に阻まれ弾き返される。


 ゴロゴロと背中から転がり、未歩はそれでも立ち上がる。何度も何度も何度もーー


「未歩。無駄だ。もういいんだ」


 俺の声が聞こえているはずなのに、未歩は愚直に真っ直ぐ突貫。ひたすら叩きまくる。


 正拳、掌低。何もかもを極彩色の壁は防ぐだけだ。薄汚れ、痛みで軽く顔をしかめ、それでもーー


「ダメ。ダメ。ダメに決まってる!!!!あたしは!!またーー」


 連撃。拳をひたすら一点に連続で放つ。一寸の狂いもなく、同じ箇所をひたすら叩きまくる。


「またーー救えないのは!!絶対にやだぁああああああーー!!ッ」


「壊れろッ!!壊れろッッ!!壊れてよぉぅぉおおッッッ!!!!」


 悲痛な叫び。諦めないのだ。何度も何度も、ただひたすら、ただひたすら。未歩の叫びを聞きながら、叩き込まれる拳を延々と眺めーー


「大丈夫だ」


 優しい声音で、俺はそう言う。今の状態で、未歩へ触れたらダメだと本能的に解る。きっとーー未歩を殺してしまうから。


「何が!?ふざけないで!!またーーまたこんなのッ!!」


「違う。未歩聞いてくれーー」


「あたしの名前をーーッッ。気安く······呼ぶなぁああ」


 拳の連撃が加速。視認出来ない速度は、赤熱する機械の籠手から白煙を吹き続ける。


「今回は違うんだ。俺をーー」


 赤熱する機械の籠手が、度重なる衝撃のせいか歪な音を上げ始める。限界を超えた駆動はーー所持者の意志を貫き通す。


「俺を信じろ!!」


 殴り続けた腕が止まる。白煙を上げ、蒼の火花を全体から噴き出し、機械の籠手が静かに駆動を止めた。


「うそだーーそう言って、そう言って······」


 床に落ちるのは、雫。未歩の震える声と一緒に、雫がまた······落ちる。


「あたし、ずっとーーずっと、覚めな、覚めない夢······おき、、起きてもあんた居なーーくて」


 極彩色の壁に手を添える。未歩は震える体と声で、極彩色の壁の前で泣くのだ。また雫が落ちた。


「あた、あたし······助けたかった。誰でもない。あんたを助けたくて!!」


 極彩色の壁を叩きつける。握った拳で、壁を叩きつける。


「でも、普通じゃ無理なんだよ。普通の人間じゃ······あんたを救えないの!!」


「だからーーあた、~~~ッッ!!」


 そこからは声にならなかった。極彩色の壁を叩きながら、未歩は崩れ落ちる。


 慟哭。


 以前にも、こんな事があった。どうしていいか解らない未歩は、泣きじゃくる子供なんだ。手を伸ばしたかった。大丈夫だとーー安心させてあげたい。


「展開を超越するには、人の枠組みを超えねばならないのだよ。人というしがらみに囚われていては、どうにもならないということだ」


「次元を超え、新たに構築されたーー存在するようで存在しない世界へと来るのだ。そんなことは、人では出来ないのだよ」


 ソロは静かに歩く。相変わらず笑みを浮かべ、神経を逆撫でするように言葉を紡ぐ。


「非常に簡単なことで、それは解決出来る。人では無くなればいいのだ。極論であるが、実に正しい。人という枠組みを超えた先はーー即ち神だ」


「デウスエキスマキナ。機械仕掛けの神。人が生み出す、人ならざる者。全ての展開を壊す、禁忌の存在」


 ああくそ······こいつを黙らせてやろうか?ゆっくりと歩きながら、長い髪を軽く払い。俺へと穏やかに微笑む顔を、叩き潰してやりたい。


「機械仕掛けの神は、それはそれは優秀だ。全ての展開を壊し、全くもって褒め称えられる存在ではなく。だとしてもーー神なのだよ。神という存在は、ある意味では······何をしても許されるのだよ」


「展開を蔑ろにし、全てを破棄し、物語を終幕させる。いやはやーー恐ろしい神だ。だが······そんな恐ろしい神も、人としての感情を持っている。こんな風に泣き叫ぶ神など、脆弱であろう?」


