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犯罪奴隷になったので生きていくために闇組織の首領になる事にした  作者: 城之内


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第2話 鑑定士



「ふむ、この者は異能(ギフト)なし。次」


 室内で黙々と奴隷一人に焦点を合わせ、じっと五秒ほど見つめる老人。それから卓の上に置かれた紙に文字を書き込み、判子を押す。どうやら鑑定書のようだ。


 次々選別されていくが、未だ異能(ギフト)持ちの奴隷は現れていない。

 三名終わって、鑑定士はつまらなそうに鼻を鳴らした。


 これだけでも異能(ギフト)持ちが大変珍しい事が分かる。


 もし僕が持っていなかった時は仕方ない。


 読み書き計算、それと前世の記憶や知識を活かして買い手に取り入ればいい。最近、喧嘩ばかりだった両親のおかげで、空気を読むのも抜群に上手くなったはずだ。


 そういえば僕の父は剣術の異能(ギフト)持ちだった。   

 異能(ギフト)持ちの父に、異能(ギフト)を持たない剣士がいくら挑んでも勝ち目はない。


 それだけ絶対的な差があるが、流石に片腕になって酒に溺れ、ドラッグにのめり込んだ父には十歳児の僕でも不意を打てば勝てる。


 後は帯剣していなかった事も大きい。


「おお! 彼女は予言の異能(ギフト)持ちだぞ。等級は三だな」


 父を思い出しているうちに一人目の異能(ギフト)持ちが出たらしい。


「素晴らしいッ、熱心な信徒だけはあるじゃないか! 予言持ちは富裕層に高く売れる。重宝されるぞ」


 奴隷商マルキスが二十代の女性奴隷の背中を労うように叩くと、彼女は手枷がある両手で顔を覆い、さめざめと涙を流した。どうやら安堵の涙だ。


 奴隷となったら、粗暴な主人に買われるのが一番最悪なのだ。こうなったら少しでもマシな相手に買われる事を祈るしかない。


「この男は一等級の炎魔法の異能(ギフト)持ちだ」


 続いて二人目の異能持ちが出た。

  

 盗賊の頭のような風格を持つ髭面の男だ。彼は冷静だった。もしかして自分の異能(ギフト)を知っていたのかもしれない。


 僕は鑑定士が記入している鑑定書を背伸びして覗き込むと、男の詳細な情報が書かれていた。年齢は三十六歳で、犯罪奴隷らしい。


 それから何人かを経て、僕と同じくらいの年齢の少年の番になった。


「……豊作だぞ、マルキス殿。これで三人目か。貴殿の目利きは称賛に値する。この子供は二等級の弓術の異能(ギフト)だ」


「二等級……惜しいな。ブレイワード家が三等級以上の異能(ギフト)を持つ子供達を全て買い取ると言ってきているのだが」


 ブツブツ言っているマルキスに、鑑定士は顎髭を撫でながら物憂げな表情を浮かべる。


「ブレイワードと言えば、確か一人息子がいたはず。伯爵は倅と歳が近い優秀な補佐役が欲しいのかもしれんな」


 その後も鑑定は続くが、以降異能(ギフト)持ちは出なかった。

 ついに最後に控えていた僕の番になる。


 僕の肩をマルキスがバンバン叩いた。


「最後の一人は期待が持てるぞ。何せ騎士爵に叙爵された傭兵の子だからな、異能(ギフト)は遺伝する可能性が高い。父親同様、五等級の剣術の異能(ギフト)持ちであれば最高だ」


「ふむ、見てみよう」


 鑑定士の老人が目を凝らした。


 ちなみに異能(ギフト)には等級がある。


 等級が高いほど、その能力も絶大なものになる。異能(ギフト)持ち自体が五人に一人の割合で、ほとんどが三等級以下だと言われている。


 四等級以上は国でも重職を担えるレベルだと、父が自慢していた。

 

 僕はどうだろう。どうしても期待してしまう。

 

「まさか……そんな……」


 鑑定士の手からペンが溢れ、インクが飛び散って書類に黒いシミを作る。彼は僕を見てわなわなと震えた。


 直後、卓を強く叩いた老人が立ち上がって、僕に近寄り両肩に手を置いた。


「テイムの異能(ギフト)持ちだ……」


「おお! ん? 待て、剣術ではないのか。それで等級は……?」


「分からん」


「……何?」


「儂の目では鑑定できん。つまり、八等級以上だ……!」


 他の奴隷達も目を丸くした。

 マルキスは一拍置いて、唇を歓喜に吊り上げる。 


 肝心の僕は興奮で顔を赤らめた老人の唾が頰に飛んできて、盛大に喜びたいのに喜べなかった。


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