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Reconnect Fate〜二度目の初恋を君に捧ぐ  作者: 鷹利


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4/8

4.Secret/彼女の秘密

涼との同棲生活が始まって半年が経った。

僕らの関係もだんだんと打ち解け、気が付けば本当のルームメイトみたいな心地でいた。

顔こそ涼子そっくりだが、それでも涼は変わらず僕に尽くしてくれていた。

 

「涼、そこの雑誌取ってもらっていい?」

 

「はい。

 …どうぞ翔くん」

 

「ありがと」

 

涼に取ってもらった雑誌を読むと、興味を持った涼が隣から覗いてきた。

 

「それ、なんですか?」

 

「うん。

 僕の趣味の情報が載ってる観光雑誌だよ。

 いつか、海外旅行に行ってみたいんだ」

 

「海外……アメリカとかですか?」

 

「フランスに行ってみたいと思うんだ。

 有名な観光地や芸術を直接見てみたいと思ってね」

 

「へぇ〜…」

 

興味深げに涼は雑誌をまじまじと見つめていた。

彼女からほんのり香ってくる香水のような香りに僕は少しだけ心臓を高鳴らせた。

 

「あ…そろそろ「休憩時間(メンテナンス・タイム)」です。

 ごめん翔くん、少しだけ席を外しますね」

 

「うん。

 でも「メンテナンスタイム」って言い方じゃなくて「少し休んでくる」にしてって言ったでしょ」

 

「あ、ごめんなさい。

 …少し、休んできますね」

 

そう言って涼は寝室に姿を消した。

 涼は一日に一回こうして決まった時間に「情報整理」をする。

人工知能を搭載したアンドロイドとはいえ、常に全身で新たな情報を取り込んでる彼女は整理の処理スピードが普段の生活をしながらでは支障が出るらしい。

だからこそ、いつも決まった時間にこうして情報整理をして常に取り込んだ情報をアップデートしてるらしい。

一応その際に僕との生活を「企業」に報告もしているらしい。

 

「……」

 

ふと、僕の意識は涼に飛んでいた。

 

『そう言えば、涼の情報整理してるとこって見たことないな…』

 

なんとなく遠慮して干渉しない部分はあったが、なんとなく彼女の情報整理をしている姿は気になった。

 

『ちょっと見てみたい…。

 ……あぁいやいや、女の子の秘密を覗くのはさすがにエチケット的に紳士的じゃないよね!

 …けど……』

 

寝室に目を向けると、僕は無意識に寝室の前に立っていた。

 

『……だ、大丈夫だよね!

 そりゃ、女の子の秘密を覗くのは失礼だけど…彼女はアンドロイドだし……いやそういう事じゃなくて…!!』

 

パニックになり頭を掻きむしると、少しだけ僕は落ち着けた。

 

『ごめん涼…。

 ……少しだけ…一瞬だけ…』

 

欲に押し負け、僕はゆっくりと寝室のドアを開けた。

 

「っ……」

 

そっと中を覗くと、上半身裸の涼が僕から背を向けて何かを呟いていた。

 

「っ…!?///」

 

その光景に思わず僕はドンッと勢いよくドアを閉めてしまった。

 

『しまった…!

 涼に気付かれた…』

 

今更自分のしでかした行為にしらけてその場にへたると、ドアの開く音が聞こえた。

 

「翔くん…?

 どうかしました?」

 

「だっ…!?///

 りょ、涼…!?」

 

彼女は脱ぎかけの格好で顔を出した。

 

「ちょちょちょ…とりあえず、服着てっ!!///

 そ、それからちゃんと謝るから!!!」

 

パニックに混乱する僕を涼は不思議そうな目で動揺していた。

 

「は…はぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










 

「ごめん涼!!

 君が情報整理してる時の姿がつい気になって覗いてしまって……本当にごめん!!」

 

「あの…私が休憩時間(メンテナンス・タイム)……休んでる姿を見てなんで翔くんが謝るんですか…?

 別に翔くんは何も悪くないと思うけど…」

 

「いいや、これは男としてあるまじき行為!

 女の子の着替えを覗くのと一緒だよ!

 だから……本当にごめんなさい!!」

 

深々と土下座をする僕を涼はどうしたものか焦るも、少ししてゆっくり近付いてきた。

 

「っ…」

 

軽い罰ぐらいならかまわないと身構えるも、涼はそっと僕の肩に手を乗せた。

 

「翔くん。

 私は女の子である前に、作られたアンドロイドです。

 普通の女の子がもし同じ事をされたとして、どんな気持ちになるのかは分かりません。

 もしそれが許されない行為だったとしても、私は決して怒りませんよ。

 だって……私は、あなたの専属…」

 

「…涼…。

 それは違うよ…」

 

「えっ…?」

 

言い切る前に涼の言葉を制し、僕はゆっくりと立ち上がった。

 

「涼…。

 君はたしかに僕のために作られたアンドロイドのつもりかもしれない。

 けれど、僕からすれば君はかつての「恋人」なんだよ!」

 

「ぁ……えっと…」


思わず本音が出てしまったが、ストッパーの外れていた僕はとめどなく自分の気持ちを吐き出した。

 

「涼…君はあまりに僕の昔好きだった恋人にそっくりだ。

 垂れ気味な目、おっとりした雰囲気、後ろ手を組みながら僕を覗く癖……まるで全部そっくりな程に「涼子そのもの」なんだよ!!!