 極彩色の光がーーソロへと放たれる。腕を真っ直ぐ伸ばし、振り抜く。


「ふ、ふははは!!そうかそうか」


 極彩色の光が剣に変化した。それはソロを両断ーーしなかった。振り抜いた剣は、ソロを確かに捉えたはずだが······高笑いを上げるソロは、そのままこっちへと歩いてくる。


「いやはやーー実に愉快。愉快だぞ道化様ジョーカー。これこそが、人の業。憎かろう?悔しかろう?」


 再度振り抜く。確かに当たっている。だがーーソロは笑みを浮かべたままだ。


「残念ながら、道化様ジョーカーでは······わたしという枠組みの存在は倒せんのだ。いやはや、なんという悲劇だろうか?残念だ。非常にーー残念でならない」


 くそ。くそ。くそ!!当たってるのに感触すらない。どういうことだ?


「まあーーいいではないか。そういうものだと思えばいい。わたしという存在は、そこに在るようで無いのだよ。だからといって、特段気にする事でもあるまい」


「何度も何度も、そうやって繰り返しするのはいいが。無駄だとーー理解ができないのは、愚かだ。愚か者は、人を笑わすだけではないかな?」


 突く。切り裂く。駄目だ······全く感触がない。空気を切っているような?一体なんだ?コイツはーーなんだ?


「ああ、そうか。忘れていたよ。道化様ジョーカーだったな。これはーー失礼した。存分に笑わせるがいいと思う」


 癪に触る。コイツはーー何が可笑しいというんだ。せめて、せめて一撃。何が何でも、たった一撃!!


「無駄だ。愚か者。何をしようとも、今のお前ではわたしに触れる事はできん。さてさて、どうするべきか······?どうするべきかな?道化様ジョーカーーー」


「だったらーーお前に一撃。たった一撃······。必ず食らってもらうーー!!」


 極彩色の光が更に強く溢れ出す。今までよりも、遥かに眩く。鮮明に彩る。


「ほうーー?それは楽しみだ。······如何にして、一撃を与える······と?」


「今の俺で駄目なら、今の俺を超えればいい。何かを捨て去り、何かを得られるならーー俺は人の枠組みを超えるだけだ!!」


 たった一回。この一回しか覆す方法はない。全てを救い、何かを得て、何かを失う。繰り返しやってきた物語を、今ーー超えるだけだ。


「I had a dream. To realize ideal (私は夢を見た。理想を叶える為に)」


 これは呪詛だ。終わりの始まりを叶える為に、俺が願う全てを救う為に。


「I had a dream. To see the beginning of the end (私は夢を見た。終わりの始まりを見る為に)」


 この呪詛は、俺の世界を叶える為に必要不可欠。だがーー俺一人では不可能。


「The world is gentle. You do not know its kindness (世界は優しいのだ。お前には、その優しさがわからない)」


 極彩色が渦を巻く。慟哭していた未歩は、この様子を見ながら何かを叫ぶが、聞こえない。


「However, you do not recoghize a gentle world (だからといって、お前は優しい世界を認めない)」


 ソロは笑みを浮かべたまま、俺を見据えーー楽しそうに天を仰ぐ。


「Because you will not accept it, you are kind (認めないからこそ、お前は優しいのだ)」


 頼むよ。この一回ーーさあ、俺に力を貸してくれ!!


「Because of that, you are not lonely (故にーーお前は孤独ではない)」


 全てを救う為に!!


「「Welcome to a gentle wold (優しい世界へようこそ)」」


 声が重なった。約束を守ってくれるようだ。ありがとうーーさあ、いこう。


「「Transeformation (変革)ーーッ!!」」


 変われ。全てを変えろ!!お前はーー孤独ではない!!


「「Constructing an idal world (理想世界構築)!!!!」」


 極彩色の光が全てを包み込む。たった一回。これで、俺が出来る世界の変革はーー二度と使えない。


 この選択が正しいかどうか?それは解らない。解らないからこそ、俺は思う。


『優しい世界はそれを認めてくれる』


 だからこそ、今のこの状態。この状況。その全てをーー


 始まりの終わりへ向かう為に、変革するだけ!!


