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「ときめかない」ものなど捨てておしまいなさい  作者: megane-san


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番外編 フェミリアのその後(4)

 フェミリアが荷物を解いていると、部屋をノックしてクリスティーナが訪れた。


「フェミリア様、先ほど侍女長から温泉でマッサージを受けないかとお誘いを受けたのですが、一緒に行きませんか?」


「温泉ですか?話には聞いたことはありますが、入浴するのは初めてです」


「とても体にいい効能があるそうで、小さな傷などはすぐに治ってしまうらしいんですよ」


「それは試してみたいですね!あっ、レイ様は?」


「レイ様は、ルキリア様と新しく建設する工場の下見に出かけられました。夕食までまだ時間がありますし……、私達は温泉に行ってみましょう!」


「はい、ぜひ!」



城内にある広々とした温泉に浸かった後、併設してあるマッサージルームで二人は侍女達のプロ級のエステを受けて、疲れた体を解されていた。


「クリスティーナ様……。ここは天国ですか?」


「ここは天国かもしれませんねぇ。ここに住んだら、疲れた体を毎日彼女達が癒してくれるんですからねぇ」


「「ふぅ~。幸せだわ~」」


((作戦その2、成功!))


マッサージをしていた侍女二人は、影に隠れていた侍女長にハンドサインを送ると、侍女長は頷いて次の作戦の準備に取り掛かった。



マッサージを受けて身体を磨かれた後、二人が広い女性用更衣室のソファでレモン水を飲んでいると、侍女達がドレスとメイク道具を持って入室してきた。


「フェミリア様、今夜の晩餐には新しくデザインしたドレスを試着していただけますでしょうか。少し改良してみましたので、着心地を試していただきたいのですが……」


「はい、これもお仕事ですね。喜んで試着させていただきます」


新しく改良したドレスは、前世でいう『アオザイ』のようなデザインになっていた。そして靴は前回同様にボタン一つでブーツに変わる魔道具だった。


「このドレスは、かなり動きやすいですね!靴をブーツに切り替えるだけで、すぐに戦闘態勢を取ることが出来ます!それにデザインも私好みのシンプルな型で、生地の光沢も美しいです」


「良かったですわ。晩餐の際に、皆様の感想も聞いてみましょう」



侍女に案内されて、クリスティーナとフェミリアが食堂へ入ると、ルキリアとレイがサッと立ち上がって二人を席までエスコートした。


「これは!新しいデザインのドレスだね。とても美しく仕上がっている。二人ともとても良く似合っているよ」


レイがドレスの感想を述べている間、ルキリアの視線はフェミリアに釘付けだった。


「ル、ルキリア様、新しいデザインのドレスはどうでしょうか?」


クリスティーナがルキリアに会話を振ったが、ルキリアは目線をフェミリアから外さずにクリスティーナに答えた。


「えっ?あ、あぁ、とても動きやすそうでいいね。フェミリア嬢、とても良く似合っているよ」


「ありがとうございます。生地もとても軽くて柔らかくて……。この生地も撥水加工がされているんですか?」


「あぁ、この生地も撥水だよ。撥水加工をすると生地に硬さが出てしまうんだが、そこを改良してみたんだ」


食堂にいたメイドを含めた全員がため息を殺しながら、ルキリアに残念なものを見るような視線を送ったのであった。




前辺境伯夫妻とセバスも一緒に楽しい会話で晩餐を終えて、全員で談話室へ移動しようと席を立った時、城内外にサイレンの音が鳴り響いた。


「このサイレンは?」


バタン!とドアを開けて兵士が息を切らして駆け込んできた。


「ルキリア様!スタンピードです!大量の魔獣をレーダーで感知しました!」


「スタンピード?データ上ではスタンピードが起こるのは、まだ数年先のはずだが……。第1と第2騎士団は、出動の準備!第3騎士団は住民をこの城内に避難させろ!スタンピードの座標をすぐに知らせろ!私が先陣で転移で飛ぶ」


