プロローグ
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どうしてこうなってしまったのかと、青年はしみじみ思う。辺境で暮らす“農家”として、つい最近まで、のどかな生活を送っていた。危険といえば、畑を荒らす野生動物や低レベルのモンスターくらいなものだ。
今日も田畑を耕した後に、野菜の収穫をして、一日を終えるはずだった。
しかし、青年が鍬を振っている時に、その少女はやってきた。青い宝石のついた杖に、黒いローブと、誰が見ても“魔法使い”と分かる服装だ。
その少女と出会ってからというもの、青年の暮らしは一変した。
「ねぇー! “リト”さん、助けてよぉーー!」
青空の下、草原に囲まれた畑から少女の声が響く。その眼の端からは滝のように涙が流れている。
しかし、大声で泣く少女を、青年は目を細めて見ていた。初めは少女の涙に同情もしていたが、今ではもう思いやりのかけらもない。少女が彼の家に来るときは、いつもこうだ。周りにひと気のない辺境の地とはいえ、畑仕事をしているそばで泣かれると流石に鬱陶しい。
青年は鍬を土に突き立てため息をつく。
「いい加減にしてください、“アルファ”さん。ここはギルドでもなければ教会でもないんですよ」
「だってぇ、私だけじゃクエスト達成できないんだもん! 何かアイデアちょうだい!」
「魔法使いが何言ってるんですか。僕はただの農家ですよ」
「嘘じゃん」
「ホントですって。そういう情報は同じ冒険者に聞いてください」
「やーーだーー!」
まるで駄々っ子のように泣きじゃくる少女に、青年は顔をしかめた。思えば、彼女がパーティを追放されて、ここに来るようになってからというもの、魔法の呪文よりも泣き声を聞いた方が多いかもしれない。
「この際、農家でも遊び人でも良いのぉ! 助けてぇ!」
「生憎ですが、お帰りください」
「うわぁーーん!」
少女はさらに大泣きし、青年はまたため息をつく。
辺境で暮らす農家の青年、リト。
パーティを追放された魔法使いの少女、アルファ。
この二人の数奇な関係がはじまったのは、およそ一か月前にさかのぼる。
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