 極彩色の光が収まる。数回瞬きをして、腕を軽く振るう。異常は無いようだ。瓦礫の山を築き、さっきまで見えていた光景となんら変化は無い。問題はーー


「······これは、どういう事だ?」


 独白。聞こえてきた声のほうを見やる。その横で、立ち上がる存在も一緒に視界に収める。


「ーーなにが、おこ······ったの?」


 無事に立ち上がったのは未歩だ。どうやら、俺の変革は本当に上手く出来たようだ。


「変革したんだよ」


 そう言い。タバコに火をつけ、久し振りの感覚を味わいながら、呆然と佇む二人へと俺は静かに······告げる。


「正真正銘、これが最後の変革だ。世界を作り直した。始まりのーー終わりへ向かう為にな」


「ーー何言ってんのこいつ?ちょっと、ソロ。頭悪いのがここにいるんですけど?」


 そんな未歩の声に、笑いそうになってしまう。ソロはーー何事が起きたのか理解出来ないようだ。


「まあ、そう言うな。少しだけ付き合えよ」


「はぁ?なんでそんなことーー」


 未歩の嫌そうな声にソロは片手を上げ制し、未歩はそれで押し黙る。タバコを足で踏み潰し、俺は再度火をつけると二人へと、状況を簡潔に説明するために口を開く。


「この世界の設定を、統一化したんだ。理想顕現形成イマジネーションフォームを各自使用可能にし、これが基礎の各自の能力と設定。お前達は、神ーーという人を超えた存在だ。神がどういう存在で、どういう能力を持っているかは知らん」


「知らんからこそ、お前達にはこの世界の設定を、忠実に再現してもらっている。と言うか、この世界の中の人達には、これが全て適用されている。と言ったほうがいいだろう」


「その上で、神という馬鹿げた設定はひととして、扱われるようになる。つまりーーお前達も俺も、同じ土俵にいるんだ」


 タバコを潰し、新しく取り出したタバコに火をつけ。


「この設定の土台は、ゲームの設定そのものを使っている。ゲームである以上、倒せない存在は有り得ない。異常な程強かろうが、違法な改造を施そうが、倒せる前提を必ず守ってもらう」


「それからーーおまえたちをこの牢獄に閉じ込めた。何が目的でここにいるのか。何を知っていて、どうしたいのか?それらの情報が無い以上。お前達を、何処かへ行かせるわけにはいかない。無論、俺もそれは一緒だ」


「退くことは許されない。逃亡は不可能。かといって、もう一度世界を作り直すことは出来ない。それを出来なくしたのは、おまえたちだからだ。おまえたちが、ひとに不条理を押し付けるなら、ひととしてその不条理を覆す」


 タバコを踏み潰し俺は、目の前で笑いを堪えきれないソロを真っ直ぐに見据え。告げる。


おまえたちが納得いかないのであれば、ひとを打倒する必要があるんだよ。むしろ、そうしなければいけないよな?」


「観客を喝采させるんだろ?神が舐められっぱなしの、この物語にはーー納得出来るわけがない」


「ふふ······ふは、そうきたか。然り然り。これは愉快極まりない。実に愉快だ!!こんな事があり得るのか?無いだろう。有るわけがない。こんな馬鹿げた事を思い付くとはーーこれこそが······道化か」