「ルキリア殿、私とクリスティーナも一緒に転移で飛ぶ。セバス、前辺境伯夫妻と一緒にこの城を守れ」


「レイ様、畏まりました」


セバスは、前辺境伯夫妻と一緒に住民達を迎えるための準備に部屋を出て行った。


「レイ様、クリスティーナ様、私も一緒に行かせてください!」


すでに靴をブーツに切り替え、侍女から剣を受け取って腰に取り付けたフェミリアは、淑女から騎士の顔へと切り替わっていた。


クリスティーナはその姿を見ると、フェミリアに笑顔を向けて頷いた。


「フェミリア様は、ルキリア様の後衛に入ってください。ルキリア様が攻撃中は両手が塞がりますので、その際の守りをお願いいたします」



ルキリアとフェミリア、そしてレイとクリスティーナは、魔獣達が向かってくる進行方向に転移して待ち構えた。


「あと1分で魔獣がこちらに到着する。レイ殿とクリスティーナ殿には、前衛をお願いする。フェミリア嬢は、横からこぼれてきた魔獣を処理してくれ」


魔獣達が列をなして向かってきたところを、クリスティーナが光りの網で取り押さえ、それをルキリアが魔道具のレイザー砲でスパッと切り刻む。次に来た魔獣の集団をレイが闇魔法の圧縮で握りつぶす。横から流れてきた魔獣はフェミリアが一太刀で倒していく。


後方に待機していた騎士団は、この光景を呆気に取られて口を開けて眺めていた。


(((俺達の出番ナシ……)))


そして、殆ど騎士団の出番が無いまま、1時間もしない間に、魔獣のスタンピード討伐を終えた。


「スタンピードの魔獣はもう全部倒しましたでしょうか?」


フェミリアは笑顔でそう言うと、服に付いた返り血をパンパンと払って撥水の効果を確かめるようにドレスの生地をあちこちと確認していた。


(((えっ~!今、ドレス生地の確認ですか?フェミリア様、余裕ですね……)))


騎士団の兵達には、戦闘中のフェミリアが軍神の女神のように見えて、キラキラとした視線を送っていたのだが……。


ルキリアは「ふぅ~」っと息を吐くと、レイザー砲を肩から降ろして、レイとクリスティーナ、そしてフェミリアに頭を下げた。


「レイ殿、クリスティーナ殿、そしてフェミリア嬢、貴方達のおかげで、被害無しでスタンピードを押さえることが出来ました。辺境伯領主として御礼申し上げます」


レイは、一歩前に出ると、胸に手を当てて騎士の礼をとった。


「いや、こちらこそ御礼を言いたい。このような魔獣を押さえてこの国を守っていてくれる南の守護神に感謝申し上げる」


(((凄い!何だこの光景は!うちの大将とこの国の代表が尊すぎる!)))


後ろに控えている騎士団は、この光景に涙していた。


ルキリアが、ふとフェミリアを見ると、フェミリアもこの二人のやり取りに感動して涙を流していた。


ルキリアはフェミリアの前に跪くと、フェミリアの手を取り真剣な顔でフェミリアを見上げた。


「フェミリア嬢、私はこの戦いで確信した。貴方になら私の背中を任せることが出来る。どうか私と一緒にこの領地を支えてほしい。私と結婚してくれないか……」


(((大将、こんな魔獣の肉片飛び散ってるところでプロポーズかよ!場所考えようよ~!)))


「はい!私もこの地をルキリア様と一緒に支えさせてください!」


(((えぇっ~!肉片散らばってるとこでのプロポーズでいいのかぁ~!)))




フルーラ辺境伯とグルフスタン伯爵令嬢の結婚式は、プロポーズから3か月後というものすごいスピードで進められ、フェミリアはプロポーズされてからすぐに王宮騎士団を退団して居住を南の辺境伯領に移した。


そしてフェミリアから結婚するという報告を受けたグルフスタン伯爵夫妻は大喜びで結婚式に駆け付けたのだが……、フェミリアが結婚式で着用していたドレスは何故か撥水加工を施したレース生地で作られたウエディングドレスで、すぐに戦闘態勢になれる仕様だったことを知った夫妻は、「「はぁ……」」とため息をつきながら、苦笑いで娘の晴れ姿を祝っていたのであった。




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