12.New year event/初詣です!(前)
「翔くん」
「涼」
僕たちはこたつに温りながら向かい合わせに頭を下げた。
「今年もよろしくお願いします」
「今年もよろしくお願いします」
今日は年明けの一月一日。
元旦の午前八時。
「はい。
お雑煮です」
「ありがとう。
いただきます」
新年最初の涼の料理は新年らしく手作りのお雑煮。
「んー。
やっぱり涼の料理はなんでも美味しいよ」
「うふふ。
喉にお餅を詰まらせないでくださいね」
いつも通り僕の食事風景を涼は楽しげに眺める。
テレビでは新年の特別番組がどのチャンネルでも流れ、いつもとは違う雰囲気を醸し出していた。
「年も変わりましたけど、今日はどこかに出かけますか?」
「そうだねぇ。
バスに乗って初詣に行こうか」
「初詣……神様に新年の挨拶をしに行くんですね」
「そ。
実家にいた頃は毎年行ってたんだけど、一人暮らししてから……去年は行ってなかったな…」
「そうだったんですね。
…そういえば、翔くんのご実家ってどちらなんでしょうか?」
「えっ!?
えっと……ここからだと…遠いかな…。
涼のことも口外禁止だって言われてるし…」
「そうでしたね。
涼子さんのご両親方にも挨拶してなかったですしね」
話の腰を程よいタイミングで折るように涼はテレビに視線を向ける。
『僕の家のことは知られてないのか、ただ単に知らされてないだけか……』
一抹の疑問が残るも、僕は気持ちを切り替えるためにこたつから出た。
「とりあえず、初詣行こっか………さむっ……!」
エアコンもつけてるとはいえ、ここは古いアパートの一室。
窓や玄関のドアの隙間から入ってくる冷気がほんのりと僕の肌を刺激する。
「大丈夫ですか?」
「うん……。
悪いけど、カイロを一枚お願い…」
温かなこたつに舞い戻り、僕は再びこたつの虫に成り下がった。
「もぅ……翔くんは本当に寒がりさんですね」
涼は寒がる様子も一切なくカイロを取りに出る。
『アンドロイドか…。
機械の身体になれば、老いることも寒さも関係なくなるんだよな…。
…って、そんな考えはご法度か』
こうして温度を感じれるからこそ、人は酸いも甘いも知れるわけで不便なことばかり……ではないはず。
「はい、持ってきましたよ」
「ありがと」
涼が持ってきてくれたカイロを一枚背中に貼ると、じんわり温かさが広がってきた。
「はぁ〜……温かい……」
こたつで温りながらカイロの発熱作用にとろける僕を尻目に涼はてきぱきと支度を進めていた。
「翔くん。
神様に今年一年の挨拶をしに行くんですから、いつまでもだらけてたらダメですよ」
「ふぁ〜い…」
前側はこたつ、背中はカイロの板挟みの温かさにとろけていた時だった。
「…えいっ!」
「ッ?!
冷たっ!!?」
僕のほっぺが涼の手で挟まれ、体温のない涼の冷たさに僕の団欒は一瞬で奪われた。
「つつッ、冷たいよ涼…!」
「うふふ。
いつまでもこたつでだらけてる翔くんにシャキッとしてもらう為のお薬です」
そう言って涼は後ろ手を組みながら着替えを取りに寝室に向かった。
『もう………涼のいじわる……』
涼のイタズラもあり、すっかりこたつの魔力(?)から開放された僕は洗面所で顔を洗いに行った。
「翔くん。
着替え置いときますね」
「うん。
ありがと」
歯磨きをしてる間に涼が僕の着替えを持ってきてくれた。
『ほんと、涼が居ると自然と私生活もだらけちゃうな…。
そのうち「僕の歯も磨いて」とか……それはさすがにか……』
くだらない妄想に浸りつつ歯磨きを終えて涼の持ってきてくれた着替えに手を伸ばした時だった。
『ジー……』
「ッ!?///」
何気ない違和感を感じ振り返ると、涼が洗面所の入り口の隅っこから僕のことを覗いていた。
「り…涼!?
