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2話

気が付いたころにはもう昼過ぎだった。

気のせいか誰かが自分を呼ぶ声で目が覚めた。


「...和音っ!ねぇ、起きて!かずねぇ~!!」


「う、うぅ...。」

「いくら面倒臭がりだからと言って、こんなとこで寝ちゃダメだって..。」

暑さと脱水症状で床につっぷして俺はわずかながら意識を取り戻した。

「み、みず...水をくれ...」


声が出ているのか出ていないのか自分でもわからなかった。


「え?水?わかった。持ってくる...。」


静かな足音が蛇口に向かっていき、水が流れる音が聞こえる。

そして、また足音が近づいてくる。


「はい。持ってきたよ。」


み、みずだ!!命の水!!

ごきゅ、ごきゅ、ごくん!!

持ってきてもらった水を一気に飲み干す。


「う、うまい!!水がこんなにもうまいなんて。神様ありがとう...。」

「ありがとうなら私に言うべきじゃない?」


ああ..そうだな。えっと、えっと、こいつは...

誰だっけ??


「今もしかして名前忘れてるでしょ?」

「い、いや...そんなことはない...えっと...田中?」

「姫木よ!姫木 彩!」


あぁそうだった。彩っ、幼馴染の彩。

さらさらのセミロングの茶色の髪に、薄い眉、パッチリとした大きな目。

10年以上一緒に過ごしてきたから見間違うわけがない。


「ほんとに忘れてたよね!?大丈夫!?病院行く?」

「脱水症状で記憶が飛んでたな...三途の川の向こう岸が見えたぐらいだ...。」


生き返った俺は彩に淡々と喋りかける。


「脱水症状になるまで、クーラーもつけずに何やってたの?」

「...ゲーム。」

「だと、思った。部屋の鍵もかかってなかったしね。」


なるほど、どうやらこの女。一般のマナーがわかってないらしい。

幼馴染とはいえ、1人暮らしの男の部屋に無断で入ってくるとは。

もし自分が大人のゲームをしていた時だったらどうするのか?

不法侵入罪で訴えてやる。


「まぁおそらく、俺が敗訴だろうけどな...。」

「1人で何いってるの?」

「い、いや。独り言だ...。」


そんなことよりゲームの続きだ。

つけっぱなしだった俺のPCの前に座る。

まずは先ほどの勝利の証拠を写真におさめて、ネットで自慢し...


「暑いから、エアコンつけるよ~」

「はいよ~。」


適当に生返事をしておく。そうだ、こんな暑いときはエアコンに限る...。

ん?ちょっと待てエアコン!?

つけっぱなしのテレビ、PC、その他の家電諸々、

そして、エアコン。

たどり着く結末は一つである。


「彩っ!!ちょっと待った!!」

「えっ?」


ポチッ


非情にもエアコンのスイッチが押されて...


バスンッ


瞬間的に部屋が暗くなる。すべての電気製品が停止する。

人々はこの現象を 停電 という。


「のぁああああ!!」俺の心からの叫び。

さらば俺の激闘の2時間。


「さ、彩!!お前なんてことしてくれたんだ!!」

「え!あ..ごめん。」

「このゲームの世界ランク一位になるのにどれだけかかったと思うんだ!?」


俺は彩に詰め寄り、肩をつかもうとした....


どすっ


本日二度目の三途の川...。

俺の鳩尾に、彩の強烈な前蹴りが炸裂する。


「ゲーム如きでくよくよしない!!てか、暑苦しいから触るな!!」

「ゲーム如きっていうけどさ...。」

「大体今日が登校日って知ってます?今日終業式だったんだよ?」


学校...ずきんっと胸が痛む。

俺には関係ない。あんな場所...もう二度と行かない。行くだけ無駄だ。

和音の心を黒い感情が侵食していく。


しばらくの間沈黙が続いた。

俺が暗い顔をしたのを見て、彩は少しやさしい声でいった。。


「和音..。和音がもう行きたくないのはわかってるよ。」

「...。」

「わかってるけど、そんなことしたって和音のためにならないよ。」

「俺のことなんかどうでもいい...。」

「和音のためだけじゃない、彼女もそんなこと望んでないよ。」

「黙れ!!お前に何がわかる!!」

「わかるよ!!少なくとも私だったら望んでない...。」

「お前と芹奈とは違うっ...」

「それとね、和音を先生もクラスのみんなも待ってるよ?」


ピクッと和音が反応した。

同時に和音の心に蓋をしてあった黒い感情があふれ出した。


「みんな?」

「みんな。クラスや先生、学校のみんなだよ。」


ふっはっははっはははは!!

急に和音が狂ったように笑い出す。


「みんなだって!?笑わせるなよ!!それに待ってるだって!?

 ははははっ!!おかしくてしょうがない。あいつらがっ!?

 芹奈を殺したあいつらが?ははははっ!!笑える。

 たとえ奴らが芹奈にしたことを忘れて、本当にそう思っているなら

 俺は奴らを許さない!!芹奈にしたことを思い出させて、

 奴らの世界をぶっ壊してやる!!                」


引きこもりなってから半年、

初めて見せつけられた和音の狂気に彩は恐怖した。

自分が知らない間に和音は変わってしまった。

普段は冷静で、終始気分に波がない地味な男だと思っていた。

初めてみる和音の黒い醜さに彩は部屋を無言で去ることしかできなかった。


走りながら彩思った。和音は憎しみや悲しみによって変えられてしまった、と。

そして、

和音はそれだけ彼女 芹奈 のこと愛していた、と。




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