 額に手を添え、壊れたように笑い狂うソロを見ながら、未歩は呆れたようにため息を吐き出すと、俺へと向き直る。


「何だかよくわかんないけど、あんたを倒せば終わり?そもそもーー倒したら何があるの?」


 その問いに俺は答えるべく、未歩を見やる。互いに視線を交わし、未歩は目を反らす。


「勝者にはーー全ての願いを叶える権利をあげるわ。そうでしょう?秋月」


 その声に、全員が顔向ける。元通りに傷一つ無い片桐と、その横を歩くシルヴァが穏やかに微笑む。


「設定を応用したのならば、それが基本設定ルールよ。勝者には全ての願いを叶えるわ。何を願っても全て叶う。そう言うことよ」


「その通りだ。勝者には、全ての願いを叶える力を持たせてある。期間は3年間だ。この世界で3年の間に、勝者を決めるんだ」


「勝者を決める際の条件は、三国の統一及びーー自分以外の全ての外敵を滅ぼす事よ。何かを守りたいのであれば前者を、全てを滅ぼし自分だけの勝者とするならば後者よ」


 片桐は金色の髪を払い、そんな片桐へ俺は首を振るとーー静かに口を開く。


「そのルールは変革した。神側は、俺を打倒した者が勝者だ。異論は認めない。何故か?」


「俺が仕掛けた喧嘩だからだ。これはーー俺とお前達の戦争だからだ。お前達は、俺を殺せばいい。他は一切関係無い。代わりにーー俺が勝者になるには、お前達を全員殺す」


「これは、俺とお前達しか適用されない。他は無関係だ。故にーーお前達は、俺を殺さなければならない。俺は、お前達を殺さなければならない。単純明快、何も迷う事はない」


「だからーーお前達と俺は、殺し合わないといけないんだ」


 そう言いながら、未歩を見やる。未歩はーー目を閉じ、静かに開くと······笑う。


「そう言うこと。いいんじゃない?わかりやすくて、単純。この場でーー終わらせて!!」


『まあ待て、そう急くで無い』


 時がーー止まった。何もかもが、停止した世界。


『非常に面白いぞ。我はーー非常に面白いと思うが故に、貴殿に敬意を払おう』


 駄目だ。待てーー来ては行けない何かが這い出てーー


『善い見世物だ。非常に善い。善いが······今一つ足りないのではないか?ーーそれは何か?』


 シルヴァの能力で形成された世界に、大きな穴が穿たれた。穴······という表現は、正しくないかもしれない。それはーー世界を食い潰す。


『それはーー絶望だ』


 現れた。来ては行けない何かが、そこに君臨した。


「我は思う。絶望が無い物語ほど、単調な物語はない」


 歯が、噛み合わない。停止した世界ではーーなにも出来ない。現れたソレは、悠然と降り立つ。


「我は思う。祖は愚民であると。祖は世界を作り上げたが、祖は我等には敵わぬ。それは必然。それは当然」


 蒼と銀の長い髪が舞う。腰まであるような長さのウェーブした髪が、降り立ったソレに合わせて舞う。死人のような白い肌。


 作り物。あの顔は作り物ではないだろうか?異様な造形。出来すぎた顔は、俺を穏やかに見やる。


 薄緑色エメラルドグリーンの瞳がーー俺を殺す。何が起きたか解らない。気付くと床に、仰向けに転がっている。


 呼吸しているのか?俺は今生きているのか?鼓動は?停止した世界は、俺の疑問を許さない。


何故なにゆえか?それはそうだろう。当然の疑問。祖はーー我等と同等の地位を得た。それは等しいか?と言われたらそうではない」


「それは傲慢だ」


 そう言って、俺を見据えるのは綺麗な瞳。何処かでーー俺はコイツを何処かで見たことがあるような。


「等しいとはーー不変である。我等と等しいからといって、それは不変ではない。真に等しいとはーー我等と不変であらねばならぬ」


「それは不可能だ。何故か?ここでは、真に等しいとしたとしよう。だがーー祖は、一つ間違いを犯しているのだ。我等は不変ではない。我等は真に不変ではない」


「不変ではない者が、等しいわけがない。等しいとすれば、祖はーー我等のように不変ではないと······しなければならない」


「故にーー祖は、我等と真に等しいとすれば、我等と等しく、不変ではないとしなければならない」


 怖い。ひたすらに怖い。逃げなくちゃ行けない。逃げろ、逃げろ、ここでーー終わりたくなければ逃げ延びろ!!


「ーーッ」


 呼吸。息が出来た。まだ終わってない。生きてる。生きてるんだ。生きてる以上ーーコイツから逃げ延びるしかない。


 鼓動。高鳴る鼓動。停止した世界を、動くための合図。死ぬほどーー死ぬほど速くなる鼓動。限界を超える生きてる合図。


「ーーッッつ!?」


 何かをしようとして、俺の肩に添えられた感触で我に帰る。添えられた感触を見ると、銀色のドレスを身に纏う存在が、横に立っていた。


「今宵は饒舌であるな。それほどに楽しいのだろうか?我が愛しの君よ」


「我が愛しの友よ。我は非常に愉しいぞ。このような事が、我が生涯に金輪際無いであろうからな」


 楽しそうに笑うのは、黄金のドレスを身に纏う。何処かで見たことがーー俺は、目の前のコイツをーー


「そして、大変お久しぶりです。我が愛しの姉君。いつ······以来でしょうか?」


「どうだったかしらーーもう覚えてないわ。皆は、元気かしら?」


 優雅にーー金色の髪を揺らし、片桐は前に進む。対するように口を釣り上げて笑うのは、片桐よりも背が低い黄金の少女。


 銀色と黄金が、互いに向かい合う。似ている。互いに互いが、似通っているんだ。体躯もスタイルも、背丈や髪の色が違うだけで、ほぼ同一。


「元気ですわ。ええーー暇をもてあまし、どうしようか?と思っていたところでしょうか。愛しの姉君が、こちらに御出とは、全く存じ上げませんでした。ああーー姉君。わたしは、嬉しく思います」