どうして覗いてるの…!///」
「どうしてって……翔くんが寒そうだったんで、見守っててあげれば翔くんもあったまるかと思ってです」
目元までしか覗かせていなかったが、明らかに涼はこの状況を楽しんでるように見えた。
「そんな気遣いいらないから…///
恥ずかしいから早く出てって…!////」
「はぁ〜い」
微塵にも残念に思って無さそうな返事で涼は洗面所のドアを閉めた。
『もう……これじゃ涼の思惑通りだよ…////』
恥ずかしさのせいで僕は暑いぐらいに体温が上がっていた。
そそくさと着替え終えてリビングに戻ると、涼は既にコートを着てテレビを見ながら待っていた。
「準備出来たよ」
「じゃあ行きましょうか」
涼が持っててくれたコートに袖を通し、僕たちは初詣へと向かった。
家から出て十五分ほど歩くも、目的のバス停まではまだまだ遠かった。
それも当然のこと。
あいにく今日は風が強く、地吹雪で視界が悪かった。
「翔くん、飛ばされないように気をつけてくださいね!」
「この程度の地吹雪で飛ばされるほど…僕は軽くないよっ…!」
甘かった。
いつもなら十分で着くバス停でも、こんな冬場の…ましてや地吹雪がひどい日ともなれば当たり前のこと、足は雪に取られ、視界は吹雪で遮られていた。
「時刻表はあと五分だけど、この吹雪じゃ予定より遅れるはず…。
その前に着けば間に合うはずだ!」
薄い視界の中を歩いていくと、ようやくバス停が視界に入った。
「翔くん、あれっ…!」
涼が突然叫んだと思いきや、彼女の指さす先で赤紫の防寒着を着たおばあさんが倒れていた。
「っ!?
大丈夫ですかおばあさん!!」
急ぎ駆け寄ると、意識はあったらしく小さく声は聞こえた。
「大丈夫ですか!?
どこか痛めましたかっ!?」
おばあさんを起こすと、おばあさんは少しばかり苦痛に顔を歪めていたが、僕の顔を見てすぐ笑顔を浮かべた。
「あぁ、なんも大丈夫だね。
屋根のゆぎ降ろししてたっきゃ、足っこすべらがしておぢでまってしてはぁ。
骨だば折ってねぇべたって、なんぼがあすいだむぐらいだね」
「ぁ……えっと……」
訛りの強すぎるおばあさんの言語翻訳に手間取っていると、おばあさんが指さす平屋の屋根の上にスコップが取り残されていた。
つまり、屋根の雪下ろしをしていた時に足を滑らせて落ちてしまったのだろう。
「わりぃばって、いさつれでってけねぇべが?
こいだばおら一人であるぐのもまいねーして」
「えっと……いさ……???」
おばあさんの強すぎる訛り言葉に動揺してると見かねた涼が割って入った。
「おばあちゃん」
涼の方におばあさんが振り向くと涼は「流暢」に語り出した。
「おらのつれ、訛りさなれでねぇはんであんまりいじめないでけろじゃ。
おらもかだ貸してけるから」
「っ!?」
僕がびっくりしているとおばあさんもまた驚くと同時に笑っていた。
「あっ、んだのがっ!
せばわりぃこどしたなぁ!
