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見つけた!

「どうでしたか城探検は」


「お蔭様で凄く楽しかったわ・・でもお仕事の邪魔したかも」


「邪魔?感謝の報告しかきてませんよ」


約束通りの夕食時、絶対に聞かれるだろうと思った事をやっぱり聞かれた。

ちゃんと仕事をこなして現れたリュシアンに文句は無い。逆にちょっと叱られるのを覚悟で待っていたけど『感謝の報告』の言葉に目を見張る。


「仕事の邪魔はしたけど感謝される事はしてないし・・・」


「優衣先輩が顔を出してくれた事に対する感謝ですよ」


顔出しと言う名の仕事の邪魔をしてしまった事は重々承知しているのに、そんな事を言ってくれる人達に此方こそ感謝を述べたいぐらいだ。


でもきっと顔を出すとまた邪魔をしてしまうだろうから後で感謝の方法を相談しようと心に誓う。


「ねぇ、リュシアン・・・。私明日からちょっと城内とかうろうろしていい?」


「好きにしてくれて構いませんよ。先輩が入ってはいけない場所等ありませんから」


今日の事を踏まえても絶対ダメと言われる覚悟で言っては見たけど、案外すんなり許可を貰って拍子抜けしてしまう。


「え・・え?あの、いいの?うろうろしても」


「えぇ」


綺麗な箸使いで芋の煮っころがしを口に含み視線で頷くリュシアンに、嬉しさと同時に『あんたの今の姿にその食事、なんかしょっぱいわー』なんて思ったのは口にしない。


「ありがとう」


素直にお礼を言って私も一緒に口に含んだ。


「しょっぱくない?」


「丁度いいですよ、甘辛いこの加減が流石ですね優衣先輩」


「そう?リュシアンが和風食材こっちに浸透させてくれて置いて良かったわ、おかげでこうやって料理できるし」


「同じ食材を使って作らせても先輩が作ったものにはなりませんでした」


「・・・料理は各家庭それぞれの味付けがあるし。同じレシピ、同じ材料で作っても同じにならないのは舌が覚えているからだよ。食べたことない人にレシピ渡して作れって言っても同じ味にはならないと思うけど」


「確かに・・・そうですね」


「私の料理で良いならたまに作るから食べに来て」


「ありがとうございます」


「なんかこのやり取り何回かした事あるわ~」


「えぇ、毎回言っていただきました」


してやったり。そんな表情を浮かべこちらを見つめてくるリュシアン。


「本当に近くに居たのね」


飽きれついでに苦笑が漏れる。

息子の時も娘の時も必ず現れるイケメンなそれ等。

必ず家で食事をして帰っていった。それが自然な事の様に当たり前のように。

違和感を感じさせずに溶け込むそれ等に私は一生懸命料理を振る舞い楽しんでいた過去。

そう、楽しかった。


「次のリクエストは?」


「先輩特製煮込み」


「「ハンバーグ」」


思い出したように声に出せば綺麗にはもった。


「皆それ言ってた」


思わず声をだして笑ってしまう。本当にこの後輩は変わらない。

ずっと側に居たらしいけどどんな姿になっても結局好きなものは一緒。


「私の十八番って思ってたけど十八番にならざる終えない位作ってたって事ね」


「大好きですから」


なんかそれって色んな意味含まれてない?って思うけど口にしないのが正しい食事マナー。

二人で会話をしながら食事をしていたらすっかり全部平らげてしまった。

この身体代謝が良いらしく食べても太らないのが魅力的。

美味しく食べ終え丁度のタイミングで運ばれてくるお茶。


「食後はやっぱりほうじ茶ね・・・」


「そうですね」


ちらりと視線を寄越すリュシアンに何でも無いと目配せしつつ和やかに食事が終わった。

その時リュシアンの姿を見て思った事は口に出さず・・・。






「シェアリリー!私やってみたいことがあるんだけど」


さぁさぁ寝る時間、あんたはお城に戻りなさい。と、玄関まで見送って重厚な扉が閉まった瞬間思わず口を開いていた。

シェアリリーが“どうなさいましたか?”と聞いてくれるので小走りながらも返してみれば、


「はい。マイ先輩様がやりたいことでしたらこのシェアリリー全力でお手伝いさせていただきます」


なんとも頼もしいご返答。

まだ何をするとも言ってないのに迷う事ない返事に涙がでそう・・・。


急いで戻ってきた自室でまずは用意してもらったのが紙とペン。

其処にとりあえず書き出していく。

その間当たり前のようにお茶を淹れてくれるシェアリリーに興奮して書いた日本語の用紙を見せていた。


「申し訳ございません。ひらがな・カタカナはマスターしたのですが漢字はまだ・・」


ものすごく悔しそうに見えます。

そんな悲痛な表情を浮かべさせてしまったこちらの方が罪悪感。


「あ、ごめんなさい。私興奮しすぎてたみたい、自分の出来そうなことがあったからつい。それより平仮名・カタカナが読めるの?」


「本当に初歩なので読めると言うのもおこがましいのですが・・」


「ううん。凄いよシェアリリー。日本の食文化がこちらの世界に通じてると思ってたけどまさか言葉まで・・・」


「魔王様が直々にそれらをお持ち帰りくださいました」


こちらの世界では絶対通じない日本語が読めるなんて日本語の面倒な所は平仮名・カタカナ・漢字。

それも読み方は同じなのに意味が違ったり。


「そんなに日本が気に入ったのかな」


「マイ先輩様がお書きになりお話になるからです」


はい?

言われた言葉がすんなり耳に入る事を拒否しているので、この話はスルーしようと思います。


「えっと・・これなんだけど」


「はい」


深入りすると身を滅ぼすと何かが警鐘を鳴らすのでそのままメモ用紙に書かれた言葉を読んでみる。


「鶏のから揚げ弁当・煮込みハンバーグ弁当・生姜焼き弁当・幕の内弁当、かつ丼、親子丼それぞれに味噌汁を付けて曜日によっては豚汁に変更。様子を見て行けそうならカレーも・・・こんな感じでお弁当屋さんをやろうと思うの」


読み上げた物は全て長年作ってきた十八番料理。

子供が小さいときなんてキャラ弁だって作ってきたし、会社勤めの時は旦那の分も一緒にお弁当を作っていた。


ふと、今日の夕飯時にリュシアンが食べていた芋の煮っころがしを見て思いついた事。

これなら迷惑を掛けずにひっそりと遣れるかも知れない!


「お弁当屋さんを開くためにはもしかして調理師免許とか居るのかな?」


人の口に入る物を販売するとなるとそれなりのリスクもあるし衛生的な決まり事とか色々あるのかも知れない。


「あぁぁ!待ってその前に私材料買うお金持ってないし仕入れ先すらないじゃない!」


私の馬鹿~!!

思わず頭を掴んで振っているとシェアリリーが必死に止めてくれた。


「マイ先輩様落ち着いてください。大丈夫でございますから。お弁当屋さんなるもの開くのでしたら全てお任せください」


「ダメよシェアリリー、すべて用意してもらってから開くのは結局リュシアンの力を借りる事になるもの。自分でやらなきゃダメだから・・・そうだ、畑を作らせてもらってもいい?」


「畑・・ですか?」


「そう、畑。自給自足生活第一弾とりあえず自分の食べる野菜は少しずつでも作っていく」


この時私は大分興奮していたんだと思う。

自分の出来そうなことが見つかって嬉しくなって一人ではしゃいで勝手に妄想していた。



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