「相変わらずだわ。片桐銘耶かたぎりめいか。久しぶりの再開で、お漏らしでもしたのかしらね?」


「まさかーーそのようなことはありません。姉君にまた再開でき、わたしは嬉しく思うだけです。ええ······存分に。そうーー存分に」


 何かがーーその声と共に、何かがーー


「フハ、姉君。ああーー姉君。わたしの深い愛は、貴女を敬愛し、尊敬し······食べちゃいたいんです」


 綺麗な顔が、下卑た笑いを浮かべ。大きな目と額を隠すように片手を当てると、歯を見せながらーー天を仰ぎ。


「フハーーッッハハハ!!フハハァァッッァハハハハアァアアアア!!食べちゃいたいんですよぉおお!!愛しの姉君!!」


 ぶっ壊れている。なんだあれは?高笑いを木霊させ、狂ったように笑いながらーー限界まで自身の首を手で後方へと押しつーー


 イビツな音。それと同時に、真っ赤な鮮血が首から溢れ出る。赤の光景。その赤の光景の中で、ため息を吐くのは片桐とソロ。


 未歩はーー両手で口を押さえながら、後ろに下がり続ける。


「ーーヒャハーーッッァハハハハ!!ヒャハハハハハ!!愉しい!!嬉しい!!アアーー姉君。待ち焦がれましたよ。待ち焦がれましたよ!!」


 鮮血を撒き散らせながら、首があらぬ方向を向いたままーーブラブラと、ブラブラと······笑いながら揺れ動く頭部を片手で押さえながら、片桐の妹はーー片桐へと、目が開ける限界まで見開いた白眼を向けながら、笑い続ける。


「最高です!!これこそ至福!!ああ、あああ~~!!ーー存分に、存分に!!殺戮しあいましょうよぉおおおおお!!」


 視界がーー真っ赤に染まる。鼓動の音がやけに五月蝿い。雄叫びを聞いただけで、何回か生死をさ迷うような錯覚。


「フハ、ッッヒュア!!フヒャヒャ······さあ、逝きますよ。もう、絶頂ですよねぇえええ!!触れただけでーーもう、無理ですよねぇえええ!!」


 やばい。やばい、やばい、やばい。あれは駄目だ。何かがーー強烈な、微塵も生き残れる気配が無いナニかがーー


「Oh, it’s time for bliss. Please listen to my wish (ああ、至福の時よ。わたしの願いを聞いてください)」


 真っ赤に染まる視界が、一瞬で明暗を繰り返す。体の底から吹き出る冷や汗がーーまるで、血でも交じっているかのように痛い。


「I was longing for permanent immutability (わたしは、永久不変に待ち焦がれていたのです)」


 地獄。身を焼かれるような、業火。熱い、熱い!!


「Oh, this is bliss. No one can get in the way (ああ、この至福。何人も邪魔はさせない)」


 悲鳴を上げる。どうしようもない。身の内から燃やされる痛みが、永続的に続く。床を転げまわる。


「I hope. This blissーー that it is permanent (わたしは、願う。この至福ーー永久不変であることを)」


 無理だーー耐えきれな······


「Oohー I want you to be enveloped in my love (ああーーわたしの愛に包まれて欲しい)」


 やめーーろ。


「That’s why I will not disturb my bliss !! (だからこそ、わたしの至福を邪魔はさせない!!)」


 意識がーーもたな······


「I deal manifestation formation !! (理想顕現形成!!)」


 駄目だ、あれをーー発動させたらーーやめ······ろ!!


「Immutable love and hatred sword (不変愛憎殺戮刀)」


 視界がーー真っ赤な光景からようやく、元に戻った。鮮血を撒き散らせていた首が、はまる。音を立てて再生し、何事も無かったように······口元を釣り上げて笑いーー


「手加減はーーしますからねぇっっっっ!!」


 手にした白刃がーー片桐へと抜かれた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