おらも生まれでこのかだずっとこの訛りだして…なんも今のわらしっこだば年寄りんどのこどばわがんねぇよなぁ」
「…????」
涼の突然の訛り会話と未だ理解できないおばあさんの会話に動揺してると涼が補足してくれた。
「翔くん。
おばあちゃんを家の中に連れていくんで、翔くんも肩を貸してあげてください」
「えっ………あっ、分かったよ…!」
ようやく理解して僕も急ぎおばあちゃんの腕を担ぐと、おばあさんはゆっくり立ち上がった。
「おばあちゃん。
足っこいだぐねぇな?」
「なんも大丈夫だね。
ちょっどかるぐひねっただげだね、なんも病院さいぐほどでもねぇね。
ありがとさんな」
涼は黙ってニコニコと笑う。
僕もまた掻い摘み程度ながら言葉の意味を把握しつつ会話を聞いていた。
「そご (そこ)の椅子さ座らせでけろ」
涼と僕とでゆっくりおばあさんを座らせると、おばあさんは安心したかのようにため息をついた。
「はぁ〜…。
めーわぐ(迷惑)したなぁ。
なんも年とれば身体うごかねぐ(動かなく)てまいねぇ(ダメだ)な」
「しがだねぇよ。
でも、無茶だばまいねぇよおばあちゃん」
流暢に訛り会話を繰り返す涼に感心してると、おばあさんが僕に目線を向けた。
「しがしまだ、あんたらさ感謝せねばな。
あんたら見つけでけねぇば、ゆぎ(雪)のなが(中)で一人してあの世さ逝っちまってたかもしんねがったしな」
「そんな、大袈裟ですよ…!
……でも、どうして雪下ろししてたんですか?
一人じゃ危ないですよ…」
「んなこた言ったって、この辺もむがし(昔)と違ってわけぇもん(若者)もいねぐなってまって(居なくなってしまって)おらだぢ(自分たち)みたいな年寄りしかおらん(居ない)して。
せばだば (それなら)、おらんど(自分たち)でゆぎ(雪)降ろししねば、誰もやってけねぇして」
「………」
僕は何も言えなかった。
「だからって、なんも無理して一人でやる事もねぇべなして…」
「んや、なんもおら(自分)一人でねぇして。
爺さまもいだんだげど(居たんだけど)、ちょうどママダン(幅広スコップ)買いに行ってておら一人だったんだね」
「えっ!?
じゃあ、お爺さんも待ってれば良かったんじゃ…」
「せばだば(それだと)おら(自分)が待ってらんねぇはんで(から)、待ってる間になんぼが(いくらか)でもおどして(落として)おごうかと思ったんね。
…わりぃばって、そご(そこ)の薬箱さ湿布入ってるね、せなが(背中)さ貼ってけねぇな」
「あっ、はい…!」
おばあさんの指示で薬箱を漁り、見つけた湿布をおばあさんの指示する箇所に貼った。
「はぁ〜……あずましぃ(気持ちいい)じゃ。
…あんがとな。
おめぇ(あんた)もまだわげ(若)くてきもぢっこ(気持ちの)優しいわらしっこ(子)だな。
こどし(今年)でいくつさなるして?」
「えっと……三月で二十一になります」
途中から少しだけ訛りに慣れてきた僕は、まだ掻い摘み程度ながらもおばあさんの会話に馴染みつつあった。
「あっ!?
二十一さなるのが!?
せばだばまだ(それにしては)かおっこ(見た目)より年いってんだな!
まぁだ(やっぱり)わけぇ(若い)ってええなぁ…」
「いいえっ、おばあさんこそ見た目よりアグレッシブと言いますか、全然よぼよぼな感じもしないし……」
「なんも、年寄り二人して長いこと一緒にいれば嫌でもお互いにさぎ(先)に逝ってらんねぇじゃって競走だもんして、ボゲでらんねぇんだじゃ。
…ほら、噂すりゃ帰ってきたじゃ」
おばあさんがそう言うと玄関の開かれる音と同時に低い声が聞こえてきた。
「わい(何だ)、おぎゃぐ(お客)だな?
まだわげくてめんこい(若くて可愛い)わらしんど(子たち)だなして」
「あっ、こんにちはおじいさん。
お邪魔してます…」
涼もペコッと頭を下げると、おばあさんが成り行きを説明してくれた。
「あんた待ってるうぢに屋根のゆぎ(雪)降ろししてたっきゃ、足っこすべらがしておぢでまってた(落ちた)とこさ、このお二人が助けでくれたんね」
「あ"ぁぁっ?!!
