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冒険者の成れの果て




 翌日の昼過ぎ、宿屋で一泊したリトとアルファの二人は、フィロ商店へとやってきていた。店内に客はおらず、リトが店に来た時には、フィロはカウンターで頬杖をついていた。


「……ということで、依頼人であるメイガンさんは逮捕されました」

「なるほどねぇ」


 リトからディーンの家での出来事を聞き、フィロは相槌を打つ。そして二人がディーンの写真を見つけた話を聞いたところで、フィロは腕を前に組んだ。組んだ細い腕に彼女の胸がのり、妖艶に強調される。リトは視線を彼女からそらし、店の前の通りが見える窓へと向けた。


「それで、そのディーンって男の方は、その後どうなったのぉ?」

「えぇ、なんでも姿を消したようです」

「消したぁ?」


 フィロが首を傾げ、リトは小さく頷いた。


「実はここへ来る前にディーンさんの家を見てきたんですが、衛兵たちが捜索していまして……」


 ハイドとアクアが部下たちを引き連れて家屋内を捜索していた光景を、リトは思い出す。朝から衛兵がやってきたということで、近隣の住民たちも野次馬となって騒いでいた。

 どうやらメイガンの供述をもとに、状況の確認と豚の死骸と作った毒薬を回収しにきていたようだ。警察でいう実況見分のようなものだろう。


「アクアさんに聞いたら、貯蓄していた金貨や装備のナックルなどの金目の物が持ち出され、今朝にはもぬけの殻になっていたとのことです」

「夜逃げかしらぁ?」

「えぇ、おそらく。元々あの家はメイガンさんの所有するもので、後からディーンさんがやってきて住み着いたらしく、メイガンさんが逮捕された今、もう住む理由が無くなっていますから」

「だからって、そんなすぐに逃げ出すかしらぁ?」

「さぁ。何か見つかるとマズいものがあったのか、素直に逃げたのか。昨晩の内に出ていったなら、もうとっくに国外へ出ただろうと、アクアさんは言ってました」

「いずれにしろ、真相は闇の中ってわけねぇ……」


 たばこの煙でも吐くように、フィロは湿ったため息をこぼす。後味の悪さを感じているのは、リトも同じだった。眉間の皺を深め、リトは自分の頭を指先で搔いていた。


「そういえばぁ、アルファちゃんはどうしちゃったのぉ?」


 店内に流れる暗い空気を変えるため、フィロはリトにそう訊ねながら、店の外へと目を向けた。

 今、店内にはいるのは自分とリトの二人のみ。リトと共にやってきたアルファは店内には入らず、店の前でずっと一人で座り込んでいた。


「ディーンさんが自分と同じ冒険者だったことがショックだったみたいです」

「あらぁ、どうしてぇ?」

「……さぁ」


 リトは肩をすくめた。ディーンが金貨やナックルなどの金品は持ってったにも関わらず、メイガンとの写真や思い出の品は置いて行ったことも、思うところがあったようだ。


「…………はぁ」


 二人からの視線に気づくこともなく、アルファは深い溜息を吐く。


「……まぁ、それを置いても落ち込むのは仕方ないでしょうね」


 リトはわざとらしい口調で、アルファにも聞こえるほどの大きな声で言う。


「今回の件で、アルファさんの借金は減るどころか増えちゃいましたから」

「なッ!」


 アルファは驚き、顔を上げる。


「元々の金貨1枚が3枚返しになって、今回の宿代2泊分……金貨2枚と銀貨100枚が増額してます」

「あらぁ」


 アルファは勢いよくリトの元へと駆け寄った。


「そんな、リトさん!」

「何です?」

「借金が増えたって、どういうこと?」

「だから今言ったでしょう。今回のクエストで泊まった宿の代金、1泊銀貨50枚。ポイロゼの草9個分の買い取り金の銀貨45枚を差し引いても、残り金貨3枚と銀貨55枚の借金ですね」

「なんでぇ!」

「なんでって、当然でしょう。3枚返しは自分が言い出したことですし、誰が代金を支払ったと思っているんですか?」

「そういえば……」


 宿を追い出された時と違い、この二日の間は宿の店主から何も言われなかったことを、アルファは思い出す。


「本来なら私の分も上乗せしたいところですが、そこはサービスとしてあげますよ」

「でもだからって……ただでさえお金ないのに、金貨3枚と銀貨55枚も借金が増えるなんて! とても払えないよぉ!」

「だったら、へこんでないで、とっとと次のクエストでも探してきてください」

「そんなぁーー!」


 アルファはがっくりと肩を落とす。

 そんな二人のコミカルなやりとりを見て、フィロは思わず笑みをこぼす。


「そういえば、フィロさん。虫除け効果のある農薬とか知りません?」

「それなら、ウチで採ったディーカリ草を調合したアイテムがあるわよぉ」

「ちょっと待ってリトさん! せめて銀貨30……いや20枚増やすだけにしてよ! 金貨1枚は絶対に返すしさ! ねっ? ねっ?」


 二人の雑談と、アルファの賑やかな声が店内に響く。そんなフィロ商店の屋根の上では、一匹の猫が大きな欠伸をしていた。








第2章、完。


第3章、作成中。少々お待ちください。

6月中に投稿したい。


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