ー Afterword ー
この度は、当BARへおこしいただき、ありがとうございました。ハロウィンをテーマにした作品は初めてのことですが、その日が今やとても好きになりました。ここではあらためて、ハロウィンとはどういう日なのかを少しずつあげながら、この物語ができあがるまでのアレコレをつづりたいと思います。
【きっかけは<夜の地球>】
関西万博に展示されていた<夜の地球>をご存知の方もおられるのではないでしょうか。
輪島塗の技術師達が五年の時を経て作り上げられたそれは、漆黒の空間の中に輝くとても幻想的なものでした。その完成後、能登半島地震に耐え抜いたことでも有名です。
それを見て最初に思ったのは、「オニキスだな」――でした。私はパワーストーンには詳しくありませんが、人に御守りとして贈る機会があり、その店に出向くことはありました。なので、いくつか名前程度なら知っていました。
真っ黒の中に、金色の煌めきがまばらに浮かび上がっている光景。その印象はだんだん、秋に入るにつれてイメージを変えていきました。新たに発見したのですが、ハロウィンとパワーストーンには強い関係があるようです。
【パワーストーンとハロウィン】
魔法の夜ともされるハロウィンでは、魔除けをするための防具として宝石を身に着けるということもなされていた。それがパワーストーンで、さまざまな効果を持つ石の力が漲るのもまた、ハロウィンの時季。オニキスは特に、悪霊退散にうってつけの石です。
魔方陣を書いて石を真ん中に置くことや、呪文を唱えることもされていたのだとか。そのことから、この代表作シリーズでは魔方陣を採用しています。
【ハロウィンは大晦日であり、お盆】
11/1が聖人の日で、その前夜に開かれるお祭りがAll Hallows Eveといいます。その言葉がもじられ、Halloweenになったのだとか。
発祥はアイルランドやイギリスで、原点はケルト民族の儀式。11/1が一年の始まりという考えから、10/31が大晦日になります。そしてこの日は、亡くなった人の魂が帰って来る日ともされ、そのために火をたやさず、食事を用意し、扉を開けて迎える支度をする。そこに少しばかり、日本のお盆を感じました。
またそのように死者の戻りが起こるため、悪霊や魔女が街をうろつくともいわれていたことから、それらを怖がらせて追い払うために必要なのが、同じく恐ろしい格好をするという仮装。
なじみあるカボチャのランタン、ジャック・オー・ランタンは、実のところカブが最初。カボチャになったのはアメリカに伝わってからだそうです。ジャックはアイルランドの物語に登場する子どもの名前で、悪さばかりしていたおかげで成仏されず、暗闇をランタンの火を頼りに彷徨い続けた、というお話があります。そのランタンはカブなんだそう。怖い顔にくりぬかれるのが主流のランタンは、魔除けの一つです。
玄関にオバケキッズが現れたら絶対聞こえる「Trick or Treat」に対し、お菓子を上げることもまた、魔除けの内。最後に「Happy Halloween」と答えるのが流れになっていますが、それはパーティーやお祭りを楽しんでという意味のほか、「よいお年を」という風にも訳せるのが不思議なところ。
カボチャやカブやお菓子が出てくる話が多いですが、実はリンゴが結構登場するイベントだったりもするんですよ。ケルト人の収穫祭ではリンゴが特別扱いされていました。神聖な果物とされ、不死や再生の象徴とも。病気知らずで日本でも知られている点と、また似ていますね。リンゴを使ったゲーム、占いがあり、それを絞ったジュースを飲むのだそう。
このリンゴにまつわるお話は、本短編ではそんなに登場しませんでしたが、続く長編の後半ではしっかり触れています。気が向きましたら是非、のぞいてみてくださいませ。
【ハロウィンの期間は10/31~11/1】
10/31がその日で知れ渡っているのですが、実際のところは翌日にかけての2日間。でも本作では、BARの開店は10/30からと、前夜ならぬ前々夜(イヴイヴ!?)なんです。実のところ、ここにそこまで大きな理由はありません。主オニキスとバーテンダー・クロウの本業をする期間としていますが、2日といわずせめて3日働かせよう、というだけのことでした。それに加えて、やはり店舗は特別な空間ですから、少しでも長くたくさんの“迷い人”に辿り着いてもらい、その雰囲気や悩み解消を体験できた方がいいよね、というだけのことでした。
【この作品は、大きめのプロローグ】
私のインスタグラムは2つアカウントがあり、そのうちの1つに代表作を作りたいとずっと考えていました。そのアカウントには、これに注目してほしいと言える作品はなく、ただただ小さな話を投稿し続けているだけでした。
せっかく文章を書いているので、本棚らしい世界観にしたいな――と思っていたのです。そこから、やたらと「本棚」について考えるようになりました。自分が書いた本って、ほんっとうになかなか棚に並ばないよねーと……笑 その夢を叶えられる人って本当にすごいと思ってます。
その「すごさ」って、どんなものなのか。何種類もの試行錯誤を経て、年単位で時間をかけてようやっと棚に並ぶなら、見えない棚の裏側に隠れた努力をもっと知ってもらえればいいのになと思いはじめました。
本短編の主人公が、その始まりを切っています。たくさんの悩みを抱えてやってきた客の中で、唯一の「物書き表現者」でした。だからこそ贈られた「ブックマーカー」は、この先の物語でどのように奥行きをつけてくるのか。
2つ目の代表作「本棚の向こう側」に、気が向きましたら是非、おいでくださいませ。
【はじめての書き方をしてみた】
特にこの形式で書きたいと決めているわけではないのですが、私は自然と三人称でずっと書いてきています。なのでこの作品の一人称には新鮮さがあります。そんな、滅多に書こうとしないやり方に更に付け足してみた新たな事は、「彼、彼女、男性、女性、男子、女子、彼ら」といった言葉を使わないこと。
これは果たしてどうなのか、という疑問はきっとこの先もありますし、考えることだと思っています。一度やってみたかったことだったので、これもまた実験結果として自分の中に記録しておきます。
【謝辞】
この作品においては、めちゃくちゃ言いたいことがあるといった強いメッセージは、自分の他の作品に比べてそこまでなかったような気がします。あえて言うなら「嘘」の表現の仕方なのかもしれません。
それについてちょっとだけお話ししてみます。私自身が、書くこと以外の場面(仕事・家族・友人など)で様々な経験を積んでいくうちに、「嘘」に変に敏感になりました。それがいい瞬間をくれる分に関しては何とも思いませんが、そういった経験はあまり多くはないです。食事に苦手なものが入っていないかを探すような感覚で、やたらと気にするようになりました。それが作中で、スナイパーという形で浮上したように思います。
けれども、物語を嘘と表現される方も、嘘は大好物ですよという表現もまた一般的であり、その実態も受け入れています。ただ私が、ちょっとその辺にアレルギーのようなものがあるのです。
というお話もひっくるめて、ここまでお付き合い下さり心より感謝いたします。年末が近づくと何かと忙しくなります。そんな時、ちらほらと訪れる行事をその時だけは目いっぱい楽しめたらいいなと思います。例えばハロウィンや、勤労感謝の日(Thanks Giving Dayとも呼べます)、そしてクリスマス。煌びやかかつ満腹になれる、嬉しくて楽しいひと時。その一部に、この作品もなれたらいいなと思っている。そこが一番大きいです。
では、Happy Halloween.
Terra