まぁだおぢだ(また落ちた)ってがこのほんずなす(間抜け)!!
こないだもおめぇ一人して屋根さ上がっておぢで(落ちて)してはぁ、なんぼ(どれだけ)学ばねぇんだがごのっ!!
ほいで(それで)死んだらもど(元)も子もねぇべなばがごのっ!!!!」
先ほどと打って変わって怒鳴り散らすようにおじいさんはおばあさんを叱った。
「あっ、あの……あんまりおばあさんのこと叱らなくても…。
確かに、一人で危ないことをしたおばあさんも悪いですけど………」
少し怯えながら反論するも、おじいさんはまた人が変わったかのように笑いながら僕に諭した。
「なぁんも、五十年、毎日一緒にいれば文句のひとつでも言いたぐなるんだね!
あれほどわ(俺)がら一人で屋根さ上がんなって言ってもなんも聞いでねぇして……なんぼ(いくら)言っても分がんねぇだね」
そう笑いながらおじいさんは僕の肩をバシバシと叩く。
少し痛いけど、おばあさんを信頼して…心配してのものだと感じれた気はした。
「おらもいづまで動げるが分がんねぇはんでや、ながなが黙ってらんねぇんだねして」
「そーゆーのば「身の程知らず」って言うんだね!!
だはんで(だから)このわらしっこだち(二人)さめーわぐかげで(迷惑かけて)らんだべなごの!!」
「…(汗)」
どこまで冗談で本気なのか度合いが分からない僕と涼はただ黙って見守ることしか出来なかった。
「ほんとにすまんかったなぁお二人さんや。
うぢのバガがめーわぐかげでして」
「い、いえっ!
僕たちは何も……念の為、病院には連れて行った方がいいかもです…」
「んだな。
医者こさ診でもらうじゃ」
「あぁいいじゃ、なんもそごまでしなぐても骨も折れでねぇものして…」
「うっせぇじゃ!!
黙って先生さ診でもらえじゃばがごのっ!!」
そう言いながらおじいさんはおばあさんの手を引くも、その手つきは相手のことを気遣っての優しさが見えた。
「おめぇだぢ、どっかさいぐ(行く)つもりだったんでねぇのが?」
「……あっ!
僕たち、初詣に行こうと思ってたんです…」
「あぁんだのが(そうなのか)!
せばだば(それなら)、おらの車で乗せでってけらね、一緒に乗ってけじゃ」
「えっ!?
いいんですか!?」
「あだりめぇだべな!
このほんずなす(間抜け)ばたすげで(助けて)けだものして、それぐらいせねば神様さ顔向け出来ねぇじゃ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて…」
僕がそういうとおじいさんは途中、一本抜けた歯をチラつかせながら笑顔を浮かべた。
「おばあちゃん、私も肩を貸しますね」
「…わい(あら)、ありがどな。
おめぇさんもまだ顔っこもめんこ(可愛い)くて気持ぢっこも優しくてまんだ(また)、じぇんこ持ち(金持ち)のお嬢様育ちだべ?」
「そんなことないですよ。
おばあちゃんだって、笑った時に出来る目の横の笑い皺がめんこい(可愛い)ですよ」
「ありゃ!
まだありがてぇこど言ってけらんな!
なんぼいい子だして、おらえ(うち)の爺さまど違って素直だな(笑)」
「うっせぇじゃばがこが!
