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6 angel's vision (0)
「私に貴方の思考を読む能力が有るとしても、『私が貴方のことを全て理解している』というのは誤解よ。なぜなら私には、私に理解できない言葉を読み取ることはできないし、私の想像の範囲を超える物事は読み取っても理解できないから。つまり、貴方が何らかの秘密を有していたとしても、私がそれに関する知識を持ち合わせていなければ読み取ることは不可能だし、読み取ることができたとすれば、私自身が貴方と同等の想像が可能な人間だというだけのこと。そもそも『私が読み取ったところの貴方の思考』が本当に『貴方の思考』なのか、それとも『単に私と貴方が同時に同じことを考えただけ』なのか、或いは『全くの私の妄想に過ぎなくて貴方はそんなことは考えていない』のかなんて、誰にも判らないのよ。貴方は私のことを、『自分には超能力が有ると思っている頭のおかしい女』だと思っていれば、それでいいの。」
ヒュキアはそう言って、僕を正面から見つめた。
それが彼女の別れの台詞だった。




