6 南蛮船の砲弾と、引き裂かれた四郎の最期
「覚えていたか……?」
真っ直ぐにおれを見つめる黒い瞳がきらめいた。
どこにいても、いつも何かが足りない気がしていたのはこれのせいだったのか……?
自分の内に巣食うもどかしさが、形になったような気がした。
これまで何度かうなされた夢が、やけにリアルに迫ってきたのは一度に色々なことが起こりすぎたせいだ……
「わかんない……水をくれよ」
赤い硝子の水差しには、気泡が入っていた。
気付けの水を入れた、コップを持つ手が意思に関係なく震えるのを止められない。
夢と現実がまだ上手く切り離せないでいた。
「飲ませてやろう、わたしの虹……」
「いい……」
ガキじゃあるまいし、と続けようとしたが目の前が暗転した。
おれは、もう一度意識を手放した。まだ体に、痛みが残っていた……
「ふ~……」
やっと落ち着いて、おれは今風呂にいる。
一人きりで、腑に落ちない今日のできごとを振り返ってみた。
施設で暮らすおれの下に、父親の使いと名乗る爺さんがいきなりあらわれた。
これまで何度も夢で見たことのあるあやふやな映像が、連れて来られた屋敷で、古い旗を見た瞬間から突然リアルな映像になった。
しかもものすごく、古い時代らしかった。
鉄砲が、歴史の教科書で習った、火縄のついたものだったのだ。
この記憶は何だ?
長いこと忘れていたのに、なぜいきなり思い出したんだ?
ぬるい湯の中で、おれは長い時間考えていた。
どう見ても、それほど年が離れているとは思えない父親と名乗る男。
あいつが、関わっているのは確かなようだ。
浅い考えをめぐらせても、答えなんて出ない。
「やめた!」
わからなければ、聞くまでだ。
バスルームの、戸が少し開いた。
「大丈夫でございますか?」
「わっ!」
暇さえあれば、おれにまといつこうとする自称父親が入ってきたのかと思った……
と言うか、おれ、まだあいつの名前さえ聞いてないぞ。
急な出発で、施設長は父親のもとに向かうおれに、親の名すら告げる時間がなかったのだ。
いくら早く会いたかったのだとしても、物事、順序って物があるだろう……
せめて、名乗るところから始めるんじゃないか?