おめぇさ求婚した五十年前さ戻ってやめどげって言ってやりてぇじゃ!」
「あはは………(汗)」
そんな老夫婦のやり取りが続きつつも、僕たちはおじいさんの車で初詣の神社に向かうこととなった。
吹雪の中、僕たちはおじいさん…谷村昇さんの運転する車で神社に向かっていた。
その道中も、おじいさん(七十八歳)とおばあさん(チエさん(七十六歳))の馴れ初め、結婚に至るまでの過程、結婚してお子さんが産まれてからの出来事など、わいのわいのと会話は続いていた。
「だしてはぁ(だからさ)、爺さまがおらさ手紙よご(寄越)してくるもんだからなんだべと思ったっきゃ、なんもたんだ家まで黙って二人して帰るだけでして、告白でもする訳でもねぇ、たんだ期待して損したねして」
「そうだったんですね。
おじいさんは何か意図があっておばあさんに手紙を送ったんですか?」
「あぁんも、おらも若ぇ時だばたんだ気持ぢっこちぃせぇして、一緒に帰りてぇって言うんも小っ恥ずかしかったんね。
ましてや、あの当時は婆さまも別の女子校さ通ってたぼんぼん育ちのお嬢様やがら、男のわ(俺)が校門前でたむろってれば目立つして」
「でも、おばあちゃんはどうだったんですか?
おじいちゃんに手紙をもらった時は嬉しかったんじゃないですか?」
「まぁな。
あの頃だば今みてぇに電話もねがった(無かった)はんで、なんがあれば手紙送るしか出来んかったんね。
ましてや、お互い帰り道も同じでねぇ、偶然顔合わせるなんてこどもあるわけでねぇ。
そんなながでいぎなり手紙寄越されればなんがあったんかって思うして」
「そうですよね…。
告白はおじいさんからしたんですよね?」
「おんや(そう)。
ちょうどお互い高校卒業したばがりの時に手紙書いでして、次の日会うべしって書いだんね。
んで、桜の木の下で制服ともんぺ姿のばあさんさ告白したんね」
「素敵ですねぇ。
おばあちゃんは告白されてどうでした?」
「初めだばびっくりしだね。
それまでだばなが(仲)良い友達みてぇなもんだって思ってたんして、桜の木の下さ来てけろって手紙寄越された時だば、さすがに意識したね」
「あん時だばまだまだめんこい(可愛い)おなご(女子)だったったって、付き合って結婚してわらし(子供)出来でまったっきゃ、なんもめんこみ(かわいさ)もクソもなぐなったね」
「それでも、おじいさんはおばあさんを手放さなかったんですもんね。
おばあさんのことも、お子さんも大事だったから」
「あだりめぇだねして!
こごまで連れ添って、めごみねぇがらって離婚だなんてあるわけねぇべして!
離婚したってなんも得にもなんねぇ!
わらし(子供)どうすうして!」
「………」
正直、おじいさんの最後の言葉に少し喉が詰まった気がした。
多分、羨ましかったんだと思う…。
「おら、見えできたね。
神社さ着いだや」
おじいさんの言葉に外を見ると、いつの間にか吹雪も晴れ、数百メートル先に目的地の神社が見えていた。
「お話してたら、すっかり天気も晴れちゃいましたね」
「涼ちゃんがべっぴんでめんこいから、お天道様もこれだばまいねって吹雪止めたんだべな(笑)」
「もう、おばあちゃんは褒め上手ですね♪」
「はっはっはっ!
涼ちゃんみてぇなめんこくて優しい子だば、将来も安泰だべな!
なぁ翔太くんや!」
「えっ!?
…そ、そうですね……」
安泰も何も、涼はアンドロイドだから…っていうのは内緒だけど。
「そいや、おめぇだぢ付き合ってんのが?」
「っ!?///
い、いえ……僕たちは付き合ってなんか……ただの友達ですよ…」
「……」
おじいさんにはぐらかしも込めて言葉を濁すと、隣で涼が何故が頬を膨らませていた。
「んだのが!?
なぬっ、涼ちゃん付き合っでる男いんだな?」
「……いないですよ…」
「おら、いねぇってよ!
翔太くんや「ちゃんす」だべなして!
