第37話 雷雲の宝玉
思い出せないのか悩んだポーズで動かない二体の竜。ごちゃごちゃ念話は来るけど。
「あのぉ」
『待て。もう少しで何かが』
『思い出したぞイカヅチの』『なんだと?』
『そこの人間よ。お主、銀竜と共におるな?』
「召喚契約を行っている」
『おおそうであったそうであった』『イカヅチのうるさいぞ。儂等はお主に手を貸すよう言われて来たのだ』
『白竜にじゃな』『お主達は悪魔とやりおっとるそうだな』
「ああ。だが害をなす竜も討伐している」
『わかっておる』『あやつの導きでこの先の渓谷に行くのだな?』『彼処におるものはちいとばかし手強い』『よって、我等の力を使うが良い』『儂等の力があれば苦にはならんだろ』
目の前に掌大の黄色に黒の線が美しい珠が現れる。
「これは?」
『はいからじゃろ』『それで儂等を喚ぶとよい』『1度切りだからな』
「感謝するぞ雷竜、雲竜」
『ふん、礼なら白竜に言うてやれ』『では去らばだ』『必ず喚ぶのだぞ』
二体の竜が雲の中に消え、空を被っていた雲も消えていった。
「味方だったのね」
「そうらしいな」
「それで喚べるの?」
「なにそれ?雷神様の珠?」
「投げつけんのかこれ?」
「知らないわよ」
「使い方聞いとけばよかったな」
ただ珠を渡されただけで説明など一切言わずに去っていった。その時になれば分かるのかも知れない。
これは召喚術の1種なのだろうがこんな方法聞いたことがない。少し不安だが、本人達から直接渡されたのだから心配はないだろう。
「白竜と知り合いなの?」
「あの山に居たんだよ。サキが契約してるシルバードラゴンの事心配してたんだって」
「やっぱり竜と契約してるんだ」
「ちなみに私もブラックドラゴンと契約してるんだよ」
「うそ!?スゴい!」
「アイはおこぼれを貰ったようなもんだぞ」
「ちょっと!その言い方酷くない?」
穏やかになった空は太陽が傾き真っ赤な色へと変わり、辺りは段々と暗くなっていく。
街まではまだ歩く。その間に悪魔がどう動くか。またハイレーンの仲間の動向も気になる。雷竜達の話だとその悪魔はすでに力をつけ終わっているような感じだった。いつ街が襲われてもおかしくない。
間に合えばいいがこればかりは運に任せる。此処からジルコートに乗って飛んでいけばいいが、着いてすぐ戦闘だとスタミナの問題もあるので実行出来ない。
「なぁハイレーン」
「ん?」
「ハイレーンはクレバスの街の大きさってわかるか?」
「それなりにデカいって聞いたけど」
「行ったことはないんだよな?」
「私はないよ」
「渓谷は?」
「遠目で見ただけなら」
「よし!」
見ているのなら計画が立てやすい。
俺達はあーでもないこーでもないと言い合いながら作戦を練っていく。




