第101話 大海嘯竜対銀竜・黒竜
次第に海が荒れ始めた。
風はないのに激しい波が押し寄せる。
俺達は海面からかなり高い位置に立っているが今にも届きそうな勢いだ。
水飛沫に襲われ、思わず顔を背け目を瞑った。その時、咆哮とともにソイツは姿を現した。
「大海嘯竜…」
「あんな大きいの!?」
「はい」
「こりゃーダンチだな」
海面から巨体を伸ばし、陸の方へと進んでいく。
「よし、やるしかないな」
「準備はいい?」
「はい!お願いします!」
「ギアス、お前は少し待ってろ。アイツはかなり持っていかれるだろ?」
「そうですね…実の所、僕もその辺はまだ追い付いていないのです」
「そうか、なら待ってな。アイ、やるぞ」
「りょーかい」
俺とアイは口上を唱え、ジルコートとノワルヴァーデを喚んだ。
「海に潜られる前にダメージを稼いでくれ!」
『「わかったわ」』
二体の竜が巨体へと向かっていく。
ジルコートの球体のブレスが後頭部を直撃する。続くノワルヴァーデの黒魔法も背後から受け、二体に振り向いた。
続けざまに放ったジルコートのブレスを回避し、水魔法で二体諸とも吹き飛ばす。
『貴様等、我の邪魔をするというのか』
念話が全員に届く。
それに答えた者はいなかった。
再び二体は立ち向かっていくが、長い胴体をうねり上げ叩き落とされる。
すると、海の中から白と黒の光りが上がった。水中戦へと移行した模様だ。
だがそれもほんの僅かな時間、二体は一瞬にして海上へと押し上げられた。
『それが貴様等の答えか』
空へと打ち上げられた二体に青い炎のブレスを浴びさせ、落ち行く所に水魔法を放った。
「ジル!限界だ!戻すぞ」
そう叫んだが、ジルコートは念話で『まだいける』と伝えてきた。ノワルヴァーデも同様だった。
体勢を戻し、距離を詰める。三度襲う水魔法を避け、ジルコートは一直線のブレスを顔面へと射った。
その隙にノワルヴァーデは後方へと回り込み、挟み込む形でブレスを吐き続けた。
『その程度の攻撃。我には効かぬぞ』
その言葉と共に、大海嘯竜は周りに水の渦を纏わせる。二体を巻き込みながら空高く上がって行く渦はその勢いを落とすことなく、雲を貫いた。
雲の狭間から紫色の光りが散った。ノワルヴァーデが限界を迎えた。
ジルコートは防御魔法を張って、ダメージを抑えたようだ。
「ノワ…」
「ギアス、頼めるか」
「はい!行きます!」
口上を唱え始めた。空に描かれる魔法陣は巨大で、ジルコート達のそれとは比べ物にならない。
そこから現れたのは、その胴体と同じ大きさの腹ビレと胸ビレの4枚を翼の用に広げた巨大魚、バハムート。
バハムートを喚んだだけでもギアスの息は上がっていた。長くは維持出来ない。
「フゥ…頼んだよ、ルティ」
『大海嘯か。うむ、良かろう。銀もおるのか、お主は我の援護だ』
『相変わらず偉そうね。いいわ、私では無理そうだしね』
『偉そうではなく、偉いのだ。では逝くぞ』
二体は天災へと立ち向かう。
[此岸竜]
バハムート。
15メーターを越える巨体に同等の4枚のヒレをもつ空を飛べる魚。
かつてはベヒモスの傍に仕えていたが、天界と魔界の争いで世界の均衡が乱れたことにより、ベヒモスとは別で均衡を保つ働きをした。その際二体は別々となった。
その後は人間に力を貸し、ギアスの祖先と召喚獣契約を結んだ。
名前はルティーヤ。