今付ぎ合わねぇば他の男さ取られんや(笑)」
「それは……あはは…(汗)」
「なぁに笑っではぐらがして!
おめぇも気持ぢっこ小っちぇして、タマも小せぇんだが!(笑)」
「っ!?///
それはちょっと…////」
「爺さまや、ほいだばあんまりだねして(それだとあんまりだから)、あんま翔太くんいじめんなや。
気持ぢっこ小せくても、おなご(女)みてぇに優しいわらし(子)だして、なんも心配するこったねぇ。
男はタマの大きさでねぇんだねして」
「あはは…。
ありがとうございます…」
おばあさんのフォロー(?)に僕は愛想笑いしか浮かべられなかった。
「…翔くんのばーか…」
「…涼?」
涼が何か言った気がするも、涼は僕から顔を背けてしまっていた。
「はっはっはっ!
翔太くんも罪な男だな!
ほいだば(それだと)、せっがぐのべっぴんさんも逃してまるや(笑)」
「…精進します……(汗)」
絶えぬ笑いの中、車はゆっくりと神社の駐車場に入り、やがて入り口付近に停まった。
「あい、着いたや。
忘れもんしねぇでな」
「はい!
本当にありがとうございました!」
後部座席からドアを開けて外に出ると、足首が埋まるぐらいに雪は積もっていた。
「せば、おらだぢは病院さ行ぐはんで、怪我しねぇようにな!」
「はい!
おばあさんも、怪我には気をつけてくださいね!」
「あいよ、ありがとうな翔太くん。
涼ちゃんも、翔太くんのこと見捨てないでけろな」
「見捨てるなんてするわけないですよ。
おばあちゃんも、おじいちゃんと末永く仲良くしてくださいね」
最後に涼がドアを閉めると、ゆっくりと車が再び動き出した。
「へばな(じゃあな)、翔太くん、涼ちゃん!
翔太くんも、早ぐ涼ちゃんと付ぎ合って結婚しねぇば、わらし勿体ねぇや!(笑)」
「もぉ……そんなんじゃないですってばぁーー!////」
「はっはっはっ!」っと満足気に笑うおじいさんの声を残し、老夫婦の車は神社を後にした。
「…とりあえず、行こっか」
「はい」
少し名残惜しい気もあったが、僕たちは当初の目的である初詣の参拝に向かうことにした。
「…翔くん」
「なに?」
神社に向かう途中で涼が僕に聞いてきた。
「さっきの……そんなんじゃないって……どういうことですか?」
「え…?
そんなんじゃない………っ!?///
いやっ、その……あれは言葉のあやというか……り、涼のことは好きだけど……で、でも付き合うのとかは違うかなって……」
「ふーん…?」
後ろ手を組みながら涼が僕の顔を覗き込んでくる。
「な…なに…?
もしかして……怒った…?」
機嫌を悪くしたかと思ったが、涼はすぐ僕から離れた。
「いーえ。
翔くんは「いづもおどおどしで、何考えてんだがわがんねぇ」って思っただけです」
「っ!?
今のはさすがに分かったよ…。
僕のことバカにしたでしょ…」
「えー?
どうでしょうかねぇ♪」
僕を小馬鹿にするようにペロッと舌を出し、後ろ手を組みながら涼はスキップを取る。
「……でも、そんな翔くんでも…私は………」
「涼……?」
少し離れた位置で涼が何かを呟いた。
ボソボソと呟いてたゆえ、僕には何を言ってるか聞き来れなかった。
「………翔くんももう少し男らしくならないと、可愛い女の子に逃げられちゃいますよ!♪」
そう言いつつ涼は僕の手を取る。
その行為に僕は思わずドキッとしてしまった。
「うっ、うっさいなぁ。
わかってるよ…」
「ふふっ…♪」
楽しげに涼は繋いだ僕の手を大振りしながら神社へと歩みを進めた。




