7 二人目のプロローグ
「ねえユリ! 月に穴があいたって話聞いた?」
友達が駆け寄ってくる。
「え? あぁ……うん」
「やっぱり、宇宙人の仕業かな?」
「……どうだろうね」
「なんだかロマンを感じるよねー」
「……あ、そうだ」
友人が何かを思い出したような動作をして、口を開く。
「マルコ、帰ってきたの知ってる?」
「うん。今、マルコの部屋に向かってたとこ」
マルコの部屋の方を指さして言う。
「あいつ、任務失敗して凹んでるっぽいから、ちょっとは優しくしてやりなよ」
マルコは赤髪の捕獲に失敗したらしい。
どんな顔して落ち込んでるか楽しみだ。
扉を開け、マルコの顔を見る。
――その頭を見て、吹き出した。
「あははっ、なにその頭」
おかっぱ頭を押さえながらマルコが言う。
「赤髪の魔女にやられたんだよお……」
「捕獲作戦だったよね?」
くすっと笑う。
「てっきり、美容院にでも行ったのかと思ったよ」
マルコが叫ぶ。
「お姉ちゃんには分からないんだ! 赤髪の怖さが!!」
「――そう」
笑ったまま、目だけが細くなる。
「じゃあ、私も確かめに行こうかな」
「え?」
マルコが顔を上げる。
「でもお姉ちゃん、戦うの嫌いでしょ」
「戦うのが嫌いっていうか――髪、切りたくないだけ」
「じゃあ、なんで急に?」
「可愛い妹の仇、取ってあげようかなって」
少しだけ笑う。
「それに、強いんでしょ?」
夜。月を見上げる。
マナグサを左手に掲げ、魔力を込める。
髪ほどの出力はないが、入手も容易でリソース(髪)も消費しない。
故にこの草は、主に魔法の訓練で使用される。
細い光が一直線に伸び、そして空に消えた。
再び、月を見上げる。
より鋭利に、より彼方へ。
光を伸ばす。
――月に届くまで、幾千万回も繰り返した。




