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恋人

その匂いが近づいてくる。


初めて触れる、柔らかい風。


心の中で静かに震えるような、甘い予感。


あたいはその香りを、感じ取る。


それは、まるで恋人のような匂い。


まだ見ぬ姿、まだ知らぬ声。


けれど、何もかもが一緒に漂ってきて、あたいの中で膨らんでいく。


その香りが、やがてあたいを包み込む。


まるで、手を差し伸べられているような感覚。


あたいはその手を取る。


ほわほわ。


触れることなく、ただ匂いと風だけで結ばれていく。


風の中で、匂いが混ざり合い、ひとつになっていく。


その一瞬が、永遠のように感じられる。


恋人のように、近くて遠い。


その距離が、あたいをさらに引き寄せる。


ほわほわ。


恋人の存在が、あたいの中に広がり、深く染み込んでいく。


目を閉じれば、その匂いが、心の中で笑いかけてくる。


一緒にいるような、温かさと切なさを感じながら、


あたいはその香りを、今も漂い続ける。


恋人のように、そっと寄り添いながら。

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