 君は一人のアンドロイドである以前に、僕の恋人そのものなんだよ!!

 …だから………」

 

「翔…くん…」

 

気がつけば、僕は涙を流しながら叫んでいた。

ようやく我に返った直後に気付くと、理不尽な怒りは急速的に無くなった。

 

「ご……ごめん。

 君には関係ないのに、余計なことを言ったね…。

 …本当にごめんなさい」

 

そう言って立ち去ろうとした時、涼が僕の背中に手を当てた。

 

「…翔くん。

 ……「企業」の開発責任者があなたと話したいって…」

 

「っ!?」

 

心配げな表情で僕を見つめる涼の手には、インカムが握られていた。

 恐る恐る受け取ると、涼はコードをうなじに差し込んだ。

 

「…インカムを着けて話しかけて。

 いつでも会話できるから」

 

「う、うん…」

 

言われるがままインカムを着け、少し緊張しながら僕は応答した。

 

「も…もしもし…」

 

『…初めまして。

 君が佐山翔太君だね』

 

インカムから聞こえてきた声は、少し野太い男性の声だった。

 

「そうです。

 あの、涼………アイの開発責任者なんですよね…?」

 

『いかにも。

 私は彼女の開発責任者の山口流行(やまぐち ながれ)と申します。

 こんな形で話すことになってすまない。

 …少しばかり、先程の君たちの会話を聞かせてもらってね』

 

「っ!!」

 

僕たちの会話を聞いているのかどうかも分からないが、涼は大人しく正座をして待ってくれている中、僕は思わぬことを聞かされた。

 

「あの……盗聴してたんですか…?」

 

『いや、涼がメンテナンスタイムを兼ねた現状報告の最中に何やら忙しないことになっていたみたいだからね。

 通信回線を切る前にそちらの状況がごたごたになってしまって切るタイミングを失ってたみたいだったからね』

 

「あ…なるほど…」

 

状況を整理すると、涼自身は情報更新をしてる最中に山口さんと話す為、涼が入っていた装置にケーブルを繋ぐため上半身裸になって背中を向けていた。

そこへ、休憩の仕方を気になった僕が現場に押しかけてしまったわけだ。 


『君が知りたい事は分かってる。

 ただ、その事についてはもう少し待っていてほしい。

 時が来たら、いつか君と直接顔を合わせて話をしたいと思ってる。

 それまでは、どうか「私たち」に協力して欲しい』

 

回線の先で頭を下げられている気がしながらも、僕はしぶしぶ承諾した。

 

「分かりました。

 けれど、何か怪しい部分があればすぐさま警察に通報しますので」

 

『かまわないとも。

 「我々」もそれなりに慎重に彼女に協力してもらってるからね。

 何かあればそれこそ一人の人間の人生を潰しかねないからね』

 

「………」

 

『何か質問は?

 何も無ければ私はこれで失礼するよ』

 

「……」

 

何かあった気がした。

だが、それは思い出せそうで思い出せなかった。

いや、僕自身が堪えてるのかもしれない。

 

「ありません。

 …いえ……僕はこれからもこのまま「普通の生活」を続けていけばいいんですよね?」

 

『無論だとも。

 ただ、彼女がアンドロイドだということは世間一般には隠し通してほしい。

 それだけだ』

 

「わかりました」

 

『では、これからも迷惑をかけるだろうがよろしく頼むよ。

 佐山翔太君』

 

ブツっと通信が切れ、僕はそっと彼女の首筋からインカムを外した。

 

「お話、終わりましたか?」

 

「…あぁ、うん。

 涼には聞こえてなかったの?」

 

「はい。

 秘匿回線でしたので、私には一切聞こえていません」

 

「そっか…」

 

どっと疲れがのしかかり、僕はその場にへたりこんだ。

 

「翔くん!?

 大丈夫ですか!」

 

「う…うん。

 少し、気を張ってたみたい…」

 

大事ないと言うも、涼は忙しなくしていた。

 

「本当に大丈夫ですか?

 …あ、お疲れならお風呂沸かしてきますね!」

 

そのまま涼は風呂場に消え、僕は寝室に一人残された。

 

「……」

 

聞きたいことは山ほどある。

だが、今の僕にはそれを知る権利はない。

 

「……大丈夫……だよね…」

 

一抹の不安を残しながらも僕は自分の頬を叩いて立ち上がった。

 

『信じよう。

 涼は嘘なんてつかない。

 これは………二度目のチャンスなのかもしれない』

 

そう言い聞かせ、僕は彼女の元に向かった。

 

 

 

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