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1話 

電脳世界。

あらゆる情報が集い、もはや世界の中心となっている世界。

何億、いや何十億もの人間が使用している世界。


-そして、人間が神である世界-


僕はこの世界を壊したい。



ミーンミンミンミーン

蝉の音がやけに響いている。

朝のテレビのニュース番組で女性のキャスターが話している。

「...昨晩未明、自らを『スフィンクス』と名乗る存在が日本の大企業『西芝』のサーバをハッキングし、サーバを乗っ取りました。これにより『西芝』のコンピュータ事業に関する資料をすべて破棄...」


カタカタカタカタカタ、タタンッ!

パソコンのキーボードを叩く音が響いている。


「...また『スフィンクス』は先日行われた『四菱』のサイバー攻撃にも関連していると思われ...」


カタカタカタカタカタカタカタカタ、タタンッ!

先ほどより速くキーボードが叩かれている。


「...これを受け警視庁は『スフィンクス』が複数犯であると考え捜査を続ける方針です。では次の..」


カタカタカタカタカタカタカタカタ、タタンッ!

カタカタカタカタカタ、タタンッ!カタカタ...


PCの液晶画面に映っているのは、文字の羅列。

普通の人間が見ても、何が書いてあるのかは全くわからないだろう。

キーボードの叩く音に合わせて、液晶に文字が高速で打ち込まれていく。


「あと少しなんだ...あと少しで...。クッ!!」

俺は高速でキーボードを叩き、液晶を食い入るように睨む。


苦戦だ...このままだと逆にやられる...!!


確信した俺は一度仕掛けていた攻撃の手を緩め、守りに移る。

予想外の敵のカウンターを避けつつ、攻撃の方法を考える。

この戦いは、もうすでに2時間に及んでいた。


相手にも自分にも疲れが相当来ているはずだ...。

この勝負は先にミスったほうの負けになるだろう...。

なら、相手がミスったその時、一気に畳みかけるっ!!


そう確信した俺は攻撃を防ぐことに集中する。

相手も今の状況は当然理解しているのだろう。

全精力をつぎ込んだ攻撃を続けている。


耐えるんだっ...!!ここは耐える...!!絶対にっ!!


敵の乱打に防御するのに精いっぱいの俺は、このままいくとジリ貧であることを理解する。

ここで防御を捨て、攻撃に移らないければそう遠くない未来に負けが来ることをだろう。

しかし、ここで攻撃に転じるのは大博打である。

防御から攻撃に移る隙を撃たれたら、終わりである。


焦るなっ!!チャンスは来る...絶対にっ!!だから今は耐えるっ!!


博打をうつという焦る気持ちをなんとか抑え、ただただチャンスを待ち続ける。

やばい、そろそろ限界だ...。腕が動かなくなってきている。これは、ヤバいっ!!

そう思った瞬間、待ちに待ったチャンスが訪れる。


「来たぁっ!!!」


疲れか、もしかしたら俺の根性かわからないが、相手のミスを誘う。

いや、正確にいえばミスではない。ほんのわずかなタイムラグである。

だが、俺はこのミスを見逃さない。これを機に一気に攻撃に転じる。


いけっ!!これはチャンスだっ!!どちらにしろ、ラストチャンスだ!!


確信した俺は今まで一番速くキーボードを叩く。

あまりの勢いに画面越しに相手が怯んでいる姿が目に浮かんだ。


もっとだっ!!もっと速く!!もっと速く!!動け、指っ!!


もはや半分願いごとのようにタイピングを続ける。

もう思考するのと指を動かすのが同じタイミングになったようだった。

そして、待っていた瞬間が訪れる。


これで、終わりだぁあああああ!!タタンッ!!


右手の指を思いっきりENTERキーにたたきつける!!

そして、


You win


盛大な音楽とともに、勝利の文字が液晶画面に映し出される。


You are champion of Typing wars!


勝った...。勝ったんだ、俺。ついにあの『タイピングウォーズ』の世界ランキング1位に...。


起きていられるのがやっとという憔悴しきった状態で茫然と液晶画面を見つめた。

そうだ、水飲まなきゃ...。こんな暑い部屋で長い間、水飲んでないんだった...。

そう思い、立ち上がったが次の瞬間にはドサッと床に倒れこんでしまった...。

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